第4話 エロ本

「実を言うともう帰りたくも無いけどね」


その様に話しながら俺を見てくる双葉。

それはそうだろうな。

浮気している相手と一緒に暮らすなんていう苦痛は甚大だろう。

考えながら双葉を見る。


「双葉。無理な時はいつでも来てくれ。俺が何とかする」

「あはは。お兄ちゃんは優しいね。有難う。多分結構頼る事にはなると思う」

「そうだな。その時は来てくれ」

「このマンションに本来なら住みたいけど.....それは無理だから。この近所にアパートを借りる事になると思う」


そう言いながら沈黙する双葉。

そんな姿を見ながら黙る俺。

そして数秒の時が流れる。

それから、ねえ、と声がした。


「何だ?」

「お兄ちゃんの部屋に行きたい」

「俺の部屋なんぞ来てもどうしようもないんじゃないか?」

「そんな事はないよ。お兄ちゃん。私はお兄ちゃんの部屋.....和むしね」


言いながら俺に向いて控えめに笑みを浮かべる双葉。

その顔は『心から信じていたのに』という感じの顔だ。

俺は頬を掻きながら、まあその、と切り出す。

それから、部屋に来るなら来て良いぞ、と話した。


「お兄ちゃん。有難う」

「その後はどうする?帰るか?」

「本当なら帰りたくないけどね」

「.....そうだな。帰りたくはないだろうなお前も」

「だけど親が心配するから」


そう言葉を発しながら俺を見る双葉。

そしてまた複雑な顔をした。

俺はそんな姿を見つつ、まあちょっとの辛抱だ、と答える。

それから、うちに軽々しく泊まれって言えないしな、とも口にした。


「そうだね」


そうしていると双葉が寄って来た。

それから俺に縋る様な感じを見せる。

俺はその姿に、?、を浮かべる。

そして双葉は、お姉ちゃんの事を心から信頼していたから挫かれたよね、と向いてきながら涙を浮かべる。


「.....双葉」

「だからこそ悲しい」

「そりゃそうだろうな。悔しいよな」

「悔しいよ。だけどもう現実は現実だから。.....復讐する。絶対に」


言いながら双葉は目の前を見た。

それから真剣な顔をする。

俺はその姿を見つつ、じゃあ上がるか?、と言葉を発した。

双葉は、うん、と返事をする。


「そういえばお兄ちゃんの部屋はエロ本ないの?」

「は!?エロ本!?ねぇよ!?」

「えー。つまんなーい。お兄ちゃんはエッチじゃないと」

「エッチじゃないとってお前な」


俺は苦笑いを浮かべる。

そして口元をへの字にした双葉に対して、お前の様にエッチでは無いから、と首を振ってから反応する。

すると、私はエッチじゃなくて当たり前の事をしているだけだよ?、と反応された。

え、と俺は唖然とする。

ニヤッとした双葉。


「私はあくまでお兄ちゃんを好きなだけ。.....だからその分、貴方が求めるなら私はエッチになる」

「お、お前!?」

「性欲は必要だよ?だって俺が無いと男性と女性じゃないもん」


言いながら人差し指を立てて自論を展開する双葉。

俺はそんな姿に額に手を添える。

そして双葉の額を弾く。

そんなにエロく無いからな俺は、と言いながらそのまま自室に招き入れる。

双葉はまたも口元をへの字にした。


「つまんない」

「いやお前な。つまらないって」

「だってお兄ちゃんがエロくないから」

「訳が分からない!」


全く、と思っていると。

双葉は何をするかと思ったら。

ベッドの下を覗き込む。

それから漁り始めた。


「お前な.....無いって」

「無い事はないでしょう。1冊ぐらいあるでしょ?エロ本」

「いや。無いモンは.....」


とそこまで言い掛けて俺の友人の事を思い出す。

ソイツは俺の友人の友作瑛一(ともさくえいいち)という奴だが。

エロ本好きなエロい野郎だ。


俺は、そういや.....友作がこの前来たよな?、と青ざめる。

アイツが碌でもないイタズラをしているとするなら?

何か、お前の部屋はマジつまらん。これが男子の部屋か?この部屋にエロ本を直伝するとか言ってたしな.....。

考えながらも、まあ無いか、と否定する。

そして考えていると、あった!、と声がした。


「お兄ちゃんのエロ本」

「.....は?」

「ふむふむ。貧乳好きなんだね。お兄ちゃん」


それを持ちながらニヤニヤする双葉。

貧乳カンパニーというエロ本があったのだが見覚えがない。

胸を露出した色々な女優が写っているのだが。

あの野郎!!!!!

思いながら俺は青ざめながら、待て!、と静止する。


「それは友作の仕組んだ罠だ!」

「ふーん。お兄ちゃんは人のせいにするんだね?えっちー」

「俺はどっち派でも無い。勘違いするな」

「そう言いながら罪から逃れる気?お兄ちゃんのすけべー」


度々言うが、あの野郎!話がややこしくなったじゃねーか!!!!!

思いながら俺は双葉を止めるが。

双葉は避けながら内容をしっかり読んでいた。

そして赤くなりながら、ふむふむ、と言う。

それを思いっきり取り上げた。


「双葉。お前にはかなりの毒だ。捨てるぞ」

「.....お兄ちゃんはこういうプレイが好きなの?えっち」

「お前が探したんだけどな。この本」


双葉はモジモジしながら話す。

俺はその姿を見ながら盛大に溜息を吐きつつ。

これは捨てるからな、と言いながら廃棄処分とする。

友作の野郎は学校でぶっ殺してやる。

そう考えながら。

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