第2-3章 居場所探しの職場体験〜冒険者&勇者の師匠〜

第20話

「ここが冒険者ギルドか」


 お嬢様から教えてもらった場所に辿り着くと、目の前には大きな建物があった。鎧をまとった人やけんだけ携えている人、多種多様な人がここから出入りしている。

 それだけ自由度が高いということなのだろう。


「普通に入って良いのか? わかんないけどまぁいっか」


 ギィッと扉を開けて中に入る。

 中では酒を飲んだり、談笑したり、作戦会議などなどをしている人らが目に入った。

 キョロキョロと田舎から東京に出てきた人みたいな動きをしていると、後ろから誰かに話しかけられる。


「ケヒヒッ、兄ちゃん冒険者ギルドは初めてかァ?」

「あぁ、はい。初めて来ました」


 後ろには、金髪でモヒカン、棘が生えた服を着ている人が立っていた。ナイフをペロペロと舐めており、ここは世紀末だったか?

 面倒ごとには巻き込まれたくないものだ。


「こっち来いよ。冒険者ってもんが何か、教えてやっからよォ……!」


 無理やり手を引かれ、モヒカンに連れられる。

 いざとなれば反撃するが、職場体験をしに来ているから騒ぎは起こしたくないな……。



###



「えー冒険者とは、魔物や魔獣を討伐、ボランティア活動、街の住民からの依頼クエストなどをこなす仕事だぜェ。

 冒険者は功績を上げればどんどんと進級できる。最初は皆E、そこからDCBAと上がる。最高はSだが、これはごく少数だ」

「成る程。ありがとうございます

「おうよ、冒険者というものをよく知らずになる危ないやつがいるから、こうやって事前に知ってもらうことにしてんだ。

 一人でも無駄死にの数を減らしたいからなァ」


 このモヒカン、普通にいい人だった。〝人は見かけによらない〟を体現したような人だ。

 ちなみに名前はモヒ・カンというらしい。


「モヒカンさん、なんでそんな見た目なんですか? 容姿にとやかく言うつもりありませんが、初見だとまぁまぁ怖いですよ」

「これなァ……地毛なんだぜ。縦一列しか生えねぇんだ……」

「え、えぇ……。じゃ、じゃあそのヒャッハーな服とナイフは?」

「服はおばあちゃんから貰った大切なモンだ。ナイフは初給料で買った思い出の品だぜ!」


 聞けば聞くほど善良な人間だな。なんと言うか、勿体ない。

 冒険者について詳しく教わったところだし、こちらの本題を話させてもらうことにした。


「実は冒険者を職場体験したいですよ」

「職場体験か。春と秋に毎年やってるが、今はやってねぇんだ。けど、俺様がギルマスに掛け合ってみるぜ」

「うーん。あ、そういば困ったらこれ渡せって言われたんですけど……」


 懐から一枚の紙を取り出した。

 これはシエルお嬢様のところの騎士さんが書いてくれて、困ったら渡すように言われたがこれで良いのだろうか……?


「あ〜? なっ!? お、王室直属の騎士様からだァ!? よしわかった。コイツがありゃあ問題ねェ! ギルマスんとこ行くぞ!」


 『ヒャッハーッ!!』と雄叫びをあげて部屋を飛び出すモヒカンさん。その後ろについて行き、関係者以外立ち入り禁止の部屋までたどり着いた。


「ここがこの冒険者ギルドのトップであるギルドマスターないる場所だ。お〜いロブストさん入るぜ〜?」


 ガチャリと扉をあけてその部屋に入る。

 そこにはあの時見た筋骨隆々の騎士兼ギルマスのロブストさんとやらの姿。そしてなぜか、青い髪の女の子……もとい、勇者だがいた。


「モヒ、今は勇者殿と話し中であるぞ。話なら後に……と、貴殿はもしやアッシュ殿か!?」

「ええっ!? わぁ! 師匠〜〜!!!」


 女勇者は僕をみるなり席を立ち、こちらに向かって駆け出す。そして机の脚に引っ掛かって体勢を崩し、


 ――ベチャッ。


「…………え?」


 勇者が転んで地面にぶつかった衝撃で、潰れて青いジェル状になった。


「……死んだ……」


 勇者が死んだ瞬間だった。



[あとがき]


もう吹っ切れてるんで私の性癖を詰め込もうかと思った所存です。

勇者の正体わかるよね?わからなくても次回でわからせます。ちなみに私の性癖の一つである。

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