VRMMOと他ゲーと現実
アキ AYAKA
『カイラル:RS』と『トライリッター』とスポーツ大会(クラス選考)
第1話
『だあぁぁぁ!』
画面の中にいる男が、周囲のNPCにつられて叫ぶ。
近くにいた3人の仲間は、迷惑そうに耳を抑えていた。
『叫んでないで、行きますよ』
派手な色の服を着た仲間にそう言われ、2人で走り出す。残った2人は別で走り始めた。
カメラが派手な色の服を着た女を追って、敵との衝突を映し出す。
「そっちの動きは?」
「さっきよりも全然いい」
私は従妹を、妹は叫んだ男を見ていた。
少し前フレンドになったから、個人を追っているカメラで戦闘の様子が見られる。
確かに動きは良い。
叫んだ男が体勢を崩す攻撃、それを見逃がさず従妹が追い打ちを掛けて倒しきる。
2人の攻勢は、周辺一帯の敵を釘付けにしていた。
しかし、敵が2人から離れて出方を窺いだす。
『必殺技、忘れていませんか?』
『そういう場所だったな』
画面端に見える男がそう言うと、敵の集団に向かって走り出す。
そこからは必殺技を織り交ぜて攻撃、殲滅速度が上がっていた。
楽しくなってみていると、ラッパの音が聞こえた。残り5分の合図だ。
画面の上端には残存兵力が書かれており、従妹のチームは負けている。
目を離した隙に、従妹の片手剣が弾き飛ばされ、攻撃を防御するが勢いよく飛ばされた。
飛んだ近くに叫んだ男もいて、互いの傍には誰かの武器。
『その武器、渡して下さい』
『刀、取って』
互いが互いの欲する武器を持っているなか、とどめを刺しに来る敵。
2人は慣れない武器を使って、撃退する。
従妹は刀の軽さに戸惑っているようだった。
男が刀を、従妹が戦斧を手に入れた。2人はそのまま敵陣営の中心に向かう。
互いに生き残りの少ない戦場で、2人の向かう先、NPCが赤いオーラを纏っていた。
指揮官NPC、最も強いNPCで倒せば得られる経験値も多い。
2人の前には、最初に分かれた2人の仲間が指揮官NPCと戦闘中だ。
『跳べ!』
距離が近づいて来た所で、従妹の前方を走っていた男がしゃがんだ。
従妹は躊躇せず、男の体を台にしてNPCの頭上まで跳ぶ。
振り下ろしの攻撃が防がれるが、2人の仲間がその隙に攻撃したのが、画面端で見える。
着地して、従妹も背後から攻撃。
従妹は動いていないが、首に一筋の線が走った。
NPCの体は何度も、正面から攻撃を受けているようだ。
動かなくなった指揮官NPCから離れて、戦闘中の所に向かおうとするとラッパが鳴る。
近くには刀を持った男が従妹と同じように、戦闘中の所に向かおうとしていた。
「いやー、おもしろかった! 2人とも動けるじゃん」
「ちょっとちょっと、お姉ちゃん!」
「なに?」
「これ!」
妹が時間も惜しいとばかりに、スマホの画面を見せてきた。
叫んでいた男が指揮官NPCに攻撃するところだ。
従妹を追うカメラでは見えなかったシーン。
「へー。やるじゃん」
「いや、そうだけど。これって⁉」
「そうかも。ちょっと調べる」
〇
長かった。やっと手に入れた。
1年間抽選に応募し続け、外す事35回。
生産台数増えましたよ、と言わんばかりの複数店舗当選。
家から最も近い店舗で、小型VR機『TM DVR』を買った。
この小型VR機を買ったことにより、ゲームセンターで毎回のように払っていたお金がいらない。
VR機が設置されているネットカフェ、ゲームセンターに行かなくてよくなった。
それで、ゲーム時間と受験勉強する時間が増えるわけだ。
帰宅すると玄関の天井から、ロボットアームが2本伸びてくる。
『上着を』
「へい」
渡すとハンガーに通して、ブラッシングを始めた。
『先ほど第2陣当選のメールが来ていました』
「よっしゃ。今から初期設定してくるから運動の準備しといて」
『分かりました』
高校入学前に小型VR機を購入できて、VR初のMMO第2陣の抽選にも通った。
これから俺は最高のVRゲームライフを楽しむことになるだろう。
そう考えていたのだが、高校へ入学して予定していた最高のVRゲームライフは軌道変更を余儀なくされた。
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