第17話 進めよう、メインクエスト!


 そんなこんなで初めてのオンライン要素を終えてすっかり気力を疲弊させたナクラは、オフラインモードに戻っていよいよメインクエストを進めることにした。


「そういえば、まだネームドNPCってシャルさんしか知り合ってない……」


 金髪ポニテのお姉さまも捨てがたいが、こう、もっと色々なキャラと仲良しになりたいところだ。尚、そこに男女の区別は特にない。

 両方いける口、というと若干の語弊があるが、ナクラ――名倉ばっこは小説家である。基本的には人間が好きなのだ。正確には、キャラクターが好きなのだ。コミュ障だけど。


 なんならおデブの成金商人なんかでも「すごい! どっからどう見ても商人!」とお友達になりたいタイプである。コミュ力があればの話だが。気持ちだけはある。


 ともあれ、メインクエストを進めて行けばいろんなキャラクターと知り合うことができるのだろう。ナクラはその起点となる冒険者ギルドに赴いた。



「たのもー。依頼見せてください」

「はい、かしこまりました」


 受付でそう尋ねると、受付嬢のNPCとの間にウィンドウが開く。

 ちなみに誠に勝手ながらカウンターの手前には身長の低いナクラのためのお立ち台として椅子が置かれていた。ナクラが置いたのだ、届かなかったので。

 ゲームでなければ邪魔だと片付けられる代物だが、ここは実質ナクラ専用のカウンターなので問題ない。


 達成済みの常設討伐依頼を選んでお金をもらいつつ、赤字で目立っている依頼を見る。

 メインクエスト関連の依頼だ。依頼タイトルは『闇の者1』。

 ナクラが「1ということは2以降があるとネタバレしているじゃないか」と思いつつそれを選択すると、直後にバンッとギルドの扉を開かれた。

 そこに立っていたのはツンツンした赤髪の少年。恰好からして見習い冒険者、と言った感じの男の子である。ショタい。背中の大剣がメイン武器か。走ってきたのか、息を切らせながら受付へやってくる。


「どうかしたんですか? バッツ君」


 どうやらこの少年はバッツというらしい。……身長はナクラの方がちょっと低かった。まぁ、そういうロリ巨乳キャラに作ったのはナクラ本人なので特に言う事はない。


「タチアナさん! 大変だ、ゴブリンが現れた!!」

「ええっ!」


 ……はて、ゴブリンといえばファンタジーのザコモンスターの代表格。それがどうかしたのか、と思いつつ、そういえばスライムは居たけどゴブリンは見かけなかったなと思い返す。


「ゴブリンがどうしたんですか?」

「あっ、ナクラ様はマレビトでしたね。ゴブリンというのは、闇の軍勢――つまり、魔王の手下で、通常には発生しないモンスターなのです」


 なるほどそういう設定なのか。と、ナクラは納得した。


「ゴブリンがノッソ村を襲ってきたんだ、今オヤジが村を守ってるけど、早く助けてくれ!」

「しかし、今手が空いててゴブリンに対抗できる冒険者は――あっ」


 と、ここでわざとらしくナクラを見る受付嬢。目を逸らすナクラ。

 ……受付嬢さんはそっとナクラの目の前に回り込んできた。


「ナクラ様。なぜ目を逸らすのですか?」

「う、いやなんとなく……」

「なんとなく……まぁ気持ちは分からなくもないですが」


 ……受付嬢は低級モブNPCだと思っていたのだが、どうやら違うらしい。あるいは普段はモブだがイベント時にはAIが入るタイプかもしれない。


「ナクラ様。ギルドから緊急依頼です! ゴブリンを退治し、村を救ってください!」

「あ、はい……」

「よろしくお願いします。では、こちらがノッソ村の位置情報です」


 緊急依頼は断ることができないようだ。まぁ、自分でメインクエストの依頼を選択したから断るも何もないんだけれど。


「……このちっこいのが戦えるのか?」

「バッツ君。人を見た眼で判断してはいけません。彼女はベテランですよ?」

「マジで!? そりゃ悪かった、謝るよ」


 と、ナクラはそういえば自分のレベルが30で、『ベテラン』になっていることを思い出した。うーん、過分! 偶然イベントに遭遇(とナクラは信じている)しただけで、実際の経験は大したことが無いむしろ初心者の気持ちだというのに。


「……私なんてまだまだ初心者だよ」

「初心を忘れないってことか。だからそんな装備してるんだな」


 否、初心者の服と靴を装備しているのは、単に買い替えていないだけである。しかし中々高度な言い回しを突いてくるあたり、バッツはAI入りのNPCで間違いないだろう。


「俺はバッツだ。俺が案内するから一緒に来てくれ、ナクラ」


 ぽいん、とウィンドウが浮かぶ。『NPC:バッツ と、パーティを組みますか?』


「……! は、はい!」


 こうしてナクラは少年――バッツとパーティーを組み、ノッソ村に向かう事にした。

 と、バッツとパーティーを組むことを了承した時点で新たにウィンドウが出る。『ノッソ村まで移動をスキップしますか?』……なるほど、そういうのもあるらしい。


「……折角だから道中でパーティープレイに慣れておこうかな?」


 ゴブリンに襲われているノッソ村には悪いが、ナクラは村までの同中を徒歩で向かう事にした。メインクエストをしっかり楽しみ味わう事、これも公認ブログのレビュアーとしての仕事に他ならないのである故に。



―――――――――――――――――

【現在のナクラのステータス】


 名前 : ナクラ

 職業 : ヒーラー(Lv30)

 HP :215/215

 MP :240/240


 STR: 35

 AGI: 14

 VIT: 90

 INT: 60

 DEX: 13

 LUK: 15


 ボーナスポイント(残:53) 備考:料理Lv0→Lv3にした


 スキル:

  光魔法 :Lv 1

  回復魔法:Lv 4

  火魔法 :Lv 1

  即死魔法:Lv 0(習得可)

  毒魔法 :Lv 0(習得可)


  料理  :Lv 3     備考:ポイント1+2+3=6消費

  毒吸収 :Lv 1

  錬金術 :Lv 5

  毒手  :Lv10(MAX)


 耐性:

  猛毒耐性:Lv10(MAX)

  苦痛耐性:Lv10(MAX)

  麻痺耐性:Lv10(MAX)

  酸耐性 :Lv10(MAX)

  呪い耐性:Lv 3

  火耐性 :Lv 3


 装備:

  壊れかけのメイス

  初心者の服

  初心者の靴


 称号:

 「ベテラン」Lv25を超えた

 「シャルロッテの知り合い」シャルロッテと知己を得た

 「百連死:毒」毒で連続100回死んだ。若干耐性が付く


 「イチストの救世主」フェンリルを撃破した証

 「ジャイアントキリング」大型モンスターへの攻撃力アップ

 「暗殺者」毒成功率がアップ

 「狼の天敵」ウルフ系へのダメージ超アップ

 「狼の王」Lv80までのウルフ系モンスターをテイム可能

 「魔の森のヌシ」『魔の森』の素材をどこでも自由に召喚できる(MP消費)



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