第四章 ありきたりな世界だが

壊させはしない

第26話 お弁当

☆雄大サイド☆


何だか知らないが美術室が騒がしい様な気がする。

俺は、何かあったんだろうか?、的な感じで教室の外の廊下を見る。

すると友作が苦笑しながら寄って来た。

何か勝負するってよ。一葉ちゃんが、という感じで、であるが。


「え?一葉が誰と勝負するんだ?」

「昔から有名だったんだろ?一葉ちゃん」

「それは確かにな。絵で賞を取ったって聞いた事はあった様な?」

「それそれ。そしてまた新たに勝負するらしいよ」

「.....そうか。.....アイツそういう気持ちになったんだな」


そうだね、と言いながら友作は笑みを浮かべてくる。

俺はその姿を見ながら、んじゃ俺も行くか、という感じで立ち上がる。

するとそんな俺の居る教室に.....いきなり友康くんが来た。

一瞬だけ眉を顰めた友作を見て友康くんを見る。


「どうしたんだ?友康くん」

「.....残念なお知らせです」

「え?残念なお知らせ?」

「相模が接触して来ました。.....それも双葉さんに」

「.....何.....」


青ざめる俺もそうだが。

友作も、!?、という感じになる。

俺は、じゃあ今直ぐに行かないと、と言うが。

友康くんは、その必要は無いですね、と言ってくる。

そして廊下の先を指差す。


「.....お兄ちゃん」

「双葉!?.....大丈夫か?!」

「大丈夫だよ。今村さんが守ってくれたから」

「今村?」


そして今村がやって来る。

その顔はかなり複雑な顔をしていた。

それから友康くんは、相模は商談に来ただけでした。本当にそれだけみたいで。そして直ぐ帰りました、と話してくる。


俺は、!、と思いながら双葉を見る。

その顔に複雑な顔をする俺。

すると今村が話してきた。


「正直言って安心は出来ないよ。.....侵食してきていると思う。だけど私達がどうにかするから安心して」

「今村.....」

「俺も協力します」

「.....良いのか君は。そして今村も。素顔をバラしてしまって」

「いつかはバレると思いました」

「そうだね。私もそう思うしね。自らがバレるって思った」


そして俺達を見る2人。

俺はその姿に友作を見る。

友作は苦笑しながら肩を竦めていた。

笑みを浮かべる。


すると今村も、双葉さんは長谷川くんに用事があったみたい、と言いながら俺達に笑みを溢した。

友康くんもそれを柔和に見ながら反応する。

それから、じゃあ私はこれで、と手を上げてから踵を返す。

そして友康くんも、俺も行きます、と俺達に律儀に挨拶した。


「.....ああ。じゃあ気を付けてな。2人共」

「有難う。長谷川くん」

「失礼します」


それから2人は去って行く。

俺達はそれを見送ってから教室に戻ろうとした時。

教室のドアが開いた。

そして飯山が、お邪魔します、と顔を見せる。


「.....?佳代子?」

「あ。双葉」

「どうしたの?」


俺達は協力して机を合わせていたのだが。

飯山もきたのでクラスメイトに許可を貰って席を貸してもらった。

それから合わせていると。

友作をチラチラ見ている飯山が。

そしてゴクリという感じで唾を飲み込み。

そのまま友作に向く。


「あ、あの。友作先輩.....」

「うん?何かな?佳代子ちゃん」

「お、お弁当作りました。食べて下さい」

「?.....え?俺に?」

「そ、そうです。私、頑張りました」


飯山のその姿に周りも驚きを見せるが。

双葉だけが何かを知っている様だ。

あまり極端に反応はしなかった。

ただ見守る様に。

優しく母性を持つ様に見守る。


「.....佳代子ちゃん」

「は、はい」

「有難うね。こんな変な野郎の為に」

「へ、変じゃないです。.....わ、私.....は」


飯山はモジモジする。

俺はその姿を見守りながら双葉に聞く。

どうしたんだ?飯山は、と。

すると双葉は首を横に振った。

それからウインクして人差し指を唇に持ってくる。


「.....内緒」

「いや。内緒って。肝心なものだけ内緒?」

「そうだよ。お兄ちゃん。世の中にはね。内緒な事ばかりもあるんだよ」

「意味が分からない.....」


俺は、???、を浮かべながら考えて悩んでしまう。

そして.....友作がお弁当を受け取るその姿を見ていると。

ピコンと俺のスマホにメッセージが入った。

それは一葉からだったが。


画面を観るとそこには汚れた衣服の一葉。

顔にも絵の具がくっ付いている中。

巨大な1つのひまわりの絵があった。

そしてみんなと記念撮影した様なそんな姿がある。


俺はその姿に、アイツめ、となる。

それから自然と笑みが溢れてしまう。

双葉が覗き込んできた。

それから目を丸くしながら俺を見る。


「え?お姉ちゃん。何だか楽しそう」

「俺としてはこれがアイツに必要だったんじゃないかな。多分」

「え?それはどういう.....」

「アイツにはこういう時間が必要だったって事だ。つまり息抜きをして仲間に囲まれて考える時間がな」

「.....そっか。お兄ちゃんは変わらずだね」

「俺は変わらず、じゃないさ」


そう言いながら俺は。

ふと。

過去の事を思い出す。

二度と戻っては来ない過去を。

疫病神、か。


「.....お兄ちゃん?」

「いや。何でもない。.....すまないな。こうやって考える事ばっかで」

「お兄ちゃんがそんな感じなのはいつもの通りだから。アハハ」

「そうだな。そう言ってくれて嬉しい」


思いながら俺は外を見る。

それから、んじゃ飯食うか、と言いながら3人を見る。

3人は、はい。そうだな。的な感じで返事をしながら俺を見てくれた。

そして笑みを浮かべる。

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