第34話 200億円の行先

☆双葉サイド☆


200億円とはどれぐらいのモノなのだろうか。

正直言って5億とかなら.....当選がどうのこうのと宝くじでよくCMとかでやっている気がする。

だが200億円か。

一年で1億使い切ったとしてもそれでも200年いける計算だ。


正直200億あった所でそれはお姉ちゃんの大切なお金だ。

お姉ちゃんが死ぬまで生活出来る様にと祖父の人が預けたお金。

だから私はそんなものに興味は無いが。

だけど興味が無いからと目を逸らしていても仕方が無い。

お姉ちゃんに脅威が及ぶ。


私達は移動を開始した。

とは言っても帰る事だけなのだが。

だけどその前に、と。

私達は電車から降りて、両親に会っていかない?、とお兄ちゃんを誘った。

それからお兄ちゃんは私の家に来る。


そしてお兄ちゃんは目の前のお義父さんとお母さんを見据える。

桃月小次郎(ももつきこじろう)と.....桃月撫子(ももつきなでしこ)を。

2人は若々しい姿をしている。

30代と言っても過言じゃ無いぐらいの、である。


それもそうだろうけど。

お父さんは若くして亡くなっているから、だ。

お母さんはデキ婚で20歳で産んだらしいから。

私を、である。

お母さんが切り出す。


「久しぶりね。雄大くん」

「お久しぶりです。.....撫子さん」

「.....この場所に来たって事は.....200億円の話ね?多分」

「.....そうですね。一葉にその様な遺産が有るなんて思いませんでした」

「僕の祖父。.....つまり一葉の曽祖父は会社を運営するのが得意だったらしい。.....それもその色々を当時の相模グループから教わったらしいけど。昔は小さな商店だったらしいよ」

「!?」


私は愕然としながらお義父さんを見る。

というかお兄ちゃんもだけど。

相模グループがそんな昔からお姉ちゃんの一族に絡みがあったの!?


思いながらお義父さんを見る。

お母さんがお茶を出してくる中で考える。

するとお兄ちゃんが聞く。


「待って下さい。だとするなら今のこの状態はその借りを今更返してもらうって意味で.....?」

「それもあるだろうね。.....相模グループは現在の社長になってお金に随分とゆるゆるになったみたいだね。だからいちゃもんをつけてきているんじゃないかな」

「.....」


私はお義父さんに聞く。

お義父さん。その。相模グループは.....どうしたら良いのかな、と。

すると、正直ここまでくると警察に相談しても良いのだろうけど。だけどまだ事件が明確に起こった訳じゃないから。まだ今の所は内輪揉めだから警察じゃなくて先に弁護士とかかもね。あくまで素人だから分からないけど、と切り出しながらお義父さんは目線を横にずらす。

私はその言葉に顎に手を添える。


「.....警察に訴えても無駄ですかね?」

「どうかな。それで良いなら僕もそうするけどね」

「警察に訴えるって言うよりかは相談しても良いかもね」

「.....一葉に知られてしまう可能性もあるけどね」

「もうそれは仕方が無いんじゃないかな。お義父さん」


それから私達は考え込む。

警察に相談しても恐らく無理、か.....。

思いながら私は居ると。

お義父さんが、雄大くん、と向く。

そして、君に迷惑を掛けて申し訳ないんだけど。.....一葉を見守ってくれるかい。何が起こったかは知っている。.....恥を承知で、とお兄ちゃんに頭を下げた。


「ちょ、か、顔を上げて下さい」

「スイス銀行に埋没しているとされているけどね。.....それも金塊200億円分でね。この問題は私達だけではもう解決は無理だ。知り合いの弁護士に相談もしてみるけどね」

「.....」

「.....私も頑張るよ。お義父さん」

「すまないね。双葉ちゃん」


それから私達は顔を向き合っていると。

ただいま、と暗い声で.....お姉ちゃんが帰って来た。

私達は、?、を浮かべながら、お帰り、と言うと.....お姉ちゃんの顔はかなり暗い顔をしていた。

なんだ、と思っていると。


「.....私に200億円の遺産があるって本当」


その様に切り出した。

私達は愕然としながらその言葉を受ける。

今この場にお姉ちゃんは居なかった。

お兄ちゃんもお義父さんも唖然とする。


「.....私がこの事件とか全ての原因?」

「お姉ちゃん。.....何処で知ったの」

「帰宅する時にね。相模から電話があった」

「.....まさか!?」


そして顔を上げるお姉ちゃん。

泣きそうな顔をしている。

その顔にお兄ちゃんが駆け寄る。

それからお姉ちゃんを抱きしめる。

なんて事をしたんだ相模は。

そう考えながら。


「私は.....200億円の価値があるんだね。じゃあその分、私が死ねば良いのかな」

「お姉ちゃん。それだけはダメ。.....死んじゃったら元も子もない」

「じゃあどうすれば良いのかな。双葉」

「.....それは.....」


相模のアホ。

ぶち殺したくなる。

思いながら居るとお兄ちゃんがとんでもないぶっ飛んだ案を切り出した。

なあ。200億円がもう要らないって言うなら世間に寄付したら良いんじゃないか?、と、である.....え!?

世界には困っている人が山程居ると思うしな、とも。

法律関係に詳しく無いけど、と。


「.....その案は思いつかなかったね」

「やってみる価値はあるんじゃないでしょうか」

「必要な額だけ貰ってから?」

「そうだ。だけど.....相模が怒るかもだが」

「だけどお兄ちゃん。もうそれしか手段無いよ。多分」


それから私達は考える。

お姉ちゃんが死なない様にする事と。

このお金を手放す事を。

考えながら私達は議論をした。

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