第25話人形遊びは柄じゃないんですよっ!
襲い来るアンデッド達を捌く、捌く、捌く。
時々来るデバフ攻撃には当たらないように…人形のランダムデバフの解除に専念できるよう立ち回っていく。
リビングアーマーが少しずつではあるが、急所にボムを当てられて減っていく。いろはは投げ物のセンスも結構いいね。
守りが手薄になった隙をつき人形も破壊していく。
途中で何度もデバフで体勢を崩しつつではあるが、その都度いろはに回復を頼み着実に数を減らしている…はずである。
「って、まだ出てくるんですか?ゆらさんこれってあとどれくらい続くんですか!?」
「さぁ…?分かりかねますねぇ…」
「…え?いや、だってゆらさん攻略したいって…」
「あー、それはですねぇ。確かに攻略したいんですけど、現在の最高記録が37でしたっけ…?まあ、それくらいでみんな死んじゃってるので攻略データがゼロなんですよー…」
「は?」
そうなんだよねぇ。だから最後まで行けるかわからないんだよなぁ…
でも、いろはとなら行ける気がするんだよね。ただの勘だけど。
「で、でもですね…だからこそ初攻略報酬も期待できるかもですよ?」
「あー、そういえばそんなものありましたね。んー…まあこのダンジョンがクリアできれば間違いなく役に立つ報酬が期待できそうですね…」
「ほら、やっぱり…」
「もちろんクリアできればっ!!!ですけどね!?」
「…はい。」
…やっぱりだめだったかぁ。圧殺デバフ嫌がらせダンジョンと呼ばれるだけあってここだけ攻略がすすんでないんだよね…
でも、行ってみたかったからな…
そんな思いをこめていろはの方に視線をチラチラ送っていると
「…仕方ないですねぇっ!!!来たからには勝たないと当分回復してあげませんからっ!」
地味に嫌だなぁ…でもパーティを組んではくれるんだ…ふぅん(にやにや)
「いろはがカバーミスしなければまず負けませんよ。」
「…言いましたねっっ!ゆらさんがミスしたらファーストで1番高いケーキ奢って貰いますからね!!」
「うふふ…じゃあいろはも同じですね(ニコッ)」
あ、しまったって顔してる。本当にいろははわかりやすいなぁ。
…でもこんな会話しながらでも、スケルトンとアーマーナイトの弱点に攻撃当ててるんだからいろはも中々だよねぇ
その後も、ゴーストにスケルトン、リビングアーマー、人形、ゾンビの順で数を減らしていく。
処理に慣れてきた私たちは少し油断してていたのだろう。誰も戦ったことのない領域なのだから警戒すべきだったのだ。
そんなこんなでそろそろ百体にさしかかった頃にソレは現れた。
見かけは周りのデスパペットと同じように可愛らしいドレスを来たお人形である。ただ、少しリボンの色が違うことを除けば…
ああ、でも本当に少しだけなのだ。くすんでいない原色のリボンで他のものほどボロボロじゃないだけ。見分ける方が難しいだろう。普段なら気にもとめないもの。
そんな少しだけ違う人形は私たちの前に来ると綺麗なカーテンシーを披露して
「Kyahahahahah!Kyahahahahahha!!!!asobimasyoooo!!!」
「えっ…?」
「喋った!?」
そんな私たちの驚き(と歓喜)の声など気にせずに、人形はシャンデリアの上に乗って歌い始めた。
「Lalalalalalalala〜♬.*゜」
少し不穏な、だが綺麗な歌。私たちがそんな一体の人形に目を向けていると
「Kyaha♪」
「Gryaaa♪」
それに合わせるように他のアンデッド達が歌い始めた。声の出せないスケルトンやアーマーナイトはカタカタと踊っている。
…いや
「ぐふっっ!」
「ゆらさん!!!」
「いろは…みみ、をふさっ…がぁっっ!」
いろは…駆け寄らないでっ…これは…
「ゆらさんっ!今助けますからぁっっ!?」
いろはを嵌める罠だから…
「Kyahahahahah♪asobo?oneechan!」
そして、無防備に回復しようと駆け寄るいろはの首にピアノ線が絡む。
そう。あの人形がわざわざ目立つように高い位置にいった理由。そして、それを誤魔化すために歌と踊りで注意を引いていたアンデッド達。私が違和感を感じた時にはもう遅かった。
糸によって容易く体勢は崩され致命傷とまではいかないが深い傷を受けてしまっていた。
でも、多分こいつらが狙っていたのは私じゃない。
いつも、安全圏で回復する厄介者。手が届かないなら、届くところに招けばいい…か。随分と人形にしては悪質な作戦だね。
しかも私が邪魔しないように、おまけに恐怖かなにかの精神系のデバフ…かな?までかけやがって。おかげで体が正常に動かないし、思考にノイズが走って考えがまとまらない。
あー本当に性格が悪い。
きっとこのままではいろはの首にピアノ線が絡んでそのまま首チョンパだね。詰みというやつなのかもしれない。
でもそれで諦めるほど、私も性格がよくないけどね。
恐怖?混乱?そんなものそれ以上の痛みで上書きすればいいっ!
ガリィッ…
血が口から溢れ出るけど、気にする暇は無い。
「いろはっ!避けて!!!」
稲妻の剣を即時に権限させ、いろはに絡みつこうとしていた糸を焼き切る。
急に力を使ったせいか無理やり起き上がったせいかわからないけど、痛みが身体を蝕み、精神が焼ききれそうになる。でも、この状態ならデバフなんてどうでもいいよね…?
「あ、ぶないですねっっ!ってゆらさんのその血っっ!?」
いろはが指をさす方向を見ると体中のいたる場所から血が吹き出していた。そりゃ痛いよね。
あ、でもローブが優秀すぎて血が出た傍から吸い込まれてるな…いい子だねぇ。
「いろは、気にしないでください。私は、あの人間で人形遊びしようとする悪い子におしおきしてきますので、あとは任せましたよ。」
「そんなの無理ですっっ!」
「大丈夫ですよ。ナイフで援護はしますからね。」
「ゆらさんのばかぁっっ!!!」
なんだかんだ受け入れて、戦闘姿勢になるいろは。信頼してるからね。
さあセカンドラウンドですよっ!
残854/999
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精神系デバフについて
一般的な出血、毒などと比べ解除が難しいデバフである。かかりやすさも人によって違い精神力が強いほどかかりづらいなど個人差のあるものである。医者や回復術師が珍しい騎士団などでは、痛みを体に加えることで一時的にかき消す方法が取られることもある。ただし、こんなのをやるのは一部の訓練された歴戦の騎士のみである。一般人でこれをやるのは酷なことだ。きちんとした場所で治してもらうべし。
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