第38話
魔王様と魔界に別れを告げ、僕は再びリーヴ王国に戻ってきた。
「はぁ……結局、仕事決まんなかったな」
夜の街をトボトボと歩きながら、ため息を吐く。
王室直属騎士、魔女の弟子、冒険者、勇者の師匠、魔王専属秘書……。どれも良かったが、逆にそれで迷ってしまい、どれも選べなくなってしまった。
「僕に仕事は務まらないのかなぁ……」
少しブルーな気持ちになりながら重い足をただ動かす。
このままだと、色んな女の子と関係を持って食事を食わせてもらったり、住まわせてもらったりと……典型的なクズ男のようになってしまう!
最悪の結末を考えながら歩いていたら、結構歩いていたみたいだ。目の前には一つの宿屋があるだけで、繁盛している王都のど真ん中とは大違い。
金はまだあるし、とりあえず今日はあそこに泊まることにしよう。
「〝宿屋・ルミノックス〟ねぇ。……嫌な顔を思い出したな」
頭に浮かんだものをぱっぱと振り払い、宿屋の扉をあけて中に入った。内装は平凡な感じで、どこから落ち着くような場所だ。
キョロキョロと顔を動かしていると、奥から人が出てくる。しかし、僕は思わず息を飲んだ。
「お久しぶりでございます、アッシュ=フィーニス」
「――ッ!! 〝
――ガギィィィィンッッ!!!!
僕はそいつの姿を見た瞬間、【
だが、手のひら一つでそれは受け止められてしまった。
「開口一番刀とは、昔の癖が抜け切っていないみたいですか」
「なんッ……で、お前がここにいる! ルクス=ルミノックス!」
「その名を呼ばれるのは懐かしいですね」
「そりゃそうだろうよ! 僕より年上の、この世界の最高神様が……!!」
金色の瞳と髪を持つ中性的な人の形をした者。こいつこそがこの世界の天上に君臨し、世を眺め、混沌を炸裂させた張本人。
「……あの、アッシュ=フィーニスよ。一つ前の世界の最期の記憶は欠けているでしょう? 僕のことよく思い出してください」
「はぁ? 最期? 最期…………あ」
あー……そういえばそうだった。結局コイツは傀儡のスキルで操られてたんだった。記憶もぐちゃぐちゃにされたから忘れてたな。
僕は刀と、ルクスに向けていた殺意を収めた。
「そんで、なんでこんな宿屋で神様が働いてんだ」
「実は最近、堕天しました☆」
「ぶっ! ……天界は大丈夫なのかよ」
「ええ、僕はもう必要ないですから。あと僕はみんなからルーちゃんって呼ばれてますよ☆」
「そうかい……」
こんな性格だったっけ、コイツ。まぁ今の方が喋りやすいからいいけども。
……ちなみにだが、コイツは男だ。男の娘と言われる類だな。
「世界を終わらせ、救った君は、居場所を探し彷徨い続けるストレイキャットになった、と」
「うるさいぞ。ったく、俺だって悩んでんだ」
「一人称、戻ってますよ」
「あ、やべ」
昔はあまり思い出したくないから、やっとこさ僕が定着してきたのになぁ。まぁいいや。
「今日1日泊めてくれよ、タダで」
「地獄に落としますよ」
「昔のよしみって知ってるか?」
「僕を一度殺したの忘れてませんか?」
「その後ちゃんと復活させただろ」
「その後僕の頭ぶっ叩いたでしょう」
強情な神様だこと。
感動の再会(笑)をしたというのに、全く優しくないな。
「けど、一つ提案がありますよ」
「なんだ?」
「ここで店を開いて社長をする、というのはどうかな」
「社長?」
「この宿屋の上の階が開いているので、そこで色んな人の悩みを解決する店を開く。冒険者より距離が近い職。どの職にも就かないが、どの職にも精通をできる超法規的店。……どうですかね」
コイツ……ずっと僕のこと見てやがったな。王室直属騎士から魔王専属秘書までずっと。
勇者につけば魔王は捨てることになる。逆も然り。そこでこの提案をした、と。
「やれやれ……。昔からお前はそうだな、ルクス」
「ルーちゃんと呼んでくださいね、男神だけど。……あ、あと防音はしっかりしてるし、大丈夫ですからね☆」
「……お前、頭叩くぞ」
まぁいい……。
正直言ってどの職場も魅力的だったが、立場を気にしていた。だからどの職にも就けなかった。
決定ではないが、乗ってやらんこともない。
「いいぞ。やってやるよ、社長を!」
僕はこの日、神の宿屋で社長(仮)となるのであった。
[あとがき]
意味深な会話とともに社長になって第2章終了です。次章からヒロイン同士の掛け合いが見られると思われるのでお楽しみに!
あと言っておきますが、私は男の娘が一番の性癖だ!!!(ドンッ!)
〈報告〉
12月からカクヨムコンテスト9が開催されますよね。私も参加するのですが、カクヨムコン用の作品が一切書き進んでおりません。(何やってんだお前ェ!)
なのでそっちを優先させて書こうと思っておりますので、この作品の毎日投稿を第38話(第2章終了)を持って中止させていただきます。
毎話楽しみにしていただいている読者様には大変申し訳ありませんが、皆様が楽しんでいただけるような最高の作品を書き上げたいのでご了承を。
毎日投稿しなくなるだけで、ちゃんと投稿するからね!
ではではこの辺りで。
海夏世もみじでした〜。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます