第二章 マトモとは?

頑張った末に壊れた世界

第10話 broken

☆雄大サイド☆


キスされた。

まさかと思うが双葉に、である。

俺は衝撃を受けながら双葉を見る。

金槌で頭をぶん殴られたぐらいの衝撃だ。

思いながら横に寄り添っている双葉を見る。


「お兄ちゃん」

「双葉。もう一個思った事を言って良いか」

「うん?」

「お前.....トチ狂ってないか?」

「私は至って普通だけどそれはないよ?」


普通、か。

しかしこれが普通とは思えないな。

思いながら俺は心配げに双葉を見る。


双葉はそれを片っ端から否定する。

俺は、まあ良いか、と思いながら俺は双葉を見る。

すると双葉は、まあでもやり過ぎかもね、と俺の横から立ち上がる。

それから俺を和かに見てくる。


「でもね。お兄ちゃん。私は本当に貴方が好きだから」

「分かるが.....」

「うん。だからそれは分かってほしい」

「.....」


そうしていると、見つけた、と声がした。

背後を見ると教師が2人怒りの感じで立っている。

あちゃー、と思いながら俺は額に手を添える。


そして双葉も肩を竦める。

ここに来るとは思ってなかった様だ。

予想外の展開、か。



俺達は結論から言って反省文を10枚という形に取られた。

双葉の説明は流石に無理があった様だ。

考えながら俺は苦笑する。

そして教室に戻る為に俺は歩いていると。

目の前に女子が立っていた。


「.....」

「一葉」

「何をしていたの。何処で何を」


一葉は何か複雑な顔をしていた。

何かを知っている様な感じを見せる。

俺はその姿を見ながら、ちょっと羽目を外しすぎたかな。すまない、とだけコメントをする。

一葉は、そう。.....屋上で何かしてなかった?、と聞いてくる。

少しだけギクッとする俺。


「.....答えて」

「見ていたのか」

「私だけだけどね。.....何をしていたの?」

「双葉に連れて行かれてな。.....相談を聞いていた」

「何で?」

「お前の事だ」


俺はそう一葉に告げると。

一葉は思いっきり見開いた。

それから俺は、お前とは別れたい、と告げる。

お前とは付き合えない、とも。


「.....何で.....?上手くいっていたじゃん」

「お前とは確かに上手くいっていたけどな。.....すまないがこれからはもう付き合えない」

「何で」

「お前の胸に手を添えてみてくれ。.....何故こうなったか」

「.....」


俺の言葉に。

一葉は難しい顔をしてから考え込む。

それから俺を見てくる。

俺はその姿を見ながら溜息を吐く。

そういう事だ、と言いながら。


「.....」

「双葉はお前の事を心から心配していた。今しか相談が出来ないって言ったから。.....でもそれでも二人きりになったから俺にも非はある。だから謝る。でも今回はお前にも非がある」

「.....そう」


一葉は何かを思い出した様にして悲しげな顔をしながら俯く。

それから複雑な面持ちで俺を見てくる。

俺はその顔を見ながら、じゃあ戻るぞ、と言うと。

一葉は俺に向いてくる。


「.....私がヨリを戻したいって言ったら戻るかな」

「戻らない。何を甘ったれた事を言ってんだ」

「.....だよね。.....ははは」


まるで力尽きた様な感じで呻き声の様な。

そんな言葉を放つ一葉。

俺はその言葉を聞きながら前を見る。

それから歩いていると。

目の前から、一葉、と声がした。


「.....今村」

「ハロハロ」


今村嘉(いまむらよしみ)。

そばかすのある様な感じの真面目系美少女。

丸メガネで.....笑顔の絶えない。

一葉の友人だ。


「.....どうしたの。嘉」

「あ。えっとプリントを届けてくれって言われたから.....どうしたのその顔?」

「.....色々あってね。ゴメン」

「色々?」

「うん。色々ね。私が悪いんだけど」


言いながら俺をチラ見してから苦笑いを浮かべる一葉。

それから前を見る一葉。

今村は、そっか?、という感じで穏やかになる。

俺は一葉の落ち込む様子を見ながら、今はそっとしてやれ、と今村に言う。


「.....あ。もしかして長谷川くんと何かあったの?」

「うん」

「.....言えない事?」

「言えない」

「.....そっか。話す気になったら話してね」


今村はいつもこんな感じだ。

俺はそんな今村を見ながら目線をずらす。

それから、俺は先に行く、と切り出して歩き出した。

今村と一葉は、うん、とだけ返事をする。


☆一葉サイド☆


その背を見ながら思う。

正直。

愚かだったと思う、愚鈍と言える。

思いながら私は嘉を見る。

馬鹿だったな私も大概、と.....。


「.....嘉」

「うんうん。何?」

「.....殴って」

「うんうん。.....へ?」


嘉は目を丸くして驚きながら私を見る。

私は号泣し始めた。

失ったものはデカすぎたと思う。


思いながら私は目に涙を。

大粒の涙を浮かべた。

まるで真珠の様な涙を。


「一葉。一体.....何をしたの?」

「.....浮気だね。それも私が悪い。私が浮気した」

「.....何でそんな事をしたの.....?」

「どっちも魅力的だった。だからどっちも選べなかった。だから浮気してしまった。魅力に勝てなかった。.....私は愚かだよ」


愕然としている嘉にそう説明する。

これは平手打ちでも飛んでくるかな。

だが嘉はこんな事を話した。

もう元の関係には戻れないと思うけど、と。


その男性とは別れたんだよね?、とも。

私は泣きじゃくりながら、一体私は何をしているんだろうって.....私はもう二度とあの人には会わない、と反省する。


「.....多分もう長谷川くんとは二度と恋人には戻らないよ。そこら辺はあくまで一葉が悪いから。.....だけど幼馴染の関係は修復できるんじゃないかな」

「若気の至りにしては重すぎるからだから戻ろうって気はしない。ただ今は謝りたいと思う」

「じゃあそれを考えていこう。一葉なら出来るよ」


笑みを浮かべる嘉。

その姿に私は顔を覆ってから崩れ落ちて泣き始める。

私が失ったものはあまりに大きかった気がする、とそう思いながら。

精一杯の反省で何とか取り繕えるか。

私は.....そう思った、と同時に猛烈な寂しさが襲ってきた。


そして。

何かが、壊れた。


嘉の言葉もそうだが。

私は。

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