第14話

 〜イア視点〜



 私のやることは決定した。ヤるのは子作り。そのムードにするには容易い……かはわからない。なんせそういうことをしたことがないから。

 魔術を使ったらアッシュにバレそうだし、極力使わないようにしなければならない。


 一旦自分の作業スペースである椅子に座り、本を漁り始める。


「……あった」


 見つけ出したのは『男子をその気にさせる30の方法♡』とかいう、私に微塵も縁がなさそうだった本。

 本を10冊買えば貴重な魔術本がもらえるというサービスがあったので、適当に選んで買ったやつだ。


(まさか役に立つ時が来るなんて。……とりあえず見てみよう)


 ペラっと表紙をめぐり、あらすじを飛ばして内容を確認する。


 〈Method.1〉

・肌の露出を増やして誘惑してみよう!

・「なんかこの部屋暑いね〜」などと言ったりするのが自然的!


 ……ふむ、なんでそれでその気になるのかが全くわからないけれど試してみよう。


「アッシュ、なんかこの部屋暑いね」


 服に手をかけ、どんどんと脱いでいく。アッシュは集中を切ってこちらを向いた。


「いや、逆に少し寒……――って、なんで全裸なんだ!?!?」


 とんがり帽子、ストッキング、手袋などだけ残して、他は全部脱いでいた。仁王立ちをしているので色々と丸見えの状況。

 アッシュも慌てている様子だし、これは成功なのだろうか。


「山頂の家だから寒いだろ!?」

「い、いいや……? ぜ、全然……ズビッ」

「……はぁ、とりあえず服を着ろ。何がしたいかわからないが、それじゃ集中できない」

「…………わかった」


 極力こちらを見ないようにして服を手渡してくる。

 失敗なのかな。何がダメだったかまるでわからないけど、次の作戦に移行しよう。


 〈Method.2〉

・ボディータッチを増やしてみよう!

・自然に体に手を当てたり、腕を組んでみたり、胸も当てちゃうのもアリかも!


 へー……肉弾戦ボディータッチがいいんだ。相手に向かって自然に拳で打撃したり、組み技をしたり、プレスしたりか……。

 でもこの家の中で暴れたら研究資料が大変になるから却下。次。


 〈Method.3〉

・Hな本や物を見せてみよう!

・これはちょっと難易度高いから難しいかも……!


 Hな物……はっ、もってる。

 Hというか、エロい物。ガサゴソと机上の紙を漁り、それを見つけ出した。

 手に持ち、アッシュにそれを見せつけてみた。


「アッシュ、これ見て」

「ん? お、うぉ……それは中々……」


 見せつけたのは魔術の回路が書き記された一枚の紙。この魔術回路、回路核やら線やら色々とエロいのだ。


「アッシュ、この魔術回路、エロくない?」

「どちゃくそエロい」

「……どう?」

「? どう、とは?」

「んー。なんでもない」

「???」


 失敗らしい。この本、もしかしてホラしか書いていない? ……でも子作りの知識があまりない私にはこれしか頼るのないから仕方ない。

 次に行こう。


 〈Method.4〉

・恥ずかしがりながら着替えてみよう!

・乙女な部分にドキッとしちゃうかも?

・「見たらダメだからね……?」とか言ってみたり。


 着替え……なぜ着替えでその気になるのかがやっぱり意味不明。

 とりあえず言われた通りにやってみよう。


「アッシュ、私ちょっと着替えるね」

「えっ? い、いきなりだな……。じゃあ僕は一旦部屋の外に出るよ」

「見たらダメだからね」

「見るも何も、さっき全裸見たが? しかも恥じらいなしの脱衣だった気がするが??」


 部屋からアッシュは出て行き、何事もなく着替えが完了してしまった。失敗。

 うーん……やっぱりこの本はダメなのだろうか。そう思って次のページにめくると、


「あっ」


 そのページには、私が得意なことがそこには載っていた。

 これは好機チャンスだ。



[あとがき]

イアの性知識は30%程度、羞恥心は0%である!

ちなみにアッシュは……まぁ想像にお任せします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る