第22話 問題解決!




「……! しまった、スクショを取り忘れた!」


 なんたる失態! ナクラは怒りのあまり、ブログ記事に必要な写真を撮り忘れていたのである。ああ折角のゴブリンキングが! 無駄足!

 いや、物は考えようである。フェンリルと違い、ゴブリン達は死を冒涜されることなく逝けたのだと。どうか安らかに成仏せよゴブリン共。


「あ、インベントリにゴブリン肉がいっぱい入ってる。……ゴブリン肉って食べられるのかな?」

「え、いや、食わないぞ普通。それを食うのはスライムくらいだろ」

「スライムは食べるんだ?」

「テイムするなら食べるんじゃないか」


 テイム! そういうのもあるのか! と、ナクラは目を輝かせた。

 ナクラは一人暮らしであり、そしてペットは飼っていない。何故か? それは、面倒を見ることができないだろうからである! 自分の面倒すら見きれないナクラが、ペットに生物を飼うなど生命に対して失礼というもの。しかし、それがVRであれば? そう。なんとかなるかもしれないのである!! きっとお世話も1日1ログインとかで簡単に違いない!


 白い狼をモフモフした時の記憶を思い出すナクラ。あれは素晴らしい感触だった……

 これだ! 次はテイムだ!

 古来より動物と子供は鉄板の人気コンテンツである。そして子供はナクラのアバターがまさに子供! であれば? そう! 答えは確定的に明らか! 動物をテイムをすれば、それはもはや可愛いの暴力! ブログ大人気間違いなし! おまけに筆者であるナクラの小説も売れ、既刊も重版! さらには続刊決定!


「これだ……!」


 こうしてナクラは次にすることを決めた。


  * * *


 さて、そんなわけでゴブリンを毒料理で毒昇天させて村に戻ってきたナクラ達は、レクトに洞窟でゴブリンを退治したことを報告した。


「ナクラはすごかったぜ父ちゃん! ゴブリン共ちぎっては投げちぎっては投げ……」

「なんと! ゴブリン共ちぎっては投げちぎっては投げ!」


 ハンバーグ、いやハンバーグという名前の毒物をね、うん。


「ゴブリンキングだってナクラにかかれば一撃だったわ! 私達の出番無かったね」

「見たところヒーラーだというのに……さすがベテラン冒険者だ」


 マールの頭の中では毒物だが、レクトの脳内ではソードメイスを振りぬくナクラが再生されているようである。まったくAIが賢すぎるというのも考え物だ。


「なんにせよ、ボス倒したのでこれでクエストクリア、ですかね?」

「ああ、文句無しだ! しかし、まさかゴブリンキングが出ていようとは……」


 ふぅむ、とあごに手を添えて考えるレクト。


「ナクラ殿。ひとつ頼みがあるのだが……バッツとマール、どちらかをおぬしの旅に同行させては貰えんだろうか?」

「えっ!?」


 と、これはナクラも少し驚いたが、すぐにそう言えばメインクエストだったという事に思い至る。確かにゲームであれば、クエストがすすんで仲間が増えるのは何の不思議もない。つまり、仲間加入イベント!


「さすがに2人ともこの村では大事な戦力だが、片方だけなら。きっといい勉強になるだろう。なんなら後々交代しても構わない」

「なるほど」


 そういう設定なら仕方がない。これはどっちかを取るイベントなのだろうとナクラはスムーズに察した。伊達にゲームはしてないぜ。とはいえ、いつでも交代は可能だろうということであまり深く考える必要もなさそうだ。


「じゃあマールちゃんで」

「私ね。それじゃあ父ちゃん、兄ちゃん、行ってくるね!」


 にこっと笑って、マールが仲間になった!

 ちなみにナクラが何故マールにしたかといえば……ブログにおける『映え』を狙ってのことである! 好きだろうこういう元気で可愛い女の子。私は好き!


 そんなわけで、NPC:マールが、ナクラの仲間になったのである。



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