第30話 200億円の花嫁
☆双葉サイド☆
瑛一さんが失踪したらしい。
それで私とお兄ちゃんと佳代子で瑛一さん、今村さんと一緒に様子を見に行く事になったのだが。
因みにお姉ちゃんは、学校で待機、という形になる。
私は今村さんの車が滑走する。
それから物凄い大きなマンションに着いた。
「.....この場所か」
「そうだね。.....一応此処が友作くんの住まいだよ」
「ったくあの野郎。絶対に許さん。こんな真似をするとは」
「.....君は本当に友達思いだね」
「俺は友達思いとかじゃない。ただ悔しいだけさ。何も話してくれなかったのが」
それを友達思いって言うんじゃ無いかな、と今村さんは苦笑する。
その中で私達はマンションにやって来る。
それから入り口に設置されているドアロックに話し掛ける今村さん。
もしもし。おじ様、という感じで。
気軽すぎて親族かと思った。
『旦那様は今お忙しいです。今村お嬢』
「まあ分からんでも無いけど。.....でも今回は黙ってられないのは知っているでしょ?」
『.....坊ちゃんは忙しいです』
「それも分からんでもない。でもこのまま会わせないつもり?誘拐罪にするよ?」
『.....』
ドアが開いた。
それから、まあ七瀬も頭がカチコチじゃ無いから、と私達に向いてくる今村さん。
七瀬とは誰なのだろうか。
執事だろうか、と思いながら私は今村さんを見る。
それからドアロックを解除してエレベーターに乗り込み。
そして30階に向かう。
このマンションは確か45階まであったな。
「今村。俺達の事は言わなくて良いのか」
「本当の事を今言ったら入れなくなっちゃうからね。多分。.....だから言わないのが賢明だね」
「.....」
私はその会話を聞きながら階数表示を見る。
そしてエレベーターは30階に到達し。
開いてから見ると.....そこに大きなドアがあった。
私達はそのドアを見ながら、此処ですか?、と今村さんに聞く。
今村さんは、そだねー、と笑顔になる。
「右上に書いてあるでしょ?友作って」
「そうですね.....」
「間違いなければこの場所に居ると思うから。.....七瀬ー!!!!!」
今村さんが絶叫する。
するとドアが勝手に開いた。
それから室内に入ると.....そこには大きなフロアがあった。
シャンデリアもあれば。
マンションをぶち抜いている。
「.....凄い.....」
佳代子が声を発する。
私も恐る恐るその光景を見る。
お兄ちゃんはその光景に驚く事も無く。
ただ単に沈黙していた。
敵が大きな事を自覚した様に。
大きな壁に立ちはだかっている子鹿の様な。
「お待ちしておりました」
その声に私達は目の前を見る。
そこに中年ぐらいの丸メガネの黒いスーツを着た男性が。
私達は今村さんの背後に隠れる。
その七瀬と思われる男性は、おや、という感じであまり驚かない。
「その方々は」
「.....私の同級生であり友人であり.....大切な人達だよ」
「そうですか。それはまた沢山の掛け替えのないもの手に入れられましたね。今村お嬢様」
「冗談は良いよ。友作くんは何処かな」
「坊ちゃんは大変お忙しゅう御座います。お帰り下さいませ」
頭を下げるその男性。
すると、と、友作さんに会いたいです、と佳代子が切り出した。
それから意を決する感じで前を見る。
男性は、おやおや。また威勢の良い感じの女性で、と微笑む。
「.....然し乍ら残念です。坊ちゃんはもう二度とあなた方にお会いしたくないそうですのでご理解下さいませ」
「そんな馬鹿な事があるか。友作に限ってそれは無い」
「.....うん?貴方は.....もしかして長谷川雄大様ですか?」
「そうだが」
「ふむ。そうなのですね。坊ちゃんから伝言をことづかっております故。今、お話を致します」
そして男性は紙を裏ポケットから出す。
それから、雄大。此処まで来てくれて有難うな。お前が多分来るだろうって思ったから残しておくな。実の所だけど俺は一般の生活がしたくてあの高校に入学したんだ。だけど今となっては沢山の仲間に巡り会えて幸せだった。ああそれと。双葉ちゃんにも一葉ちゃんにも宜しくな。それからみんなにも謝っておいてくれるか。特に佳代子ちゃんにも。俺がこの場所に来たのは相模のアホの一葉ちゃんを狙った暴走を止める為もある。だからそっとしておいてくれ、だそうです、と言葉を発する。
「.....」
「相模のアホはどうなっているの」
「相模帝様であれば現在は忙しなく動いてらっしゃいます」
「.....七瀬。取り敢えず今直ぐに会わせてもらえないかな。友作くんに」
「其方は無理で御座います。何卒お許しを」
佳代子が震え始める。
そして涙をジワッと浮かべた。
私はその様子に額に手を添える。
すると男性が、坊ちゃんは止めると言いましたね。坊ちゃんには何らかのやりたい事がある様ですが先ずは桃月一葉様の遺産を狙う不届者を成敗したい様ですね、と切り出す.....え?
「.....桃月一葉?」
「おや。ご存知で。.....其方の方は?」
「.....桃月一葉.....は。.....その。私の義姉です。私は双葉って言います」
「そうなのですね。おや?ご再婚なさっていると?」
「.....そうです.....」
ふむ、とその様に返事をする男性。
そして、桃月一族の桃月姫子(ももつきひめこ)様。そのお父上に当たる桃月雷(ももつきらい)様。雷様はお亡くなりになる前に桃月姫子様に莫大な資産をお預けになったそうです。その際に姫子様が出産なさった際にお間違い無ければ一葉様に約200億円の資産をお預けになったと聞きましたが、と切り出す。
全て初耳なのだが。
お義父さん知っているの!?
「.....初耳なんだが」
「では一葉様は何か理由があって今現在も知らされてない可能性が御座います」
「そうなると200億を知っていて狙っている可能性もあるね相模が」
「それで.....近付いたのか?一葉に.....!?」
「それを止める為に友作さんは.....!?」
その様で御座います。
坊ちゃんは全ては仲間の為としております、と頭を下げる男性。
ヘナヘナ、と私は地面に座り込む。
その姿をお兄ちゃんがそっと肩を掴んでくる。
「.....何れにせよ200億円だと金額にしても一生働かずに済む金額。相当な遺産だね。この先も狙われる可能性があるね」
「あの野郎.....俺にも相談してほしかった.....」
「そ、それで相模のせいでこうなっているのですか?」
左様で御座いますね。
と言いますのも、俺一人だけが犠牲になって止まるならそれで良いじゃない?、という感じの様で御座いますが、と話してくる。
私はその言葉に、お姉ちゃんの過去を知らなかった、と言う。
「俺も初耳だな」
「.....だけどそれは良いけどそれで友作くんが一人犠牲になるならちょっと止めないと。.....七瀬」
「はい」
「最後に会わせてもらえないかな」
「残念ながら今は旦那様も坊ちゃんもお忙しいので。お帰り下さいませ」
そして七瀬は会釈をして扉を開ける。
私達はそれからそのまま出るしか無く。
そのまま扉は閉められた。
私は考え込む。
お姉ちゃんにそんなに遺産が?、と。
相模は結局は金か、と思う。
あまりに衝撃だった。
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