第23話 料理スキル!




「なぁナクラ。ところでこれ、どうする?」

「ん?」


 と、バッツが持ち物――食材を見せてきた。

 そういえば、追加で食材を採ってきてもらっていたのだった。マールもそのインベントリに食材が入っている。要するに、余った。

 単に引き取って持って行っても良いのだが――


「そうだなぁ……あっ! 村人に料理を作って振舞うっていうのはどうかな!」

「へぇ、それはいいアイディアね!」


 ――おいやめろ。それは殺害予告か? とツッコミを入れる者は残念ながら居なかった。

 ナクラの料理スキルはLv3だし、バッツとマールはあの毒物が料理スキルによって生み出されたものだと認識していない。良識のある大人らしいレクトも同様である!

 なんたるウカツ! そしてそのウカツの代償は村人の死をもって支払われる!


「……あれっ?」


 しかしナクラ、ここでひとつ気が付いた。そう、マイ包丁と土鍋が、ボロボロになっていることに。何故だろうか、使い捨てだったのか? 結構いいお値段したのに。

 それは無論、ナクラが無茶苦茶な調理をしたからに他ならないのであるが……


「……うーん、やっぱり趣味アイテムってことなんだろうなー、料理って」


 違う。本来は長く使いまわせる立派な包丁と土鍋だったはずなのだ。無駄に叩きつけたり、猛毒を煮込んだりしたからボロボロのボロになってしまっただけである。

 そもそも空中に放り投げた食材をスパパッと切ろうとしてホームランするナクラには、マイ調理器具など100年早かったのでは? あ、これは「できればそのまま一生料理に触れずに過ごしてほしい」という意味だ。


「仕方がない、これじゃあまともに料理できないし、今回はミニゲームで料理するかぁ」


 えっ?

 ……すまない、どうやら幻聴が聞こえてしまったようだ。まさか、ナクラが簡易機能で料理するなど、そんな――


「今日もブログ記事書かないといけないから時短しないとね!」


 ――そう言って、ナクラは料理ミニゲーム『難易度:ベリーハード』を開始した!!



「たんたんとたたん、たんとんとん♪ おいしくなぁれ、おいしくなぁれ♪」


 そう言いながら、タイミングよく画面にタッチするナクラ。Great! Excellent! そんな表示がミニゲーム画面に表示されていく。音ゲーの如くコンボが繋がる、繋がっていく! 何故!? 馬鹿な! これではまともな料理ができてしまうではないか! 難易度は……『ベリーハード』だぞ!?


「たんたんとたたん、たんとんとん♪ おいしくなぁれ、おいしくなぁれ♪」


 フルコンボ! そんな! ありえない! ボロボロの包丁とボロボロの土鍋を使っているからベリーハード中のベリーハードと言って差し支えない難易度になっているはずなのにどうしてナクラはここまで軽やかにコンボをつなげられるのか!


 その秘密は、ナクラの幼少期にあった。……料理を教えてもらえない彼女は、なんとピアノを習っていたことがある! つまり! リズム感がばっちりなのだ! そしてピアノ技能はキーボードのタイピングにも生かされている!!


 ……その器用さがあってどうして料理は……!?

 ナクラはなにか平家のお偉いさんに呪われたりしているのですか? それとも学問の神にパラメータ操作された代償? 四国の守り神から嫌われることしました?

 いずれにせよ、それは永遠の謎である。謎にしておきたい。理解してはきっと正気度ががくーんと下がってしまうから。



「美味しい料理のでっきあっがりー!」


 やがて『ぱんぱかぱーん!』とファンファーレがエフェクトと共に鳴り響く。

 そこには『美味しそうなキノコスープ』があった。馬鹿な。ナクラの料理が、美味しそうだと?


 やったことは簡単。切って、鍋に入れて、煮た。いつもと同じ工程ではある。


 大きな違いは、まず素材。バッツが見つけた『食べられる食材』のみを使用している。

 何分、魔の森素材のストックをナクラハンバーグNextで使い切っていたので。


 そして、料理スキルのミニゲームを使ったこと。

 これであれば、料理Lv3というスキル本来の値が反映され、立派な料理が出来上がる。

 ミニゲームであるため鍋に水を入れるという工程も省略されたのが良かった。普段ならスライムの粘液で煮込んでいる所だから。しかも毒手も無効である。


 さらには、『ベリーハード』のミニゲームをフルコンボクリア。

 レシピなしなのでタッチする判定が見えなくなるという状態だったのに。

 ……ゲームは得意なのだ、ナクラは。

 これはもう、ゲーム的に文句なしの一品ができる。できてしまう。できざるを得ない!


 かくして出来上がった『美味しそうなキノコスープ』……おお、素晴らしい。光り輝いてすら見える。これだ、これが本来の料理というものなのだ! しかもベリーハードをフルコンボでクリアしたことで、ナクラの料理Lvは4に上がったのである!


「ほぉ! こいつは美味そうだ! ナクラは料理が得意なんだな」

「まあね!」


 どの口でそれを言うか。いや、確かにこの『美味しそうなキノコスープ』はナクラが作ったのであるが、普段の料理と比べてみろよ。おい。なぁ。





―――――――――――――

【現在のナクラのステータス】


 名前 : ナクラ

 職業 : ヒーラー(Lv30)

 HP :215/215

 MP :240/240


 STR: 35

 AGI: 14

 VIT: 90

 INT: 60

 DEX: 15

 LUK: 15


 ボーナスポイント(残:53)


 スキル:

  光魔法 :Lv 1

  回復魔法:Lv 4

  火魔法 :Lv 1

  地魔法 :Lv 0(習得可)

  即死魔法:Lv 0(習得可)

  毒魔法 :Lv 0(習得可)


  料理  :Lv 4     備考:『ベリーハード』をノーミスクリア!

  毒吸収 :Lv 1

  錬金術 :Lv 5

  毒手  :Lv10(MAX)


 耐性:

  猛毒耐性:Lv10(MAX)

  苦痛耐性:Lv10(MAX)

  麻痺耐性:Lv10(MAX)

  酸耐性 :Lv10(MAX)

  呪い耐性:Lv 3

  火耐性 :Lv 3


 装備:

  ソードメイス

  神官服

  革のブーツ


 アイテム(ピックアップ):

  ボロボロの包丁    備考:ミニゲームが完璧だったので耐えられた

  ボロボロの土鍋    備考:ミニゲームが完璧だったので耐えられた


 称号:

 「ベテラン」Lv25を超えた

 「シャルロッテの知り合い」シャルロッテと知己を得た

 「百連死:毒」毒で連続100回死んだ。若干耐性が付く


 「イチストの救世主」フェンリルを撃破した証

 「ジャイアントキリング」大型モンスターへの攻撃力アップ

 「暗殺者」毒成功率がアップ

 「狼の天敵」ウルフ系へのダメージ超アップ

 「狼の王」Lv80までのウルフ系モンスターをテイム可能

 「魔の森のヌシ」『魔の森』の素材をどこでも自由に召喚できる(MP消費)


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