第2話 信じていた分の重さ
「という訳でお姉ちゃんを社会的に殺したいと思います」
「全てから抹消するって意味なのか?」
「まあ殺すって言っても軽く社会的に抹消するだけだよ」
「それでも軽くでは無いと思うんだが」
クッキーを作ってくれた双葉。
それから紅茶も交えて会議が始まる。
そんな事を言っている場合じゃ無いと思うしね。
だからこそ私は社会的に抹消しなくちゃいけない、と向いてくる双葉。
その顔は真剣そのものであり。
まるで居合でもする様な感じがあった。
「私はお姉ちゃんなら大丈夫だろうって。こういう事をしないだろうって信じてたから。だからどれだけ衝撃がデカいか分かるかな」
「分かる。どんな形であれお前の姉だしな」
「そうだよ。私は絶対に許さない。だからリベンジするよ」
そう言ってから俺を見てクッキーを貪る双葉。
リスかな?
俺はその姿を見ながら苦笑しつつ考える。
しかし復讐か。具体的にはどうするんだ、と聞くと。
お姉ちゃんには申し訳ないけど、とスマホを弄ってから見せてくる。
俺は、?、を浮かべてその画面を見る。
そこにはSNSが表示されている。
まさか、と思うが。
「証拠を掴んだら直ぐにSNSに投稿する予定だよ」
「それは確かに社会的に抹消になりそうだな」
「まあ確かな証拠が無いから今は何も言えないけど掴んだら掴んだでやらないとね」
「.....そうだな」
俺達は考えて悩む。
そうしていると双葉のスマホに何かメッセージが入ってきた様だ。
ピコンと音が鳴った。
それを直ぐに確認する双葉。
それからみるみるうちに眉を顰めていく。
俺は、成程な。姉か.....、と思いながらだったが。
直接聞くとマズイかと思って聞かなかった。
「誰だ」
「お姉ちゃんだね」
「.....そうか」
話し辛そうに反応をした。
そんな姿に、もしかしてお前を探しているんじゃないのか、と聞く。
それもあるよきっと。
何せ私から嫌悪しているから、と向いてくる。
「複雑な思いだね。私はお姉ちゃんを穢らわしいって思っている。でも姉として好きでもある。複雑だね」
「成程な。それでそんな顔をしたのか」
「そうだね。でもあくまで彼氏居るのに他の男とか穢らわしいから」
「.....まあそうだな」
私は絶対にSNSにこの事実を投稿する。
そして私はお姉ちゃんに、と心底から複雑な顔をする双葉。
そうだな、と返事をした俺。
それから双葉の頭を撫でてみる。
優しく愛犬でも撫でる様に。
「.....大丈夫か」
「裏切られたショックが仮にもデカい。相当デカい」
「それはそうだろうな。お前の姉だしな」
「だからその分、許せないよ」
言いながら双葉は胸に手を添える。
そして俯いた。
そんな姿に俺は盛大に溜息を吐いた。
それから双葉を見据える。
☆双葉サイド☆
私とお姉ちゃんは中学時代に知り合った。
そして一葉と姉妹になったのだが。
今回の件で私はお姉ちゃんを酷く嫌悪した。
心の底からショックだ。
だからこそお姉ちゃんには地獄に落ちてもらいたい気分だ。
だが体が動かない。
「私は.....信じていたから」
「そうだろうな」
「.....」
「.....」
私の相談に乗ってくれる目の前の男の子を見る。
彼の名前は長谷川雄大。
心から私が好きな男性であり先輩でありお兄ちゃんだ。
とても愛しい存在であるのだが。
そんな彼は私の姉の一葉と付き合っていた。
だが.....一葉は容赦無くお兄ちゃんを裏切ってしまう。
彼は本当に酷く傷付いた。
だから私もその分、無慈悲になろうと思う。
「正直俺も心から一葉は信頼していたからな」
「そうだね。でもお兄ちゃんが最も悲しいだろうから何も言えない」
「そんな事はない。お前も十分に傷付いたからな」
「私はそんなに。お兄ちゃんが傷付いたと思う。私よりも数百倍」
ほらとても優しいのだ。
これだけ優しいから中学時代に好きになって告白したのだが失敗に終わった。
何故なら私は.....子供の様だったから、である。
それから彼は一葉の方を好きになり
そして一葉に告白して付き合い始めた。
だが今に至っている。
諦められない私に光が差し込んだ気分だった。
と同時に。
強い怒りが私を襲う。
「ねえ。お兄ちゃん」
「何だ?」
「私は好きって言ったの2回目だけどウザくなかった?」
「双葉の気持ちも心から尊重しているよ。ウザくない。だけどこんな目に遭うなら俺はもう女性とは付き合わない。お前を疑っている訳じゃないけど.....」
沈黙するお兄ちゃん。
やはり罪深い女だ。
私の義姉は.....絶対に許せない。
愛しい大切な人をこんな目に遭わせやがって。
どれだけ反省しても許さない。
と思うのにな。
だけど。
「.....お兄ちゃん。私は取り敢えずお姉ちゃんに復讐する方法を考える。一緒に.....証拠を集めてくれない?」
「SNSで拡散する為にか」
「そうだね。じゃないと天狗のままだよあの人は。.....絶対に」
「そうだな.....分かった。頑張る。普段通りに接したら良いよな?」
こんな私に笑みを浮かべるお兄ちゃん。
そうだねお兄ちゃん。
私はお姉ちゃんに復讐したら。
お兄ちゃんの子供が欲しい、という思いもある。
家庭を築きたいってそう思う。
お兄ちゃんに本気で全てを捧げる意味で動いている。
だって私はお兄ちゃんが好きだから、愛しい人だから。
だからこそ.....復讐は徹底的にスマートに。
そして私はお姉ちゃんに。
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