第44話

 ――翌日。

 国王様になんとか無事だったと言う報告をするため、再び城に戻ってきた。


「あー……無事で何よりだアッシュ殿。しかし……なぜアイ様が背中に……?」


 やはりそこに突っ込まれた。今はアイが僕の背中にしがみついている状態で、めちゃくちゃ目立つ。

 ちなみにイアは家でお留守番である。


「久しいのうリーヴェ王国国王。えっと、これはじゃな、昨日腰を痛めてしまってのう……」

「そんなに激しい戦闘をしたのですか!」

「ん゛っ!? う、うむ。まぁ……めちゃくちゃ激しかったわい。は、初めての経験じゃったの〜、かっかっか……」

「アッシュ殿は流石だな」


 なんか、微妙にすれ違っているな。けど仕方ないことだろう。

 しかしまさか、広い大地での戦闘よりも、ベッドの上の方がダメージを与えられたなんてな……。


「それにしても、いきなり来るのはやめていただきたいのですがね。アイ様は異端者イレギュラーである自覚が足りない!」

「うるさいわ! 儂は自由気ままに生きておるのじゃ。誰かにとやかく言われる筋合いは――」


 僕は首を動かし、後ろのアイに顔を向ける。


「アイ、事実なんだから仕方ないだろ? ちゃんと謝ってくれなきゃ、今度はもっと激しくするよ」

「ひゅっ……♡ ……あー、えっと……ごめんなのじゃ……。以後気をつける……」


 一瞬期待がこもった声が漏れ出ていたが、すぐに謝って僕を抱きしめる力が強まった。

 アイとは、妹のイアと同じ扱いにすることにした。それつまり、紋をつけたということ。さらに言い換えれば、僕に逆らうことはもうできないということ。


「あの破壊神を手懐けている!?」

「星空の魔女さえ手中に収めてあるしな……」

「アッシュとは何者なんだ」

特異者イレギュラー入りするのは時間の問題だろうな」


 王の間にいる騎士達も、僕らの光景を見たどよめいている様子だった。

 誰にも手がつけられない暴れん坊を、たった半日程度でここまで調ky……ゲフンゲフン、丸くさせたんだから、そりゃ驚くか。


「おい……アッシュ」

「なに? アイ」

「初めてはあんなにするものなのかのう? 半日もしてたから、儂でさえ腰が痛くなったぞ」

「アイは異端者イレギュラーだからどんだけヤっても問題ないかと思って。でも途中からノリノリで腰振ってたくせに。『足りない足りない』って僕に馬乗りになったり――」

「わーわー! 言うでないわ阿呆!!!」


 前までは生意気で少し気に食わなかったが、今では弱みも握ってるし、可愛いとこも見せてくれるし……。良かった良かった。


「淫紋まで刻みおって……。も、もしもデキてしまったら責任は取ってもらうぞ」

「……そりゃ当たり前だろ。幸せにするぞ」

「〜〜っ! お、お主、いつか刺されても知らんからな!?」

「刺されても死なないからなぁ……」


 これから便利屋を開くに当たって、女性客も来るだろう。そこで無意識的に堕としてしまわないように気をつけるとするか。

 なるべくドライに。……いや、それが好きな人もいるか。悩ましいな……いっそのこと女性客には女体化TSするか? 案として取っておくか。


「そうだ、アッシュ殿。隣国のフィアンマ王国から伝言が来た。

 まずはアイ様に対しての謝罪文だが、今回は割愛しよう。そして次だが、これは超法規的機関の設置に当たる条件らしい」

「王族家からの認証ってやつですかね」

「いかにも。『認証が欲しくば、我ら王族家の依頼を見事達成してみせよ』とのことだ」


 三つの国の王族家から認証、そして各々の国の異端者イレギュラーからの認証もある。とりあえずフィアンマ王国の異端者イレギュラーからの認証はアイでクリアした。

 次は王族家からの認証のための依頼ってわけか。


「依頼の内容は?」

「それが……国王の娘が魔王から呪いをかけられているので、それを見事解呪してみせよ、とのことだ」

「魔王……?」


 ノクテムがやったのか? その王国が魔王軍に手を出して呪われた……みたいな感じなのだろうか。

 まぁなんにせよ、多分呪いをかけるのはあのメイドさんだろう。一応聞いてみるか。


(あー、ノクテム、今大丈夫か?)

《む、あ、アッシュ! ごほん、久しぶりだな。どうかしたのか?》

(フィアンマ王国ってとこの王様の娘が魔王に呪いをかけられたーって言ってるんだが、それ本当か?)

《フィアンマ王国……? いや、そういった報告は無いぞ。メイドも首を横に振っている。おそらくだが、我に擦りつけているのだろうな》


 別の真犯人がいるのか。解呪はおそらくできるが、無理やりするより呪いをかけた張本人に解かせる方が安全だ。

 手が焼けるな……。


(ありがとうノクテム。それだけ聞けてよかった)

《ふむ……なんなら我も付いて行こうか?》

(えっ?)

《呪いの系統は我の方がおそらく詳しい故。あ、あとそれに……アッシュの役に立ちたい……から……》

(……そうか。ありがとう。でも少し待っててほしいな)

《うむ、了解した!》


 そんな気軽に人間界に来てもいいんだな、魔王。いや、たしかに大会に出場してたし、頻繁に来てんのか。


「のうアッシュ、今念話しておった相手は誰じゃ? 気になるんじゃがの〜?」

「女」

「なっ、少しは隠そうとせんか! この誑しめっ!!」

「痛い」


 耳をかなり強い力で引っ張られている。エルフの耳になりそうだ。

 にしても、一瞬ドキッとしたが、これで追及をされなくて済んだ。『魔王と念話してた!』なんて言ったら、国からの信用が無くなってしまいそうだからな。


「フィアンマ王国への入国許可証を授ける。アッシュ殿、これで隣国へ行き、見事依頼を達成してみせよ。幸運を祈っている」

「ありがとうございます、国王」


 国王から許可証を受け取った。

 さて……次は隣国のお姫様か。果たしてどんなお方なんだろうな。ちゃちゃっと解決して解放してくれると助かるんだが……。


 ――そう上手くいかないのが人生だと、僕は知っている。



[あとがき]


アイは今まで出てきたヒロインの中で一番独占欲が強いという事実をここで言っておきましょう。可愛いですね。

あと言っておきますが……私はTSも好きだ。……クックック(伏線)。


[報告]

この作品が★1000いきました!ありがとうございます!!!

いや〜、感慨深いですね。初めてここまで行ったので、読者様には感謝してもしきれません……ッ!!

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