第29話 消えた友作瑛一

☆雄大サイド☆


何かよく分からないが。

でもアイツの実力なら当然か、と思いながら。

何を突然言っているんだって?

そうだな。

一葉が美術部に誘われて.....部長候補と言われたらしい。


「雄大。何があったんだ?」

「ああ。瑛一。.....一葉が旧友に部活に誘われたらしくてな」

「そりゃめでたいな。.....旧友か」

「絵のコンテストで張り合っていた旧友らしい」

「.....めでたいな」


そうだな、と返事をしながら机を元に戻して笑みを浮かべる瑛一を見る。

すると瑛一は、行って来なくて良いのか、と切り出した。

俺は首を振って反応する。

アイツも忙しいみたいだからな、と言いながら。


「忙しいのか」

「そうだな。より正確に言えば体育祭の幕とか旗の色付けとかやっているらしくてな」

「そうか。.....それは声を掛けるべきじゃないな」

「.....なあ。瑛一」

「ん?どうした?」

「今日は暇なんだが.....どっか行かないか」


瑛一は、双葉ちゃんも忙しいか、と言ってくる。

俺は、ああ。久々にダチと遊ぶのも良いかなって思ってな。双葉には許可を貰ってる、と話す。


すると瑛一は、そうか、と反応しながらニカッとする。

その様子に、そうだ。何ならお前の家に行ってみるか?、と言ったが。

瑛一は首を振る。


「恥ずかしくて見せられたもんじゃない」

「お前の家も大変だな」

「.....そうだな。毎回誘ってくれて有難うな。.....でも俺の家はすまないが汚くてな」

「お前が嫌がるなら無理はしない。.....ゲーセンとか行くか?」

「それも良いかもな」


そんな会話をしていると教室に佳代子さんがやって来た。

それから何かプリントを差し出しながら俺に頭を下げてから嬉しそうに瑛一と話す。

俺はその姿を見ながら空を見上げる。

そうか。

覚悟を決めないとな俺も、と思いながら。


「お待たせ。雄大」

「.....どうした?何の話だったんだ?」

「ああ。まあ.....部活の関係の話だったな」

「勧誘的な?」

「.....そうだな。勧誘だ」


でも俺は、御免な。入れない、って断ったんだ、と瑛一は話す。

それから苦笑しながら俺を見る。

俺はその言葉に少しだけ沈黙する。

そして、もしかして例の実家の件か?、と話す。

すると瑛一は、まあそうだな、と話し辛そうな感じで反応する。


「お前の実家の事、詳しくは知らないけど大変だな」

「まあな。実家厳しいもんな」

「いつか話せる時が来たら話してほしいな。相棒」

「時が来たらな。必ず」


そうしていると校門付近に黒い外車が停まっているのに気が付いた。

俺は顔を上げて、?、を浮かべる。

それからその駐車場に停まった外車から人が降りて来て、と同時に放送で呼び出しが鳴った。


それは瑛一の呼び出しだ。

え?、と思いながら瑛一を見ると。

瑛一は外を睨んでいた。


「瑛一?どうした?何かやらかしたか?」

「.....いや。何も。.....取り敢えず行ってくるわ」

「???」


瑛一は無言のまま。

外に出て行く。

それから.....そのまま瑛一は戻って来なかった。

何処に行ったのだアイツは。



放課後になってから。

俺は心配になって暎一が消えた方向に向かうが。

痕跡は何も無い。

何が起こっているのだ、と思いながら俺は瑛一を探していると。

今村が階段を降りて俺の前に現れた。


「今村?今忙しいから。すまん後でな」

「もしかして友作くんを探している?」

「?!.....お前何か知っているのか?」

「.....言い辛いけど.....友作くんは戻って来ないよ。多分」


え?

その言葉に金槌でぶん殴られる衝撃を感じた。

それはどういう意味だ、と警戒しながら今村に向く。

と同時に、待って下さい、と声がした。

背後を見ると.....そこに佳代子さんが。


「.....それって.....もしかしてお家の事ですか」

「え?な、何が起こっているんだ?」

「そうね。どうも相手は強行手段に出たみたいだから」

「強硬手段.....!?」


佳代子さんは泣きそうな顔をする。

俺は、待ってくれ。一体、何が起こっている?、と今村と佳代子さんを見る。

すると今村は、話すとね。実は友作くんのお家はそれなりのお金持ちなの。それも大々医者の家なの。規律が厳しくてね、と切り出してきた。

何.....!?


「.....それで友作くんは何か脅されたのか消えたんじゃないかって予測だね」

「そんな馬鹿な.....」

「待って.....そんな。どうしたら良いんですか!?」

「相手は大人だから。.....どうしようもないよ」

「どうしようもないで済む問題じゃないですよ!佳代子さんの彼氏だ!」


言いながら青ざめる俺。

佳代子さんは、瑛一さん、と泣き始める。

こんな事になるとは、と思いながら俺は壁に背をもたれる。

アイツ何でこんな重要な事を隠していたんだ!


「友作くんは.....貴方に迷惑を掛けたくないが為にこうしたんだと思うよ」

「.....え.....」

「貴方に迷惑をこれ以上掛けたくないって」

「.....あの野郎.....!!!!!」


俺は瞬間的にキレて壁をぶっ壊す様に叩く。

何で。

そんなの友人のする事か。

俺が信じられないのか。


するとそんな姿に今村が溜息を吐いた。

それから俺達を見てくる。

このままでは終わらせないけどね、と言いながら。

そして俺の手を。

そうしてから佳代子さんの手も握る。


「だから殴り込みに行こう」

「.....!.....あたぼうだな。瑛一の家は何処にあるんだ」

「今から案内するわ」

「.....私も行きたいです」

「そう?じゃあ行こうか。貴方は彼女さんだもんね」


アイツに会ったら。

マジに頭突きしてから.....許せん。

とにかく殴りたい。

親友を信頼しないとは何様か、と。

思いながら俺は持っている鞄を握り締めた。

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