第4話
第4試合の相手は現在魔王討伐の旅に国々を渡っている勇者である。
しかし、試合内容は割愛させてもらいたい。なぜならば、勝負にならなかったからだ。この4つの試合の中で、逆に一番面倒だったかもしれないな……。
「アッシュ! いや、アッシュさん! ボクを弟子にしてください!!」
「…………え?」
試合が始まると同時に、腰を直角に曲げて僕にそんなことを言い放ってきたのだ。
ミディアムヘアーの藍色の髪と桃色の瞳を持つ可愛らしい少女。シアンという彼女こそが、今現在世界的にも有名な勇者なのだ。
この大会に出場した理由は『強い者と戦いたい』と言っていたのだが、なぜいきなり弟子にしてくれなんて頼んできたのか。
僕はとりあえず理由を聞いてみることにした。
「えっとー……なんで僕を師匠にしたいって思ったの……?」
「それはもちろん先程の試合を見させてもらったからです! ボクはまだまだ未熟者なので強き人に教えを請いたいと思いこの大会に出たんです。そこで見つけたんです!!!」
魔王を倒すために強い力が必要。そのためには自分を鍛える必要があるが、人から教わる方が圧倒的に良い。そこで俺に目をつけた、と。
ふむ、成る程……。まぁ答えは決まっているな。
「拒否する」
「そんなぁ!!! ガクッ……」
「僕より強い人は多分他にもいるから、他を当たって……」
「しかしボクはこんなところで挫けません! 覚えておいてください師匠(仮)〜っ!」
そう言い残し、フィールドから退場した勇者。場内が呆然としていたが大丈夫、僕も同じ気持ちだった。
何が何だかわからないまま、決勝戦に勝ち進んだ。
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『さて試合もこれにてラストッ! これまで壮絶な戦いでしたがこれで最強は決まる!
そして今回はなんとも番狂わせな試合でした。実力を隠し続けてとうとう解放したアッシュ選手ッ! そし初出場で規格外の力を発揮するウォーマ選手です!!!!』
最後の相手はウォーマという人だ。
この人は全く情報の無い初出場選手であり、謎が多い。猛者揃いの今回の試合で最後まで残ることができたということで、相当な力を持っているんだろう。
真っ黒なローブで身を包み、素肌を一切見せていない怪しい身なりをしてい人物だ。
だが……妙な気配をこの人物から感じるいや、人……なのか?
「試合前に聞きたいんですけど……人、じゃないですよね」
「……ほう、隠蔽魔術を展開しているのに我の正体に近づくとは。やるの、小僧」
勘が当たったみたいだ。
なんとなく気配が他とは違かった。人間すぎな気配だったのだ。何を言ってるかわからないかもしれないが、自分でも何を言っているのかわからない。
《ウォーマなどと名乗っているが、我が真名はノクテム・テネブラエである》
突然脳内に相手の声が響いてきた。【念話】を使用してきたらしい。
ノクテム……聞いたことがあるが、なんだったか……。確か今有名で……勇者と並ぶほどのナンカだったような……。あっ。
《 魔王だったのか》
《ご名答だ》
ノクテム・テネブラエ。
遠い島を根城とし、世界中にダンジョンを発生させたり、魔物を召喚したりできる闇の支配者。
魔術研究で地下に潜りすぎて存在を忘れていた。
しかし、なぜこの試合に出ているのか。人間の国で、人間が主催したものなのに。
『さぁそれでは! いよいよ最終バトルをスタートします!! 一体どちらが一位に輝くのかッ!!!』
だが、どうやら僕の質問を投げかけて答えてもらう時間はないらしい。勝って、聞き出すのも一興かな。
僕は最初から木剣ではなく、刀を抜いて構える。流石に魔王相手に手加減などは恐れ多くてできない。気を抜いたら殺されるかもしれないし。
フィールドに風が吹き、会場の盛り上がりが最高潮に達した。
『
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