第15話

 〜引き続きイア視点〜



 〈Method.5〉

・媚薬を使おう!

・料理に入れて食べさせるのが吉!

・⚠︎入れすぎ注意(小さじ一杯ほど)。


 これならいける……!

 料理は得意だし、ちょっと前に依頼として作った私特製の超強力媚薬がある。それを使えば……。


「アッシュ」

「今度はなんだ……」

「そろそろお腹空く頃。私料理する」

「おー、それは助かる。なんか手伝おうか?」

「ううん、いらない。作ってくる」

「助手なら本来作る立場なんだろうけど……ま、ありがとなー。助かるよ」


 キッチンに移動し、【無限収納ストレージ】から調理器具や具材を取り出して料理を開始する。

 料理が楽しくてつい本来の目的を忘れるところだったけれど、なんとか媚薬のことを思い出すことができた。


「えーっと……あった」


 瓶に詰められたピンク色の液体。これこそが依頼として作られた媚薬。

 どれくらい入れたらいいんだろう……? 無味無臭だし、入れるだけ入れた方が効果あるよね。どうせ水も入れなきゃだし、代用としてこれを……。


 ――ダバーーーーッッ。


 ヨシ、これ(全部)でいっか。

 見た目はなんの変哲も無い普通の料理。これでもダメかもしれないし、今のうちに後からする項目も見ておこう。


 〈Method.7〉

・顔を火照らせてみよう!


 〈Method.11〉

・一緒にお風呂に入ってみよう!


 〈method.26〉

・一緒のベッドに入ってみよう!


 〈Method.30〉

・もう直接言っちゃおう!


 ま……この辺りでいいかな。徹夜で作業をしてもいいけれど、子作りできる確率が上がるのなら寝るのもあり。

 とりあえずはこの料理を食べさせよう。


 ――しかしこの時、イアは気づいていなかった。これから食べる料理はアッシュだけでなく、自分も食べてしまうということに……。



###



 ……イアが料理を作り始めて数分。香ばしい香りが漂ってきて、腹の虫が呻き始めてくる。

 イアの魔術研究してる様子もよく見てみたかったが、なんか様子がおかしかったから今度でいいかと思い、今は自分の研究に没頭していた。


「アッシュ、おまたせ」

「お、できたのか?」

「ん。資料汚れるのやだからこっち」

「了解。ありがとう」


 キッチン近くにある机に移動させられる。そこには豪華な料理が並べられており、どれも輝いて見えるほど美味しそうに見えた。

 自然とよだれが出そうになるが、汚いので抑える。


「すごいな。あの短時間でこれだけのを……しかも全部美味しそうだし」

「味も確か。良い魔術研究のためには良い料理が必須。召し上がれ」

「いただきます」


 差し出された料理を口に運ぶと、思わず驚いた。


「ヴッ!!?」

「ど、どう……?」

「――めちゃくちゃ美味い!」

「……! ふふ、よかった」


 この人には珍しい笑顔が今咲き、翡翠色の目がキラリと光るのが見える。

 だがそんなことよりも飯が美味かった。僕も長年料理をし続けているが、彼女の方が何百倍も美味しいことがわかる。今度料理を教えてもらいたいものだ。


 バクバクと二人で豪勢な料理を食い進め、机の上は綺麗に片付いた。


 しかし、たった一つだけ思ったことがある。


(なんか……めちゃくちゃ体が熱いんだが!? しかもイアを直視できない……!!)


 全身熱いが、重点的に熱い場所もある。イアの料理が特殊な効果を発動させた? それとも――

 昂ぶる感情がモロに出る部分をなんとか抑えながら、チラッとイアを見ると彼女も顔が赤くなっていた。


(……いつもの感覚で私も食べちゃった……。熱いしお腹の奥がジンジンする……)


 どうやら彼女も同じ状態らしい。ならばいつも通り……なのか……? まだ彼女のことがあまり理解できていないからわからないな……。

 あらゆるものに耐性を持っているが、まさかここまで体に効くものがあるとは思わなかった。まあとにかく、時間がなんとかするだろう。

 そう自分に言い聞かせる。言い聞かせただけだった。


 ――本当の戦いは、これからだったというのに……。

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