第2話

『さてさて、戦いも続いていますが次はいよいよシード枠からの出場ッ! 手札無限の最強魔女! 遥々山頂から来たる災いの如き彼女の進撃を止めれるか〜!? イア選手です!!』


 第2試合の僕の対戦相手は魔女らしい。

 王都最寄りの山頂でひっそりと住んでいる『星空の魔女』と呼ばれる人だが、今日はなぜか目立つ大会に出場してきた。理由はわからないが、彼女がやばい選手の一人である。


『そしてその対戦相手、一味違うところを最強に見せつけられるのか!! アッシュ選手!!』


 魔女、か。僕が研究している魔術以外のものを知っている可能性もあるし、有意義な試合にしたい。そんで終わったらその魔術の研究をしよう。

 目の前には、とんがり帽子に赤い髪、翡翠色の目を持ついかにも魔女といった容姿の女性。あの人が対戦相手だ。


『ではでは、レディ〜〜? ファイッッ!!!』


 ブツブツと呟いて、魔女は魔術を展開させた。


「面倒ごとは嫌い、早く終わらせる……。死にたくなかったら棄権して。【くろ】」


 彼女が呟くと、ボール程度の漆黒の球体が出現した。そして凄まじい音を立てて空気を吸い込み始めた。

 確かブラックホールとかって名付けたような気がする。


「棄権はしません。同じくらいの土俵で嬉しいですよ。【しろ】」

「!!」


 僕も魔術を展開し、魔女とは正反対の純白の球体を生み出した。それを漆黒の球体にぶつけると、どちらも消滅をした。

 彼女は瞠目させて驚いており、少し笑みを浮かべていた。


「面白い……。じゃあこれは? 【滅炎球めつえんきゅう】」

「対策済みですね。【万海球ばんかいきゅう】」


 巨大な火の玉と水の玉がぶつかる。


「じゃあこれ。【破撃テラ・インパクト】」

「その上位魔術ありますよ。【滅撃ペタ・インパクト】」


 今度は見えない衝撃がぶつかり合い、突風と轟音が響き渡る。


「なんだこの戦いはよ!」

「怪物バトルだ!」

「会場壊れりゅううう!!!」

「どっちも化け物だ……」

「アッシュ今までの何だったんだよ!!?」


 さすが魔女と言ったところか、僕が結構時間かけて開発をした魔術をポンポン出してきている。

 ポーカーフェイスだった魔女の顔が少し動いており、口角が変わっているように見えた。


「さて……こっちからいかせてもらいますよ。【冷々地獄】」

「……【炎々地獄】」

「【絶対切断アブソリュート・ブレード】」

「【絶対防御アブソリュート・シールド】」


 ………………。

 …………。

 ……。


 その後も魔術の見せ合いっこをしてたら、フィールドがボロボロになってしまっていた。


「……ふふ、とても面白かった。私は棄権する」

『え? え!? イア選手棄権しました! つまり勝者はアッシュ選手です!!!!』


 満足した様子で魔女はフィールドから降りた。ボロボロに壊れたフィールドを魔術で元どおりに直して、こちらに振り向いた。


「……ん、アッシュ。覚えた。近いうちに勧誘する」

「は、はぁ? そうですか」


 何が何だかよくわからないが、とりあえず第2試合も勝利した。

 なんか魔女さんの目が少し怖かったような……。狙いをつけた肉食魔獣のように感じられたぞ……。


 少し寒気を感じながらも僕は控え室に戻った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る