第27話 出会った頃からの祈り

☆双葉サイド☆


ひまわりの絵を描いた様だ。

お姉ちゃんが、である。

私はその事に少しだけ嬉しい気持ちになった。

と同時に。

お姉ちゃんに対しての感情が変わってきた様な気がする。


私はお姉ちゃんが嫌いであり。

好きであった。

だが今の感情は.....お姉ちゃんを信じる事を優先しよう。

そう思える感情が湧いた。

全てを信じる事が大切な事もあるのだろう、と。


「佳代子ちゃん」

「は、はい」

「どうしてまたお弁当なんか作ったの?」

「.....あ.....えっと.....その」


佳代子は赤くなる。

私はその姿を見ながら、頑張れ。佳代子、と祈ってしまう。

そんな祈りをしたら駄目なのかもしれないけど。

だけど恋が実ってほしかった。

佳代子はずっと苦しんでいたから、である。


「.....えっと。友作先輩に食べてほしかったからです」

「そっか。佳代子ちゃんは可愛いし.....こういう事をしてくれると惚れちゃうかもね」

「あ.....えっと」

「おい。飯山が困っているだろ友作」

「まあまあ。良いじゃないか」


それから友作さんは苦笑いを浮かべる。

お兄ちゃんはその事に、やれやれ、という感じを見せる。

だけど何か察してきている様に見えた。

私はその姿を見ながら笑みを浮かべてから友作さんと佳代子を見る。

すると佳代子は胸に手を添える。


「.....わ、私は」


と切り出した時。

友作さんは、ちょっとトイレに行って来るね、と立ち上がる。

まるで、話の続きを聞けない、という感じで。


その事にお兄ちゃんが眉を顰める。

それから友作さんを追う様に走って行く。

佳代子は悲しげな顔をして俯く。

うーん.....。


☆雄大サイド☆


多分だが飯山佳代子は友作が好きだ。

抑えていたけど溢れている感情に逆らえない、という感じだった。

あくまで多分だけど。

だけどそれから逃げる様に友作は反応する。


俺はその姿にちょっとイラッとした。

でも、とは思うけど。

実際にトイレに向かう友作。

それから男子トイレに入った時に聞いた。


「友作。何で逃げている?」

「.....そうだな。長谷川。俺も察しているんだよ。.....分かるか?」

「!.....お前.....」

「俺は佳代子ちゃんの想いを知っている。さっきから察し始めた。.....だけど俺はな。情けないけど応えれない。だからちょっと考えを纏める為にこの場所に来た」

「友作.....」

「俺は汚れているしな。だから恋をするなんて考えられない」


そしてトイレをする友作。

俺はその姿を見ながら、友作。俺はお前はそんな野郎じゃ無いって知ってる、と言葉を発した。

その言葉に驚きながら友作は振り向く。

誰よりも俺はお前を知っている、とも言った。


「お前がずっと俺を救ってくれていたっていうのも知っている。お前が薄汚れているなら俺はドブ野郎だ」

「長谷川はそんな事ないよ。.....お前はずっと綺麗だ」

「いや。そんな事はない。お前よりかは薄汚れているよ」


そもそも俺はこれまでの人生が靴を舐める様な人間だったからな、と俺に苦笑する。

俺はその姿を見ながら真剣な顔をする。

そして盛大に溜息を吐く。

良い加減にお前もその鳥籠から抜けたらどうだ、と提案した。

友作は、え?、という感じになる。


「一つ言うならお前は固定観念の鳥籠に囚われている。その鳥籠は良くないと思う」

「.....双葉ちゃんと同じって事か?」

「そうだな。.....双葉もそうだったけど。今は檻を抜けているぞ」

「お前は本当に不思議な野郎だな。.....雄大」

「.....雄大?」


長谷川なんて名前の呼び方よりも俺は雄大って呼び方の方が好きだから、と笑みを浮かべる友作。

その言葉に、なら俺もお前を瑛一って呼ぶぞ、と告げる。

友作は、ああ、と笑顔になる。

それから瑛一は、なら雄大。.....俺もいっちょう人肌脱ごうか、と手を洗いながら俺に向いてくる。


「ああ。鳥籠をぶっ壊せ」

「.....お前が言ったんだからな雄大。お前が責任持てよ?」

「ははは。責任は持つ。突っ込んでこい」


それから俺に苦笑いを浮かべながらそのまま表に出る。

すると瑛一の目の前に胸の前で手を交差している飯山が。

そして赤くなりながら上目遣いをしている。

そんな姿に瑛一はウッと詰まる。

言い出し辛そうな感じで。

俺はその背中を思いっきり叩いてやった。


「痛いな。雄大」

「いつまでもそうしてウジウジしていても仕方がないぞ。瑛一」

「佳代子」

「.....うん」


それから瑛一と飯山が見つめ合う姿を見る俺と双葉。

瑛一は、場所を移そうか、と飯山に切り出す。

飯山はその言葉にハッとしながら、は、はい!、と返事をする。


そして飯山と瑛一は屋上に向かう。

俺達はその姿に、ここで待ってる、と言葉を発した。

すると瑛一は、え?付いて来ないのか、と幼い子供の様に反応する。


「現場に俺達が行っても仕方が無いしな」

「そうだね。お兄ちゃん」

「.....」


瑛一は不安そうな顔をしたが。

直ぐに何かを思い出した様にして振り切ってから屋上に上がる。

俺はその姿を見ながら双葉を見る。

双葉は何だか羨ましそうな顔をしていた。


「.....双葉」

「何?お兄ちゃん」

「あー。その。何だ。ジュースでも飲むか」

「後で奢ってくれるの?」

「そうだな。まあそういう事になるだろうな」


そっか。

有難うねお兄ちゃん、とニコニコする双葉。

俺はその姿を見ながら屋上を見る。

それから複雑な思いを抱いた。


因みに瑛一と飯山は。

そのまま付き合う事になったらしい。

飯山の告白を暎一が受け取った形である。

良かった.....としか思えない。

これまであのアホに迷惑ばかり掛けていたしな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る