第24話 仲間と共に
見事メインクエストを進め、レポートも書き上げたナクラ。
家を建てる場所の下見をしたのち、一旦仲間となった武闘家少女のマールと共に徒歩数分をかけてイチストの町へと帰還した。
「こういうことはシャルさんに聞くのが一番だよね!」
「こういうこと?」
ナクラの説明を省いた発言にマールが首をかしげる。
ナクラはぴょこんと小さくジャンプし、可愛らしく質問に答える。
「モンスターを、テイムするの!」
「ああ、兄ちゃんがそんな事言ってたね。ナクラはテイムができるんだ?」
「ふっふーん、こう見えて私、大きい狼を手懐けたことがあるんだ!……すぐお別れしちゃったけど」
そう、記憶にも新しい白い狼――フェンリルの事である。尚、フェンリルは当然勿論一片の間違いもなくナクラに懐いていない。毒で殺されただけだ。お腹の柔らかいところを毒手で遠慮なくまさぐられて命尽きたフェンリルは祟っていい。
ただし、フェンリルを撃ち滅ぼした事でナクラは「狼の王」という称号を得ており、Lv80までのウルフ系モンスターをテイム可能となっている。……ナクラは相変わらず称号の効果を確認していないので気付いていないが。
「狙うのはスライム! ゴブリンの肉が余ってるからね!」
そもそも称号に効果があることを知らないのだから仕方ない。仕方ないのだ。
とはいえナクラは賢いので、一旦テイムの方法をチュートリアルお姉さんことシャルロッテに聞きに行くことにした。
「む? ギルドへの依頼完了の報告はいいのか?」
開口一番のセリフがそれだったので、シャルロッテはまぁメインクエストの進行具合も把握しているのだろう。
「問題となりそうなところは倒したから、急ぎじゃないよ。あとでゆっくり報告するね」
「そうか。で、テイムの方法を教えて欲しいとの事だったな。……それなら知り合いのテイマーから聞いたことがある。エサで釣って信頼度を上げ、テイムスキルを使用するんだ。テイムスキルを使用するには最低限の素養が必要だぞ」
あっさりと教えてもらえた。これを聞いてナクラは先日の事を思い出した。
そして……『あ、やっぱりあの白い狼は私にテイムされる寸前だったんだ』……と見当違いの事を夢想した! ふざけんな! 否、断じて否である! お前の料理は猛毒だ!
フェンリルが生きてこの場に居たら間違いなくナクラは噛み殺されているはずだ。ただ気を付けられたし、噛むなら頭がお勧めである。手には毒があるから。
「ふふん、なんか私、ウルフ系のモンスターと相性がいいんじゃないかなって思うんだ」
「確かに、ナクラにはウルフが思わず
「でしょ!」
それは称号「狼の王」の効果である! 断じてナクラの人徳ではない!
と、ここでちらりとマールに目をやるシャルロッテ。AI入りNPC同士の邂逅である。
「そちらの少女はナクラの仲間か。いい目をしている」
「あ、ありがとうございます、シャルロッテ様!」
「いずれは英雄に名を連ねるかもしれないな。精進するといい」
意味深ににやりと笑うシャルロッテ。
マールは主人公の仲間キャラである。当然、その素質的なものは主人公基準であり、βテストでもフェンリル討伐に連れていけるスペックに成長する。そういうメタ知識と照らし合わせてみれば、シャルロッテの言葉は正しく当然だと言えた。
「ナクラの事を頼んだぞ」
「は、はい! ありがとうございます!」
そう言って勢いよく頭を下げるマール。まるで体育会系の上下関係があるような雰囲気に、ナクラはちょっとマールの肩をつっついた。
「ねぇ、シャルさんってそんなに偉いの?」
「ええ!? だってイチスト騎士団の美人副団長だよ!? 誰もが知る有名人じゃん!」
「はっはっは、照れるなぁ。気軽にシャルお姉さんと呼んでも良いんだぞ?」
「めめめめっそうもない!」
どこかポンコツっぽいイメージのあるチュートリアルお姉さんは、一般人(NPC)にとっては、とても憧れの存在らしかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます