第6話

 全試合が終了した後、閉会式が行われる。

 そこで表彰式が行わるため、もちろん僕も呼ばれる。


「第22回リーヴェ王国最強決定大会の優勝者はアッシュ選手でーす!! おめでとうございますアッシュ選手!」

「ありがとうございます」


 表彰台に登らされ、隣にアナウンスをしていた人がいる。そしてその奥には、口をあんぐりと開けているザムアさんの姿があった。

 しめしめと思っていると、アナウンスさんが質問を投げかけてきた。


「アッシュさん、何度もこの大会には出場していましたが今回が初優勝となります。猛者たちがいるなか、今回優勝できましたが、理由は一体何なんでしょう?」

「えーっと、まぁ本気出したからですかね」

「なるほど? つまり今までは本気ではなかった、というわけですか?」


 復讐とかは特段興味はないが、魔術の紙を破られたことは少し根に持っている。なので、ザムアさんには少し痛い目見てもらおう。


「そうですね。僕が田舎から来た時、そこのザムアさんに勧誘されたんです。『八百長試合をしてくれないか』って」

「えぇ!?」

「なっ!!?」

「「「「「え?」」」」」


 会場が一丸となってザムアに視線を送る。

 しかし、僕はまだ止まるつもりはない。


「ザムアさんはこの大会の金を横領するから僕はいらないと言ってきたので捨てたんです。あと本来禁止されてる大会での賭け事をしてたり、コネで姫様と結婚したりとか言ってて、少し羨ましいとか思っちゃったりしましたね。あはは」

「「「「「…………」」」」」


 会場が静まり返る。ザムアさんの顔は血の気がすっかりなくなり顔面蒼白だった。

 近くで待機していた騎士が動き、ザムアの前に立ちはだかる。


「少し話を聞かせてもらうぞ。ザムア」

「ひ、ひぃぃ!! お、俺様は何もしてない! アッシュ! あのアッシュがホラを吹いているんだ! や、やめろ! 俺様を連れて行くなぁああああ!!!」


 ザムアが連れていかれ、気分がスカッとした。無事に優勝もできて楽しい戦いもできてよかった。

 ……けれどこれからどうしようか。察しが良くてかなりの力を持っているが、田舎から出てきてあまり常識が少し乏しい面がある。無事に職に就いて魔術の研究をしたいけれど……僕にできるだろうか。


 僕の心配をよそ目に、遠くから見る人たちはこんなことを考えていたらしい。


(アッシュはもしかしたらこのリーヴェ王国の姫さまに相応しい人なのでは? 是非とも面会をさせねば……)


 戦いを見ていた王室直属の騎士が思う。


(是非とも俺の騎士団かギルドに入ってもらわねば。アッシュ殿がいれば百人力だ)


 騎士団団長兼ギルマスのロブストが思う。


(アッシュ。私と魔術の研究してもらう。ふふ……山頂で、二人で、魔術を開拓する)


 星空の魔女が思う。


「師匠流石ですー!! 弟子にしてくださぁああああああい!!!!」


 勇者が叫ぶ。


「アッシュ、か。ククク、近いうちに魔王軍にスカウトをするとしよう。……いや、夫として迎え入れるのも有りかもしれんな」


 魔王城に居座る魔王が呟く。


「……っ!? なんだか寒気が……」


 圧倒的な力を見せつけたアッシュを見て、国中が、いいや世界中から脚光をあびることとなったアッシュ。

 そして翌日から、あらゆる面でのアプローチが始まるのであった!

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