第5話 枯れる大地

「お兄ちゃんのお部屋は面白いものばかりだね」

「面白いってかゲームとかラノベばかりだけどな」

「聖地だよ。それでも。.....有難う。お兄ちゃん」


そう言いながら双葉は玄関で靴を履く。

それから立ち上がってお尻を叩いてから、よし!、と決断した様な顔をする。

俺はその顔を見ながら少しだけ複雑な顔をする。

そうしていると双葉が、お兄ちゃん。そんな顔をしないで、と言ってくる。


「今日でかなり元気になった気がするから」

「そうか。だったら良いんだが」

「うん。マシな方にはなったから。色々と有難う」

「俺は何もしてない。お前が全部やった」

「いや。お兄ちゃんという存在があったからだよ」


そして俺に近付いて来る双葉。

それから俺を見上げた。

俺は、?、を浮かべながら双葉を見る。

身長高いね。お兄ちゃん、と話して来る双葉。


「.....キスする?」

「いや。アホか。俺はもうそんな事はしないって決めた」

「そっか。じゃあ今はお預けだね」

「今はって。俺はもう二度と.....」

「それは無いよ。お兄ちゃん」


俺を見てくる双葉。

そしてニヤッとする。

その顔を見ながら俺は首を傾げた。

すると双葉は、私はお兄ちゃんを必ず振り向かせる。必ず。だからお兄ちゃんは待っていなさい、と笑顔になる。


「それは無いと思うんだが」

「私は有ると思っている。可能性は0じゃない」

「.....お前が言うならそうかもしれないけどな」

「そうだよ。お兄ちゃん。0と1とでは違うよ。0はマイナスじゃない」


何処ぞの女性科学者の説明をするな。

思いながら俺は苦笑しながら、マギシステムでも作る気か、と聞いてみる。

すると双葉はニコッとしながら、そこまでは無いけどね。でもあのアニメって名言多いよね、とまた笑顔になる。


「お兄ちゃんと一緒に観なかったら.....あり得なかったな。アニメをこんなに好きになるの」

「双葉.....」

「だからお兄ちゃん。誇りに思って良いよ。貴方の優しさは」

「.....有難うな。そう言ってくれて」


双葉は、どういたしまして、スカートの両端を握って少しだけ上げる仕草をする。

俺はその姿を見つつ、気を付けて帰れよ、と柔和になる。

すると双葉は、うん。お兄ちゃんも寂しくならない様にね、と揶揄う様に話した。

オイオイ、とツッコミを入れながら俺は双葉に苦笑いを浮かべる。


「アハハ。冗談だよ。じゃあね。お兄ちゃん」

「.....ああ。気を付けてな」

「うん。今日は有難う」


そして双葉はドアを閉めてから手を振って去って行く。

俺はその姿を手を振ってから見送ってから.....室内に戻る。

何だろうなこの寂しい気持ちは。

双葉のせいじゃ無いけど.....何か複雑だ。


☆双葉サイド☆


お兄ちゃんはやっぱりお兄ちゃんらしい。

考えながら私は帰宅していた。

私のお兄ちゃんは私のお兄ちゃんだ。

それも私だけのお兄ちゃんだ。


「.....好きな気持ちが溢れるなぁ」


私はそんな事を呟きながら、ウヘヘ、と変な笑みを浮かべながら帰宅をする。

それから気を張り詰めて中に入ると。

目の前に一葉。


つまり私のお姉ちゃんが現れた。

完璧な美少女であり。

天才である姉だ。

だけど一箇所だけ欠陥があった。


それは私のお兄ちゃんの事を放置し。

そして浮気した事だ。


私は先程の喜び故の上擦った感じを見せず。

そのまま悪魔の様な笑顔を浮かべる。

それから、お姉ちゃん。ただいま、と言ってみる。


お姉ちゃんは、うん?お帰り、と平然通りに接してくる。

私はこの女を許さない。

絶対に許す事は無いだろう。

何故なら私のお兄ちゃんを切り捨て浮気した。


そんな事をするなら別れてからすれば良いものを。

だから私にお兄ちゃんに恨みを抱かれる。

考えながら私はお姉ちゃんに笑顔を浮かべ続ける。


「今日は何処に行ってたの?」

「何処でも良いでしょう?お姉ちゃん。私だって自由にしたい事があるから」

「そっか。.....双葉。今度、みんなでお墓参りに行こうって話になっているよ。行かない?」

「私はいい。お姉ちゃんと孝宏さんとで行ってきて」

「?.....行かないの?」


アンタなんかと一緒に行動するのは今は嫌だ。

とは言えないので私は、まあちょっと色々あって、と頬を掻く仕草を見せる。

すると、そっか、とお姉ちゃんは柔和に切り出した。

私はその姿を見ながら私は、ちょっと飲み物を飲んでくるね、と台所に向かう。

そうしているとお姉ちゃんがこんな話をした。


「ねえ双葉。今度、雄大とデートするの。何を着て行ったら良いと思う?」

「.....そうだね。お姉ちゃんはセンスが良いから分からないかも。でもお兄ちゃんが喜ぶのを着て行ったら良いと思うよ」

「そうかな。センス良いかなぁ私」


頬を朱に染めるお姉ちゃん。

正直言って気持ちが悪いし鼻で笑いが出る。

浮気している人間がする事ではない。

思いながら私はお姉ちゃんを嘲笑うかの様に見る。

あくまでバレない様に。


「お姉ちゃんの着ているものは何でも喜ぶからね。お兄ちゃん。アハハ」

「そうだよね!?じゃあ雄大が喜ぶのを一生懸命に考えて着ていこうかなぁ」

「.....」


お姉ちゃんのこんな姿を何か複雑に思っていたが。

今は私が勝ち誇っている様な思いだ。

だがいつかは陥落させなければならないだろう。

お姉ちゃんとお兄ちゃんの関係を、である。


さもなくばこの場はお姉ちゃんの天下になってしまう。

調子に乗ってしまう。

それはいけない。


私は思いながら小さな複雑な気持ちと嘲笑う気持ちを持ちながらデートの服を選びに行った姉の背中を見る。

貴方は私は心から尊敬していた。

だけど今はもう穢らわしい存在だ。

そう思いながら。

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