第21話 それぞれの空の下
☆双葉サイド☆
お兄ちゃん達が校門の掃除をしている。
私はそれを確認しながら廊下を歩いて教室に行く。
正直お兄ちゃん達を今直ぐにでも手伝いたいが。
だけど今は日直で忙しい。
そう思いながら同じ日直になった友康明大(ともやすあけひろ)くんを見る。
四角い眼鏡を掛けている様な友康くんは真面目系の男子だ。
実の所、私は基本的に男子が嫌いだ。
何故ならエッチとか私の美貌とか目当てに近付いて来る気持ち悪い輩ばかりだから。
だけど友康くんは何も言わずに作業を黙々とする様な男子だから。
好きとかじゃない。
恋愛感情では無いのだが興味がある。
「友康くん。次は室内清掃」
「.....そうだな」
「そして黒板拭きを叩くよ」
「.....そうだな」
こんなのばっかりだ。
だけど私は友康くんは面白い人だと思っている。
私に気持ち悪く近付いて来る輩とは違う。
何か不思議系だ。
「.....友康くんは彼女とか居ないの?」
「居ない」
「.....じゃあ彼女作ったら良いじゃん」
「いや。必要無い」
そんな感じで箒を出す友康くん。
私はその姿を見ながら苦笑いで掃除をする。
雑巾掛けとか。
そうしていると友康くんが珍しく口を開いた。
本当によく喋るね、と言いながら。
「私は喋らないといけないから。じゃないと死んじゃう」
「.....」
「私は大好きな人が居るよ。友康くん。やってみなよ。恋は良いよ」
「俺は良い。そんな事にうつつを抜かしている暇は無い」
友康くんは言いながら作業を黙々とする。
すると男子生徒達が入って来る。
そして私に声を掛けてくる。
おっは!双葉ちゃん、といつものヘラヘラした様な不良っぽい奴らが。
所謂、リア充である。
「.....あ、おはよう」
冷めた様に返事をすると、そんなガリ勉と何やってんの?、という感じでそのリア充が私に絡んでくる。
私は気持ち悪く感じながら、何でも良いよね、と返事をする。
するとリア充達はそれでも諦めないで絡んでくる。
これだから若い男は、と思いながら逃げる様に見ていると。
「お前達」
そう友康くんが切り出した。
そして、今は掃除中だ、と眼鏡を上げる。
それからリア充の前に立つ。
私は意外な事に、!、と浮かべる。
するとリア充が、何お前?好きなの?双葉ちゃんが、と切り出す。
その言葉に、違う。作業の邪魔をされてムカつくだけだ、と友康くんは話しながら、それに双葉さんは好きな人が居る。邪魔をするな、と話した。
「まあそうだけどな」
「あーあ。朝からウザい気持ちだわ」
「ったく」
そしてリア充達は去って行く。
私はその姿を見てから友康くんを見る。
友康くんは、作業に戻るぞ、と言葉を発した。
それから作業をし始める友康くん。
私はその様子に、有難う、と告げる。
「何が」
「助けてくれて。.....やっぱり友康くんは良い人だ」
「俺はそんなつもりは無い。.....勘違いするな。作業の邪魔になるだけだったから」
「.....そっか」
そんな言葉を発しながら私は作業をしていると教室に手伝ってくれている佳代子が戻って来た。
それから私達を見てから、?、を浮かべている。
私は笑みを浮かべながら佳代子を見る。
「.....何か良い事があったの?」
「何でもない。ちょっとね」
「えー。教えてよ。双葉」
「内緒だよ」
そして私は苦笑する。
それから友康くんを見て私は黒板消しを叩きながら外を見る。
ふむ。今日は良い日だな、と思いながら。
それから校門を見ると。
掃除が終わっているのに気が付いた。
☆一葉サイド☆
嘉の様子もそうだが。
雄大の顔も何だか複雑な顔をしている。
私は、?、を浮かべて聞いてみたが2人は首を振ってから何も言わなかった。
一体何があったのだろうか。
そして私達は副校長先生の合図で解散する。
それから教室に向かうと。
「やあやあ。朝っぱらからご苦労さんなこったな長谷川」
「おうおうオラテメェ。俺達を手伝わないとはどういうこった」
「ははは。我は我でそれなりに忙しいのだよ。長谷川くんや」
友作くんは首を捻りながら雄大から首を絞められている。
そんないつもの光景が広がっていた。
私はその姿を見ながらクスクスと笑う。
すると友作くんが、ところで、と話してくる。
「聞いたぞ話は。.....大変だな。相模と付き合うのも」
「.....お前のその言い方だと元から相模を知っている感じだが。どっから仕入れた」
「俺?.....俺はまあ相変わらず情報通だから。例えばエロゲの情報とか。AV女優の情報とか」
何言ってんだコイツは、という感じで目を細めながら雄大は反応する。
女子が青ざめてドン引きしている。
私も苦笑いを浮かべながら、スカした顔でとんでもない事を言うね、と言う。
ははは、とニコニコする友作くん。
その姿に、ん?、と思った。
「友作くん。何かあった?」
「うん?何かって?何もないよ?一葉ちゃん」
「.....」
「一葉?どうした?」
「いや。友作くんから何か違和感を感じてね」
そんな言葉を発しながら私は友作くんを見る。
だけど友作くんはニコニコしながら柔和な笑顔を浮かべているだけだった。
いつもの友作くんの様に見える。
思いながら私は、気のせいかな、と思いながらそのまま何も言わなかった。
時期は段々と体育祭に傾いている。
だからこそみんな神経がピリピリしているのだろう。
そう考えながら。
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