第19話 動き出す歯車
☆双葉サイド☆
お姉ちゃんが何を考えているのか。
そしてお姉ちゃんが家族を大切にしているのか。
周りを大切にしているのか。
それは私には分からない。
何故なら私はお姉ちゃんでは無い。
だから分からないのだ。
だけど1つだけ言える事がある。
それはお姉ちゃんは後悔をし始めているという事。
大きな1歩だと思う。
そして相模を倒すきっかけになると思う。
自身の親に全てを話しての翌日になってから私は家から出ると。
目の前に佳代子が立っていた。
佳代子は控えめに笑みを浮かべながら私を見る。
私は日直の為に早く出たのだが。
それでも佳代子よりも遅い。
どうしたのだろうか。
思いながら私は佳代子を見る。
すると佳代子は控えめの笑顔で私に手を振った。
「双葉」
「えっと。どうしたの?佳代子。まだ朝の7時だよ?」
「うん。何よりも双葉に早く会いたくてね。.....それから私に付き合ってほしいの」
「何処行くの?」
「私の大切な場所に大切な友人を連れて行きたくて」
「.....大切な場所?」
「私のお姉ちゃんが大切にしていた場所」
私は、!、と思いながら複雑な顔をする。
そうか、と思いながら。
だが佳代子は、そんな顔をしないで、と言ってくる。
佳代子は、何だか双葉も気分転換したいかなって思ったから、と切り出す。
「私に配慮しなくても良いのに」
「うん。でも私の大切な人だから。それに私は双葉と一緒に行ってみたいって思っていたしね」
「.....そっか」
「双葉が友人として好きだからね」
「.....佳代子。有難う」
「まだ通学時間まであるよね?朝早いから」
そうだね、と返事をする私。
すると佳代子は、じゃあ行こうか、と私の手を握る。
それから笑顔になる佳代子。
私はその姿を見ながら苦笑しながらも。
心からの笑みを浮かべる。
☆
連れて来られた場所は。
至って普通のちょっと町外れの大きな坂道。
この場所には普段は来ない。
夏は暑いから、と佳代子は苦笑い。
私はその姿を見ながら、何があるのだろうか、と思っていたのだが。
見ていると日がゆっくり登ってくる。
そして町全体が色鮮やかな.....いや。
ダイヤモンドの様に煌びやかになった。
私はそのオレンジダイヤモンド色の光景に目を輝かせる。
「.....この場所は私とお姉ちゃん以外は知らない。多分ね。双葉の知り合いの人も知らないと思う。この時間じゃ無いと無理だから。見れない」
「そうなんだね」
「この光景を。今日みたいな日なら良いかなって思って見せた」
「佳代子。有難う。私、元気が出た。.....今度知り合いの人にも見せて良いかな」
「うん。良いけど晴れとここら辺の時間っていう条件が重ならないとかなり厳しいよ。見るのは」
「そうだね。きっとそうだと思うから。.....その中で私に見せてくれて有難うね。佳代子。やっぱり友達として大好き」
そして私は佳代子を抱きしめる。
と同時に。
私は真剣な顔をする。
そして、佳代子。大切な友人だから話すね、と言葉を発した。
それから朝日に照らされる中。
暑さとかを感じながらオレンジ色の中。
全てを告白する。
すると佳代子は、そう、と真剣な顔をする。
私はその佳代子に、佳代子。貴方にも協力してほしい、と言うと。
「当然だよね。.....後悔をさせない。したくない」
「佳代子。相変わらずだね」
「私は全てを後悔するぐらいなら限界までやった方が良いって思う。.....だからその相模っていうのも倒した方が良い」
「そうだね。ちょっと危ないけどやってみたいから」
「うん。双葉」
それから私達はそのまま、戻ろっか、と話してから。
登校して行く。
そうしていると目の前に見慣れた男性を見つける。
それはお兄ちゃんの友人の。
友作さんだった。
「.....」
「.....」
そんな友作さんは何か歩道で眼鏡を掛けた男性と大きな声で言い争っていた。
それから友作さんは、クソが、と言う感じで踵を返して眼鏡の男性を置いてからその場を去る。
複雑な顔をしていた。
まるで何か喧嘩でもしていたかの様な。
すると横に立っていた佳代子が何かうっとりした様な。
輝いている様な眼差しを向けているのに気が付いた。
友作さんに、であるが。
私は佳代子を、?、を浮かべて見る。
「佳代子?どうしたの?」
「双葉。.....私ね。友作先輩が好きなの」
「え?そうなの?」
「だって何だか孤高って感じがして憧れる。前に会った時からずっと何だか格好良いなって思っていて」
私は強く反応する。
だけどね。
これは言わないでね、と佳代子は私に強く念を押す様に言ってくる。
信じているから貴方に告白したけど、と。
片想いだし何よりも.....友作先輩の件は知っているから、とも話す。
私は考え込む。
「.....そうだね。友作さんって結構悩んでいるからね」
「そうだね。だから私の恋は叶わなくて良い。見守るだけで良いの」
すると友作さんは歩きながらこっちに気が付いたのか。
手を振りながら笑顔で寄って来る。
少しだけチャラいが。
だけど性格の良い男性。
私達を見ながら、やあやあ。君達。かわい子ちゃんが2人で何しているんだい?、と笑顔になって聞いてくる。
「揶揄わないで下さいよ。友作さん」
「いやいや。かわい子ちゃんは事実だからねぇ」
友作さんは佳代子を見る。
それから、君に会うのは3回目かな、と笑顔になる。
佳代子はそんな言葉に、そうです、と柔和になりながら答える。
私はその様子にゴクリと唾を飲み込んで聞いてみる。
聞いて良いものか分からなかったが。
さっきの件だ。
「友作さん。さっきのは.....」
「ああ。見られていたんだね。.....さっきのは.....親父だね」
「.....お父さん?」
「そう。親父だ。ウチって皮肉にも.....開業医でそこそこの金持ちでさ。実家で俺は暮らしているんだけど.....後継が居ないみたいで医者の代を継げってこの前から親父がいきなり言い出してね。.....今まで放って置いた癖に何だって俺がキレてね。それで言い争っていたんだけど。そんな無茶苦茶な話があるかいって。.....母親にも親父にもあまり愛情を貰って無い様な人間だから」
友作さんはそう言いながら苦笑する。
それから真剣な顔になって私達を見据えてくる。
でもこれはアイツ。
長谷川には話さないでくれ、と笑みを浮かべる。
苦虫でも噛み潰した様な顔だ。
「長谷川はそれでも大変な野郎だ。だからこれ以上は迷惑は掛けたく無いから。.....出来れば君達にも迷惑は掛けたく無かったけどね。1人で良かったんだけど」
「.....友作さん.....」
「双葉ちゃん。佳代子ちゃん。君らも本当に大変だろうからね。こんなつまらない事を抱えないで是非忘れてくれ」
するとそんな友作さんに、全然つまらなく無いです、と佳代子が話した。
それから、私は大変だっていう気持ちがよく分かります、と悲しげな顔をする。
私は佳代子を見る。
友作さんも驚きながら佳代子を見ていた。
「こうして話してくれて有難う御座います」
「.....あはは。佳代子ちゃんは優しいね」
「.....」
複雑な2人だからこそだろうか。
こうして見るとより一層に輝いて見える。
それはさっきのビルの窓ガラスの輝きより輝いて、だ。
私はそう思いながら。
陰ながら応援したい気持ちを携えながら佳代子を見る。
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