第52話
男三人衆(TSっ娘、女装、男の娘)は馬車に揺られること数時間、ようやく国に到着する。
男だけゆえに話に花が咲き、有意義な時間が過ごせた。
「国に到着したが……ここはまだ城下町ってわけじゃないらしいな」
ツリーハウスに巨木、自然と共生している暮らしがありありとわかる町だ。しかし妙な点があり、ここには男性しかいない。
城下町は女の園、その周囲で男たちが
「アスミ殿、入国が許可されているのはここまでなのか?」
「うん。特例が無い限り、城下町には入れないらしい」
「だったら女の必要なかったのではないですかね」
もしものためだろうな。男が馬鹿みたいに強かったら、無理やりにでも城下町に侵入し兼ねないと恐れ、女で許した、と。
用心深いね、エルフ公国は。
「あ、あれ女か……?」
「人間の女だ」
「もう俺……人間の方がいい気がしてきた」
「優しいよなぁ人間の女って……」
「あの黒服の女の子すっげぇ!」
「小さい子も可愛いな」
「金髪の女好みだ……」
「話しかけてみようかな」
周囲にいる男エルフはよほど女エルフにキツイ当たり方をされているみたいだ。僕らを見る目が少々邪だ。
僕らはそれを気にせずズンズンと進む。
「どこに行くんですか?」
「城下町さ」
「は、入れないのだろう!?」
「入れる。門番してるのは男だと信用ならないだろうから、どうせ女子だ。だったらそいつを堕とせばいい」
ニヤリと笑みを浮かべるが、ロブコは若干引き気味の様子。ルクスは変わらず太陽のような笑顔を浮かべている。
僕だって本当はこんなことしたくない。ニンファの呪いを解くために仕方なく、だ。
男に話しかけられながら進むこと数分、城下町に入るための門が見えてきた。重厚な岩の壁があり、何人たりとも通さないという強い意思が伝わってくる。
「あの窓口みたいなとこかな」
一箇所だけ小さな窓があったので、あそこで話ができるのだろう。
そこに近づき、コンコンとノックをしてみた。
「……誰」
「やっ、リーヴェ王国から視察としてエルフ公国にやってきたアスミだよ。こっちは連れのロブコとルクス」
「何の用」
窓を開け、そこに現れたのは、少しやつれた顔をしている女のエルフだった。いかにも不機嫌そうな顔をしていたが、僕を見た瞬間に少し瞠目させる。
男も女も、僕の顔を見て驚くのは変わりない。いかんせん顔面偏差値が超高いからな。
「単刀直入に言うんだけど、城下町に入りたいんだ。ほら、僕らの書類もあるしさ」
「……此処には入れない。そういう決まりがあるから」
「……そっか、君もお仕事で頑張ってるみたいだしね。可愛い子の頑張りは無碍にできない」
「……私は可愛くない。からかわないで」
そういうと思ったさ。
一目見た瞬間から、仕事疲れしている女の子だと分かった。疲れている子はメイクや身だしなみを疎かになりがちで、可愛さないと勘違いをしてしまう……と、僕の経験上からそう感じた。
「ふぅん。目の下のクマ? 喋り方かい? ……ふふ、頑張ってる証じゃん。そんな中でも、君の手入れの入った爪を見たら一気に可愛さが感じ取れたよ」
「っ!」
「あ、言っておくけど、君の顔、喋り方、全部魅力的だから、そう卑下しないといいよ」
自然と手を握って、紅潮しているエルフの子の瞳をジッと見つめる。地球にいる頃身につけた目を奪う目。これで僕のことを釘付けにさせた。
しばらく見つめ合った後、目を逸らして手を離す。
「君と話せて楽しかったよ、エルフちゃん。さて……それじゃあみんな、今日は誘われたところで泊まろうか」
「アスミ殿? 此処に来る道中で誰かに誘われていたか?」
「誘われてたじゃないか。なんせタダだよ? ……ま、男の人の家で、雑用やら料理やら奉仕をしろって言われたけどねぇ」
「ぇ……」
踵を返して二人に話していると、後ろから動揺の声を漏らすのが聞こえた。もちろん、この話は嘘だ。
自分を認めてくれて、可愛いと言ってくれて、生き方を認めた人間。ちょっとでも「いいな」と思ってしまったそんな人物が、自分より下に見ている男に取られそうになっている。
……それを理解してしまったら、果たしてどうなるか。人間もエルフも、結局は似た者だ。
見捨てられないだろうよ。
「ッ……! わ、分かったわ! あ、貴女たちを特別に許可する!」
「本当? でも決まりがあるんじゃないの?」
「決まりはあるわよ……。けど、城下町にも人間の女子はいるし、三人くらい増えなって気づかれない。……男に変なことされるくらいなら、助けてやってもいいわよ」
「そっか、有難う。君は心も綺麗だったなんてね。初めてのエルフちゃんがこんなにも素敵だったなんて、僕は幸せ者だよ」
「ふ、ふふ……そ、そうかしらね?」
その後書類を見てもらい、特例として僕らは城下町に入ることを許された。
目がハートになっている門番ちゃんと離れ、息を吐いた。
「こんなもんかねぇ」
「あ、アスミ殿……なんという手腕……」
「僕にかかればこんなもんよ」
「しかもアスミちゃん、魔術を一切使ってなかったのがすごいですね☆」
「な、なんだとォ!? てっきり魅了の魔術を使ったかと……」
エルフは魔力の流れに敏感だ。使えばバレる可能性がある。なので魔術以外の持てる技術全てを使って堕とした。
「ぎ、逆に使っていてほしかったぞアスミ殿……。お主が恐ろしい……」
「はっはっは! 驚くのはまだ早いと思うな〜」
さて、まずは一人堕とした。
城下町に入れたとはいえ、呪いをかけたやつが貴族ともなるともっと色んな女の子を堕とす必要がある。
この国を陥落させる勢いで行こうか……!
[あとがき]
3-2章とは違う意味で恐ろしいぞアッシュ。
カーッ!私もアスミに堕とされてェなー……。
因みにエルフ公国は3-3、3-4章に別れるかもしれないので、いっぱいTSアッシュが見れるかもよ!!
ヤッタネ!
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