第31話
魔王軍幹部(笑)に圧勝した後、魔王様に連れられて城内に入る。玉座での尋問……ではなく、普通に椅子に座って机を隔てて話し合いをすることになった。
「先程は我の部下が無礼をして悪かった」
「大丈夫ですよ、僕もスカッとしたんで」
「それならばよかった。アイツは面倒な性格ゆえ、我の方も助かったぞ」
あの性格でよく四天王まで上り詰めることができたなぁと、逆に関心ができる。普段は仕事をこなすが、魔王様のこととなったらヒートアップするとかだろう。
一旦その話は置いておき、仕事についての話に変わる。
「さて、仕事の内容だが、我の秘書となってほしい」
「秘書、ですか。けどさっき秘書っぽい人がいた気がしますが」
「アレはただの配下だ。信用でき、我と互角に渡り合える者を秘書にしたいと思っていたが、中々いなくてな」
(そりゃアンタ魔王だからだろうが……)
ジトッとした視線を送るが、僕が思っていることはわかっていない様子だ。
「まぁよい。それで、引き受けてくれるのか?」
「……そのことについてなんですが、今僕は色んな職場を体験してるんですよ。中々決め難くって」
「成る程な。では我もそのようにしよう」
「助かります」
「……ふむ、だがこういうので就職の決定というのはどうだ。秘書だけではなく、我が夫にもなるというのはどうだ?」
「えっ!?」
ニヤニヤと口角を上げながらそんな提案をしてくる魔王様。
確かにこの魔王様はめちゃくちゃ面が良いが、同じくらい顔が良くて良い女性は僕の周りにもういる。
「やれやれ……そんなことでは釣られませんよ。心に思ってもないことを言うのはやめたほうがいいと思いますが」
「ほう、本当にそう思っているのか?」
「…………あれっ」
いや、気のせいだろう。
なんか最近会った女性たちと同じような顔をされているように見える。まさかな……。
「……まぁよい。ならば3日ほど我の専属秘書という形で職場体験ということで」
「わかりました。ありがとうございます」
「それと聞きたいことがあるのだが――この勇者の残穢は何だ」
「ッ」
依然として魔王様は笑っている。しかし、ヌルッとした恐ろしい魔力を感じ、威圧感が漏れ出ていた。
やっぱりそこについて言及されるか……。
「他にも人の子との盟約が手に。魔女の残穢も大量についておるな」
……あれ、魔王が言う残穢ってもしかしてアレのことじゃないか? イアとシアンはそういう関係だし……。
「あ、えっとーこれは……」
「秘密というのは言わずもがな、話したくないものだな。だから……見させてもらうぞ。【
右手を僕にかざし、魔術を展開させる魔王。他者の記憶を探り、それを映像としてみる魔術だったか。
大抵の相手は僕に干渉できないが、魔王となれば話が変わってくる! ……み、見られてしまったか……? イアとシアンとのあの光景をっ!!
「…………」
「……あの、魔王様?」
魔王は無言で僕の記憶を見ているようだが、薄く見える映像では二人の男女がナニカをする映像が流れている。
いや、でも魔王様だし、人の営みくらいは知っているだろう。これくらいのことで動じるなんてことあるはずが――
「――にゃにゃにゃ、にゃにをしているのだこれは〜〜っっ!?!?」
「え!!?」
顔は真っ赤で目をぐるぐる、口をふにゃふにゃにしている威厳無き魔王様はそこにいた。
「あ、アッシュのこの黒くてゴツゴツした棒はなんだっ! しかも星空の魔女がこんなに叫んで……貴様何をしておるのだっ!!!」
「え、いや、これは……」
「ま、魔女だけでなく勇者にもしておるのか! この白い液体はなんだ!! 女をおかしくする新手の魔術なのか!? 大体この部分はデリケートだぞ! それをこんなにズボズボと……ひゃぁ!!」
「えー…………」
顔を真っ赤にして手で目を塞いでいる。
どうやらこの魔王様、性の知識に関して何も知らない。箱入りお嬢様ならぬ、箱入り魔王様らしい。しかも乙女と見た。
「失礼ですが魔王様、子供はどうやってできると教えられてきましたか?」
「そ、そんなのは決まっておるだろう! ちゅ、ちゅーに決まっておるっ!!!」
「んぐっ……ふふっ……」
この魔王様、本物だ。
僕の中の鬼畜が顔を出し、一つ意地悪をしてみたくなった。
「魔王様、夫婦というものはこれを毎晩のようにするものなんですよ? 僕がもし先程のを引き受けていたら……これをスることに……」
「ま、毎晩だとっ!!? わ、我にこんな行為ができるのだろうか……」
「個人差があるので安心してください。しない夫婦もいますよ」
「ほっ……」
無垢な魔王様が可愛いからしばらくはぼやかして伝えておこう。あと、この状態から手を出すのはもったいな……ゲホンゲホン、可愛そうだからやめておくとしよう。
いや〜、楽しい職場体験になりそうだ!
[あとがき]
魔王様が今まででてきたヒロインの中で一番“乙女”であるぞッ!!
魔王様はまだ汚しません。そういう展開を期待した方々はドンマイ!
魔王ちゃんにエッチなことするのダメ!死刑!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます