第46話
僕の目の前には、今この部屋で眠りにつくお姫様と瓜二つの姿をしている謎の存在がいる。
髪は後ろで束ねるポニーテールにしており、開眼している瞳は夕焼け色で、 エルフには珍しくおっπがデカイ子だ。……イアやノクテムより一回り二回りもでっか……。
「それでだがアッシュ、呪いは解けそうかね?」
「えっ? あー……。 ノクテム、どうだ?」
「ふむ……。解呪できるにはできるだろうが、無理やり解くと後遺症が残るかもしれんな」
「なんだとッ!?」
『おおっ! 君すごいんだ〜! お姉さん見直しちゃうよ』
一旦謎の女の子は置いておき、呪いの話に戻る。
呪いなんて僕にかかれば簡単に解呪できるだろうと意気込んでいたが、これは厄介だな。この呪い、中々に質が良い。ノクテムの補佐であるメイドと同じくらいの腕前だ。
無理やり解こうとしたら危険が及ぶかもしれない。
「本体を叩くべきだな」
……と言っても、呪いをかけた人物を隠蔽する魔術も使われている。それも僕が無闇に手出しできないほど。
厄介な者が噛んでいる可能性大だ。
「……少し、席を外して良いですかね」
「む、トイレかね?」
「えぇ、まぁ」
「部屋を出て右に曲がり、まっすぐ行って突き当たりを左に曲がればあるぞ」
僕はトイレにまでついて来ようとするシアンをなんとか部屋に残るよう説得する。その後、部屋の扉を開けると同時に、謎の女の子とわざと目を合わせて退出した。
『えっ……。えっ!? も、もしかして見えてるの!!? ねぇねぇねぇねぇ!!!!』
「……で、あなたはなんなんですか?」
『わぁ! ほんとに見えてるんだね、わ〜〜い!』
空き部屋らしきとこに入り、そいつに話しかけた。
この城の使用人、騎士、国王、それだけでなく、シアンやノクテムでさえ察知することができないこの少女……。一体何者なんだ?
『あたしは正真正銘のニンファ・フィアンマだよっ。よろしく頼むね、お兄さん。どーせ誰にも見えてないし、敬語もいらないよ』
「そうか、んじゃ遠慮なく。僕はアッシュだ」
偽物? いや、違うか。本物だとしても、一体なんでこのような状況になっているんだ。死んでゴースト状態となっているのならばノクテムに見えるはず。
「それで? 本体は呪いで寝込んでいるはずだが、あんたは一体何をしてるんだ?」
『あたしが聞きたいよー! 目が覚めたらこうなってて、自分がもう一人ベッドでか転がってて、誰にも認識されなくなってたの!』
「なんで僕には見れてるんだよ」
『あたしが聞きたいっつーのー!!!』
本人も謎の現象、か。僕が知らないほどのなんらかの体質かもしれないな。けどなぜ僕にだけ見えるんだろう?
だが結局のところ、呪いを解けば解決するということは確かだ。
「とりあえず、僕の仲間二人にはお前のことを伝えるが、他には伝えないでおくぞ」
『なんで? あ、もしかしてあたしを独占したいとか〜? お兄さんのえっちー♪』
「違うに決まってんだろ。混乱を引き起こしたくないからだ」
つんつんと僕のほおを突いてくるニンファ。手で振り払おうとしたが、僕の手は彼女に触れることはなかった。
僕でさえ触れられず、認識不可の存在。一方的に攻撃することが可能な異端な存在だな……。
宙に浮きながら僕の肩に肘を置いて頬杖をつくニンファを連れ、元の部屋に戻った。
「さて……そんじゃあ解析を始めますか」
「ししょー、解析って何をするんですか? はむっ」
部屋に戻ると、使用人に出されたであろう菓子をつまみながらそんなことを質問してきた。
「隠蔽魔術の解析をして、誰が使ったのかを特定する。中々良い隠蔽魔術を使われてるから、解析が完了するのは夜になりそうだな。
そんで、隠蔽された奴を暴き、呪いを解かせる」
「随分簡単な作戦であるな。単純だがそれが最善か」
「隠蔽魔術を解いたら呪いの解析も頼む、ノクテム」
「うむ、わかったぞ!」
ニンファにかけられた魔術の構築を紙に転写させ、そこから分解をして解析を進めた。
「ししょー……。最近ご無沙汰だったのでシてほしいです……♡」
「アホか。ここ城の中だぞ」
「ふむ、何をするのだ?」
「あ、いや、ノクテムには関係ないぞ!?」
『へぇ〜? お兄さんってけっこーヤンチャなんだぁ♡』
シアンのやつをわからせようにも、気配でノクテムには気づかれるだろうし、結界を張ってもニンファにはそれが貫通されるかもしれない。
悶々とした気持ちになりながらも、解析を進めた。
[あとがき]
謎が明らかとなると前回言ったな、あれはもう少し先だったぜ。
進展があるのは次回からです。3-2章ではアッシュのガチを見せたいんよなぁ……(ニヤニヤ)。
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