第28話 絆

☆一葉サイド☆


双葉と雄大に写真を送った。

私とコユリとひまわりの絵を写した記念撮影をした写真を、だ。

それから送信してから私は周りを見る。

そこではコユリと皆さんが一時解散している感じの姿がある。

昼飯を食べに行くのだ。


それにしても偉そうな感じで送ってしまった私だ。

反省しかないと思う。

だけどどうしても、この写真だけは送らなければ、と思ったのだ。

思いながら私はスマホを観ていると。

カズ、と声がした。


「コユリ?」

「みんなご飯食べに行くって。貴方はどうする」

「.....私は取り敢えずお弁当があるよ」

「そうなんだ。じゃあ一緒に食べない?」

「え?良いの?」

「話もしたいしね」


それからコユリはお弁当の包みを見せてくる。

私はその姿に苦笑しながら、じゃあ一緒に食べようかな、と言う。

するとコユリは、じゃあ何処で食べようか、と笑みを浮かべてくる。

そうだね、と悩みながら、じゃあせっかくだしここで食べない?、とニコッとする。

コユリはその言葉に、この場所でも大丈夫?、と配慮をしてくれた。


「.....もう大丈夫だよ。私は一人じゃないって気が付いたしね。この場所で語らいたい部分もある」

「そう.....じゃあ分かった。この場所で食べようか」

「そうだね。コユリが嫌じゃなかったら」

「私を誰だと思っているの?私は美術部の部長だから」

「.....そっか。確かにね。ゴメンね」


そして私を見てくるコユリ。

私はその姿を見ながら少しだけ複雑な顔をする。

コユリも少しだけ複雑な顔をした。

するとその中で意を決した様にコユリが切り出してくる。

カズ、と言いながら。


「私は.....貴方に絵の世界に戻って来てほしいって思う。貴方の実力は半端じゃない。貴方は100人ぐらいの美術部の生徒を凝縮した様な存在だから」

「.....うん」

「貴方の実力も尊重したい」

「.....コユリ。分からなくもない。.....だけど私.....最低な人間だから。神聖な場所に今更戻る価値は無いと思う」


そう言いながら私は俯く。

罵られるかと思った。

これで終わりと思った。

だけど、うん。知ってる。分かってる、とコユリは微笑む。

それから、でも私はミスは誰にでもあるって思うから、と窓から外を見る。


「色々な人から先輩の昴さんっていう人の話をよく聞くんだけど.....その昴さんだって不良だったけど持ち直したって話だよ」

「飯山昴さんだよね?」

「そうだね。飯山昴さん。彼女はとても有名な人だよね」

「.....そうだね。私もよく話は聞くよ。この学校を根本から直したって話だから」

「凄いよね」


おかずを食べながらコユリは笑みを浮かべる。

私も目の前の机にあるおかずを食べながら笑みを浮かべる。

ここでまさか飯山昴さんの話が出るとは。

そう考えながら私はご飯を食べる。

すると、カズ、という感じで向いてくる。


「.....私ね。色々あるけど貴方に美術部の部長をやってもらいたいの」

「え!?」

「どう足掻いても来年には私はここは卒業校になるから。貴方の様な人材は.....他に見つからない。適任だと思う」

「無理だよ。.....有難いけどね。そんなに務めれる程、優秀じゃない。コユリ。私は貴方の方が凄いって思うし」

「そうだよね。.....でもカズ。私は貴方の方がもっと優秀だと思う」


だからこそ、と言いながら頭を下げるコユリ。

私からのお願い。

みんなを統率する力を貸して下さい、と話してくる。

私は驚きながらその姿を見つつ。


考え込む。

こんな私が。

浮気した様な最低な野郎が。

そんな事をしても良いのか?、という感じになる。

私はあくまで自分自身をゴミクズだと思うし。


「.....コユリ。少しだけ待ってくれる?」

「全然構わない。考える時間は.....もっといっぱいあるから」

「私、雄大に相談する。それから双葉にも」

「貴方の好きにしてほしい。ただ.....答えだけくれたら嬉しい」

「.....有難う。コユリ」


そして私は電話を掛ける。

その相手は当然、雄大であるが。

美術室は旧館にある。

だから教室に戻るのが時間が掛かると思ったから。

それから返事を待っていると雄大の声がした。

一葉、どうした?、という感じで。


「雄大。.....相談があるの」

『?.....どういう相談だ?』

「私ね。.....美術部に戻るべきかな」

『.....それはお前が決める事だ.....が。今のお前ならもう大丈夫だと思うけどな』

「今の私?」

『そうだな。嘘吐きなお前じゃなくなり。そして一歩が歩み出せているお前ならな。美術部に.....いや。絵を書くのに戻って良いんじゃ無いか』

「雄大.....」

『俺は応援する。.....お前の事』


私は涙を浮かべる。

雄大はそう言いながら電話口が次は双葉になる。

お姉ちゃん、と言いながら。

それから、お姉ちゃん。私も応援してる。前のお姉ちゃんは嘘吐きで.....信頼出来なかったけど。今のお姉ちゃんは信頼出来る。今のお姉ちゃんなら、と話してくれる。


『それから報告だよ。.....友作さんが告白された』

「.....え!?それって本当に!?」

『それから成功したみたい。その告白が』

「良かった。そうなんだね」

『だからお姉ちゃんも一歩を踏み出すのは良いと思うよ。友作さんみたいに』


そう言ってくれる2人の応援を聞きながら。

私は胸に手を添える。

それから、有難う2人共、と言いながら、私は人の役に立ちたいから頑張る、と応えてみる。

その言葉に2人は、そうだね、とか。

そうだな、と応えてくれる。


「.....有難う」


そして私は感謝の言葉を述べてから電話を切り。

そのまま美術室に戻る。

コユリが私を見てきながら、どうだった?、と言う。

私はその姿に、コユリ。私.....美術部に戻ろうと思う、と告白した。


「.....!」

「私.....後悔はしたく無いから」

「有難う。カズ。そう言ってくれると.....とても嬉しい」


柔和な笑みを浮かべるコユリ。

私はその姿を見ながらスマホを握りしめてその画像を見る。

そこにはひまわりという太陽が輝いている様に見えた。


私は何をやってもマイナスだと思う。

これから先も何をしても。

決してプラスの存在にはならないだろう。

だけどこのマイナスを少しだけでもプラスに変えれたら。


その事が。

それが。


第一歩になるだろう。

思いながら私はコユリの元に戻った。

それから食事を続ける。

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