第10話 料理とは……錬金術!
そして『毒ミンチ肉メイス』が完成した。
……元はナクラの装備、『初心者のメイス』である。初心者のメイスは、所々黒く焼け焦げた色鮮やかな紫色の毒物が先端を彩り、ゴブリンの崇め奉る邪教の神もビックリなステキな杖と化していた。……しかも時々ぷしゅぅと紫色の煙を吐きだしていた。
……ちくしょう! なんてこった! これは神への冒涜である!
ではその生成プロセスをダイジェストでお送りしよう。
* * *
「たんとんたたとん♪ おいしくなぁれ、おいしくなーあれー♪」
コイツ、歌さえ歌っていれば愛情が籠ると考えている節がある。実際に籠るのは、食材の怨念じゃないか。死体蹴りにも程がある。
NSFWフィルターに隠されたウルフの苦悶の表情が見えていたら、こんな残酷なことはできやしなかっただろう……いや、ナクラならしたかもしれない。『料理』の名のもとに。
「あっ! しまった、串がなきゃ焼けない……ん? これでいいんじゃないかな? 私って天才!」
天災の間違いでは? 先程まで肉を叩きつけていた血まみれのメイスを手に「これでいいんじゃないかな」とナクラが発言した時、きっとあなたはそう思った。
しかし叩きすぎた肉はどろっとしすぎて上手くメイスにくっつかなかったので、スライムやその他色々を混ぜ始めた。実質ハンバーグである。同じ森で獲った材料だし当然ともいえる……強いて違いをいえば、河原の砂利が混じった点か。
「ファイヤボール! あっ。かまどがふっとんだ……せっかく作ったのに。……いいや、直接ファイヤーボールで焼こう! 直火焼きだ!」
結局使われずに吹っ飛ばされたかまど。そして、『ハンバーグ』をこねつけたメイスが倒れないようにちょうどいい岩の割れ目にぶっさし、そこをファイヤーボールの的にする。
これ実質的当て訓練では? 火魔法がLv2に上がるのも時間の問題かもしれない。
* * *
「……んん? 装備品ができたぞ? なんでだろ??」
そりゃそうである。だって錬金術で、素材もメイスなのだから。ゲーム的な分類では『毒を仕込んだメイス』といっていい。毒のナイフと似たようなもんだ。
ただ、ナマモノをつかっている分劣化は早いし、元のメイスもスライム体液でボロボロになりかけているためすぐ壊れてしまうだろう。現在進行形で溶かしている節がある。
消費期限が近いことを考えると、武器よりも食材のそれに近いかもしれない。
「錬金術はさすがにまずかったか……」
さすがに装備品は食べられないや、とナクラはメイスを装備しなおした。……ゲームシステム的に、全く問題なく装備できてしまう。なぜならナクラの職業はヒーラーで、メイスに適正があるからだ。そこに毒の有無は関係ないし、なんならなぜか猛毒耐性があるのでやっぱり問題が無いのだ。
「メイスもこんな感じになっちゃったし、一旦帰ってシャルさんに料理の仕方教えてもらおうかな」
きっとシャルロッテなら料理の仕方も教えてくれるだろう。ただし、システム的な面だけ。いくら優秀なAI入りNPCとはいえ、できない事だってあるのだ……
と、その帰り道。ナクラに忍び寄る大きな影があった。
ナクラは忘れてはいけなかった。ここが、モンスターの領域であることを。魔の森は、イチストの町と違って安全地帯ではないことを。
「……え?」
ナクラの前に、怒気に満ちた白き狼が姿を現した。
……大きい。
四足歩行なのに、ナクラより背が高い。幌馬車くらいの大きさだろうか……
小さなナクラでは、赤ずきんよりも容易く丸呑みされてしまいそうだ。
その白狼は、魔の森のヌシ、フェンリル。
狼たちの気高き王。
――レベルはLv80。βテストにおける、ラスボスであった。
―――――――――――――――――
【現在のナクラのステータス】
名前 : ナクラ
職業 : ヒーラー(Lv8)
HP :175/175
MP : 6/ 44 備考:ファイヤーボールで一度使い果たした
STR: 15
AGI: 4
VIT: 80
INT: 11 備考:錬金術を使って成長した。
DEX: 3
LUK: 4
ボーナスポイント(残:15)
スキル:
光魔法 :Lv 1
回復魔法:Lv 4
火魔法 :Lv 1
即死魔法:Lv 0(習得可)
毒魔法 :Lv 0(習得可)
料理 :Lv 0(習得可)
毒吸収 :Lv 1
錬金術 :Lv 3
毒手 :Lv 8
耐性:
猛毒耐性:Lv10(MAX)
苦痛耐性:Lv10(MAX)
麻痺耐性:Lv10(MAX)
酸耐性 :Lv10(MAX)
呪い耐性:Lv 2
火耐性 :Lv 3
装備:
毒ミンチ肉初心者のメイス
狼血まみれ初心者の服 備考:錬金術で同時に生成された
狼血まみれ初心者の靴 備考:錬金術で同時に生成された
称号:
「ルーキー」始めたばかりの初心者。Lv10で解除。デスぺナ軽減
「シャルロッテの知り合い」シャルロッテと知己を得た
「百連死:毒」毒で連続100回死んだ。若干耐性が付く
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