第18話

 ――昼。

 カーテンの隙間から日差しが差し込み続けていたが、やっと瞼が上がる。山頂の家ゆえに肌寒い……はずなのだが、暖かい。理由は、隣の人肌で温められていたからだ。


「すー……すー……」


 一糸纏わずスヤスヤと眠るイア。その隣で同じく裸の僕。

 フッ、と鼻で笑った後、僕はこう思った。


(ヤっ……ちまったァァ……!!!!)


 知り合ってから数日だぞ? そんな女の子と……っ! しかも星空の魔女とかいう有名で人気な美少女にあんなことやこんなことをぉ……!!

 昨夜の自分を恨む。なぜもっと自制できなかったのか。なぜもっと早くに疑問を抱かなかったのか。後悔は募るばかりだ。


「んぅ……。ぉはよ……あっしゅ……」

「お、おはようイア……。とりあえず体綺麗にして服着ようか。体中ベトベトだし見る位置困る」

「んん……わかった。……腰痛い」

「ごめん……ちょっと手加減できなかった」


 魔術で体を綺麗にした後に服を着た。

 会った時のように今はポーカーフェイスだが、昨夜は本当に可愛いかっ……って思い出すな僕! 忘れ……られはしないっ!!


「それにしてもアッシュ、結構Sなんだね。まさか紋まで刻まれるとは……。初めてのうえこれも付けられるなんて思わなかった」


 さすさすと下腹部を優しく撫でてポッと顔を赤らめる。


「うわぁあああ! ご、ごめん! すぐ消すから……」

「嫌。とっとく」

「なぜ!?」

「これがあったら面倒な男に近づかれなくなるし、いざとなればこれが守ってくれる。後は……ふふっ、内緒」


 これって俗にいう黒歴史というやつか? 一生これを脅しに利用されるかもしれないな……。

 この街でよからぬ噂がばらまかれないかもう心配だ。


「でもなぁイア、一回じゃできないぞ?」

「それは知ってる。でも、もしできてたらどうする?」

「そりゃまぁ……死ぬまで責任は取るよ。普通の人の命は短いからなぁ」

「そっか。でも私――?」


 不老不死体質、聞いたことがある。僕のと少し似ているが違う。でもそれを持っていたら心臓麻痺とかで死なないし、骨や内臓の再生なんて容易い。

 じゃあ昨日のやつって……。


「放っておいても問題なかったじゃねぇか!!!!」

「ほ、ほっふぇふぁふあああいれ頬っぺた摘まないで……! お、お腹の子に響いちゃうよ……」

「鑑定済みだ。まだできてはいないの知ってるからな!」

「……ちぇっ。でもまぁ、私の家が血生臭くならなくて済んだってことで」

「別の匂いで部屋中臭いけどな……」


 なんだかどっと疲れが溜まった気がする。

 媚薬で無理やり性欲引き出されたし、昨日の攻防とかが今日に響いてる。実際、昼まで寝ちゃってたし。


「そういえばアッシュ、職場体験として今ここにいるわけだよね。いつまでそれやるの?」

「うーん……。今研究してる魔術が完成したら終了ってことにしようかな」

「……ここに留まる気は? 正直に言っていいよ」

「そうだなぁ……」


 最初は落ち着かなかったけど今は気を緩めれるこの空間が好きだし、同じ魔術オタク同士気があう。不老不死体質のやつは大抵気が合わなかったが、イアとは仲良くできる。

 けど、まだ二つしか体験してないからな。


「一旦保留ってことでいいか? もっといろんな職場を体験してみたいんだ」

「ん、了解。もしアッシュが正式にここに来たら、楽しくなるね」

「そうだな」

「人も増えるだろうね」

「…………そう、だな」


 お腹をさすりながら言うんじゃあない。顔が引きつってしまったよ。


「じゃあ、魔術を完成させようか」

「おー」


 ――PM01:56 昼飯


「アッシュ、ご飯できた」

「ありがとう。……うんまッ!!」

「魔術研究の前は、美味に限る」


 ――PM03:14 魔術研究


「イアー、ここの魔術回路整理してくれないか?」

「ガッテン」


 ――PM05:32 昼寝


「すー……」

「アッシュお疲れ様。昨日も私のために頑張ってくれたしね。……ふふ、寝顔可愛い。チュッ♡」


 ――PM07:00 夜飯


「今度料理の修行させてほしいな」

「そんなに? ありがとう」

「めっちゃ美味い。店出せるぞ」


 ――PM07:51 風呂


「狭いけどあったかいね」

「一緒に入る必要あるか……?」

「もちろん。アッシュの出汁が滲み出る」

「……な、なんかヤダ……」


 ――PM09:13 魔術研究(2回目)


「よし、最終段階まで行ったな!」

「後一息だね。がんばろ」

「あぁ」


 ――AM00:12 ???


「んっ♡ アッ、シュ♡ 激しっ♡♡」


 ――AM03:35 就寝


「すー、すー……ふふ、あっしゅ、もうおなかいっぱいではいらない……」

「うぅん……イア……。もう、出ない……すー……」


 ……――そうして、イアとともに2回目の朝を迎えた。

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