第15話 決意

☆雄大サイド☆


俺自身としては。

アイツに期待もするし期待もしてない。

ハーフアンドハーフと言った所だろうか。

信じられるし信じられない。

そんな感じで接している。


一葉が本当に反省するならその誠意を見せてほしい。

そうしなければ俺は一葉に接するのは難しいと思える。

そうして放課後になった。

俺は帰宅の準備を整えながら友作を見る。

カラオケでも行かないか、と誘ってみると友作は、すまん。今日は塾だわ〜、と答えてきた。


「.....ああ。そうなんだな」

「そうだな。.....9月は試験ばっかだから」

「うん。じゃあ気を付けてな。友作」

「ああ。.....頑張れよ。お前も」

「俺はお前ほど頑張ってない。.....お前は偉いよ」


何言ってやがるんだ相棒、と俺に向いてくる友作。

それから俺の手を叩いてくる。

そして、お前は十分に頑張ってるよ。誇りに思えそれは、と友作は向いてきた。

俺はその言葉に、!、となる。

そうしてから、サンキューな、と告げる俺。


「ああ。.....行って来るから。また明日な」

「気を付けてな。相棒」

「そうだな。相棒」


それから友作は急ぐ様にその場を去る。

それを見送ってから、んじゃ帰りますか、と思いながら立ち上がる。

すると教室のドアが開いた。

そして.....その人物が俺を見てくる。


「何をしに来たんだ。一葉」


教室がザワザワとなる。

まるで宝物でも見つけた様な。

そんな感じのザワザワ。

世界遺産でも見つけた様な感じだが。

まあそれは良いとして、と思いながら一葉を見る。


「.....雄大。話があるの」

「何の話だ。お前の例の件なら.....」

「例の件だけど。この決意を伝えたいから。双葉とかにも伝えてある」

「.....?」


俺達はそのまま帰宅する為に階段を降りる。

そして無言で2人で歩いていると。

一葉が意を決した様に顔を上げてから俺を見る。

まるで目に希望の灯りを宿す様に。


「私。反省した。.....だけどまだ反省が足りないから。.....私.....他の人の為に役に立ちたい」

「そうか。それは良いこったな」

「先ずは貴方に認められる様に成長したい」

「.....」

「今の私の信頼度は0に近いから。だからその分頑張りたい」


俺を見ながら真剣な顔になる一葉。

その姿に、お前の信頼度はマジに0に近いから。.....だからまだ信頼出来ない。だけどお前が頑張るって言っているならそれを見せてくれ。それが俺の為になる、と言葉を発した。

すると一葉は、うん、と返事をした。


「.....私は嘉に。みんなに信頼される大人になる」

「そうだな。もう良い加減に大人にならないと。お前も」

「有難う。そう言ってくれて」

「別にお前の為に言っている訳じゃない」


そう言いながら俺は下駄箱から靴を出す。

それから、今村はどうしたんだ、と聞いてみると。

嘉なら部活だよ、と言ってくる。

俺は目の前をみながら、そうか、と答える。

そして俺は一葉を見る。


「.....お前がいきなり来たから何事かと思った」

「これだけは伝えておかないとって思ったから。だから来た。ゴメン。迷惑だったよね」

「迷惑って程でも無い。ただ俺はお前に信頼が出来ないから。それだけは納得してくれ」

「そうだね。分かる。だから頑張りたい」


何故こんなにも元気になっているのか分からないが。

まあ元気なら良かった、と思いながら一葉を見る。

お前どうするんだ。俺と帰るのか、と聞いてみると。

勉強道具を買いに寄りたい所があるから、と苦笑する。


「そうか。気を付けてな」

「うん。行って来ます」


それから俺は決意を新たにした様な一葉を見送ってから。

俺は目線だけ動かしてその姿を見てから。

そのまま俺は目の前を見つつ歩き出す。

すると目の前の校門付近から女子生徒がやって来た。

待っていた様な感じを見せながら。


「長谷川先輩」

「お前は確か.....飯山だったか?」

「そうですね。飯山佳代子って言います」

「正式に会うのは初めましてだな」

「そうですね」


飯山は俺に対して笑顔を浮かべる。

と同時に真剣な顔になる。

俺はその顔に、?、を浮かべる。

すると飯山は俺を見ながら、長谷川先輩。.....その。大丈夫ですか。一葉先輩は、と聞いてくる。


「一葉?一葉なら大丈夫.....だと思うが。俺には大丈夫なのか大丈夫で無いのか分からない」

「私は一葉先輩は双葉のお姉ちゃんだから.....心配なんです」

「.....」

「私は姉を自殺で失っています」

「知ってる。双葉から聞いた事がある」

「双葉から?」

「ああ。君は自殺で歳の離れた姉を失ったんだろ?」


俺の言葉に飯山は、!、と反応する。

そして飯山は複雑そうな顔をしてから俯いた。

そんな様子を見ながら俺は、ゴメン。要らない事を掘り返したのなら謝る。俺そういうの鈍いから、と言う。

すると飯山は、いや。そういう意味じゃないです、と慌てる様に否定する。


「ただこうやって知られているのが.....お姉ちゃんも思われているだなって」

「.....そうか」

「そういう意味で.....」

「.....君も大変だったな」


私も大変ですけど双葉や長谷川先輩とかがもっと大変です。

だから私の事は今は問題無いです、と笑顔になる飯山。

俺はその顔に、強いな、と答える。

飯山は、いえ。.....強い様に見えるだけです、と苦笑いを浮かべる。


「すいません。引き留めてしまって」

「.....いや。有難うな。君と話せて良かった」

「光栄です。また仲良くして下さい」

「.....」


俺は、では失礼します、と礼儀良く頭を下げて去る飯山を見る。

その背を見ながら俺は顎に手を添えて考えながら歩き始める。

その足取りは若干だけ軽くなっていた。

正直足取りが全部軽くなった訳じゃないが。

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