第16話
めちゃくちゃ体が熱くて変な気分になっているが、気にしないように魔術研究を進めている。
基本独り身だったゆえにこういう時のための魔術は製作していないし、欲を抑える魔術なども開拓されていないから解決できないのだ。
(急遽今の研究を中断してそっちの魔術の開発を進めよう……。このままじゃイアを襲いかねない……)
時間が経過していくにつれて治っていくかと思ったが、逆だった。どんどんと体は熱くなっている。
頭から邪な考えを捨てて目の前の魔術だけに没頭しようもしたのだが……。
「ねぇアッシュ……。私、今顔火照ってる……?」
「ッ!? え、ぁ、あぁ……。赤い、ぞ……」
「……そっか」
まずい、反射でイアの顔を見てしまった。
言った通りにイアの顔は火照っており、今の僕にはとんでもない刺激。悶々とありとあらゆる妄想が浮かび上がらされる。
イアめ……これも何かの作戦か!? なんてタイミングで確認を取ってきたんだ……!
「……アッシュ、集中できないならお風呂入ればいい。私の家あるから、入っていいよ……」
「ほ、本当か? じゃあお言葉に甘えさせてもらおうかな……」
普段は【
……しかも、毒を抜くには良いタイミングかもしれない……。
「水滴とかは魔術でなんとでもなるしタオルは大丈夫だ。ちゃちゃっと入ってくる……」
「ん……行ってらっしゃい」
なんだかイアから熱い視線が飛んできていた気がしたが、僕は気にしないように教えてもらったお風呂場へと移動をした。
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「……普通に手入れされてる風呂だな。てっきり掃除を怠って汚いかと……。それは偏見か」
風呂場はとても清潔で、カビなどは見当たらない。風呂に入るということで、きちんと服を脱いで入っていた。
しばらくして、浴槽の横に座りながらおっ始めようとしたその瞬間だった。
――ガラララッ。
「な、え!!? なんで入ってきてんだイア!!!」
なぜかイアがここに入ってきたのだ。もちろん着ていないわけだが、タオルを巻いていた。直視できないので急いで後ろを向く。
しかしそれはそれで……っていかんいかん! とりあえず鎮まっとけアッシュ!
「体洗う」
「いや、魔術で洗えるしそれは流石に……」
「ん……♡」
「〜〜っ!!?」
ピトッと背中に柔らかい手が当たり、ダイレクトにアソコに雷が打たれたような感覚が走る。どうやら謎の効果が更に強まってきているらしい。
ぬちょぬちょと音を立てて僕の背中を洗うイアだが、荒い吐息も微かに聞こえてきている。
「アッシュ……(背中)おっきいんだね……。ガチガチしてるし強そう……♡」
(うぉおおおお! 誘ってんのかコイツ!? 全部いやらしく聞こえる! 助けてシエルお嬢様っ! 今にも爆発しそうだよ!!!)
というか、この展開見たことあるぞ。日本にいた友人に勧められた漫画にこういう導入のあった。
そうだ……この次は『前も洗うよ♡』的な展開だ! 先手を打つッ!
「あー、イア。前はもう洗ってたから大丈夫だ」
「ほんと? じゃあお終い……」
な、なんとかなった……。まだ無理やり抑える魔術を残しているが、それを使うまでではなかったようだ。よかったよかった。
急いで浴槽に入り、温かいお湯に浸かる。イアも出て行くだろうとチラッとそちらを見ようとすると、目の前が真っ白になった。
……衝撃的なものを見て真っ白になったわけではなく、物理的に真っ白になったのだ。
「ちょ、な、え!?!?」
白いものの正体はイアが体に巻いているタオルであり、それが目の前にある。ということは、一緒に入っているということだ。
「狭くてごめん。あと、ちゃんと魔術で汚れとったからだいじょぶ」
「な、なん、で……?」
「……言わなきゃ、ダメ……?♡」
「ナ、ナンデモナイデス」
これ以上僕を刺激することはやめてほしい。柔らかい体が僕の上に乗っかっているという事実プラス、甘い言葉を投げかけないでくれ。
【明鏡止水】という自分を落ち着かせて集中力を高める魔術を発動させて、イアに僕の汚い物がかろうじて当たっていないが、時間の問題かもしれない。
(うぅ……なんか良い匂いする! 幾星霜と生きている僕がここまで追い込まれるとは……!!)
何年振りだっただろう、ここまで限界が近づく戦いをするのは。
「はぁ……はぁ……」
「い、イア……? どうしたんだ?」
「んぅ……ブクブク……」
「イアーーッ!?!?」
先程から息が荒く色っぽいなぁとか思っていたが、突然風呂の水に顔を突っ込んで溺れかけていたのだ。
顔が尋常じゃないほどに赤いし、どうやらのぼせてしまっていると推測をした。
「しっかりしろ!」
兎にも角にも、なんとかイアが風呂場に乗り込んで一緒に入ってくるという風呂場事変を乗り越えたのであった。
――風呂場事変・アッシュの勝利。
[あとがき]
次回、決着。
アッシュ(守り)とイア(攻め)、どっちが勝つかお楽しみに。
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