第21話 おあがりよ!(大激怒)



「できた! ナクラハンバーグNext!」


 あれれー? おっかしいぞー? シチューを作るとか言っていたはずなのになんでハンバーグ(のようなおぞましい固形物)が出来ているんだろー?


 どうせナクラのことなので固形物になるまで煮詰めたのだろう。固形物はナクラにとってハンバーグなのだ。きっとそういう定義だ。あと棒に刺さっていればつくね。



 さて、料理(?)が完成したものの、バッツとマールはまだ帰ってこない。


 仕方がない、先に作戦を開始しよう。

 ナクラは大きな葉っぱをもぎもぎして皿を作り、ナクラハンバーグNextを鷲掴んで乗せた。せめて箸を使え。一応料理は終了という扱いなので毒手も無効になっているが。


 ナクラは地の洞窟、その入口に瘴気の発生源を設置した。美味しいニオイが洞窟にはいるように大きな葉っぱで扇いで風を送る。毒ガスで皆殺しにする気だろうこれ。なぁ、そうなんだろ?


 と、しばらく待っているとペタペタと複数の足音が聞こえてきたので茂みに隠れるナクラ。様子をうかがうと、3匹のゴブリンが洞窟から現れハンバーグを取り囲んだ。


「ギィ!?」


 ナクラハンバーグを見て、ゴブリンAが鼻をつまむ。

 どうやらあまりにひどい臭いに臭いの元を断とうとおびき出されたようだ。料理でゴブリンをおびき出す、奇しくもその目的自体は成功したといっていい。


「ギィ! ギィ!」

「ギャギッ!」


 ゴブリンBが「みろよこれ、美味しそうなハンバーグだ!」、ゴブリンCが「よぉし食べようぜ!」とナクラは脳内でアフレコした。当然んなこたぁ無いが。Aが鼻つまんでるの見えないのかお前。茂みに隠れてて視界が悪いのか?


「フフフ、さぁおたべ……!」


 どこから出てくるのか分からない自信に満ちたナクラ。しかしゴブリン達はなぜか食べようとしない。いやまぁ、考えてみて欲しい。馬糞が葉っぱに乗って落ちていたら食べるだろうか? そういうこと。というか馬糞の方がなんぼかマシである、馬糞は葉っぱを溶かさないだろうから。


「ギィ!」


 と、ゴブリンがナクラハンバーグに土を蹴りかけた。あれだ、犬がトイレした後に砂や土を蹴りかけるような感じで。……なんということか、ナクラハンバーグに土がトッピングされてしまったのである。


「なっ……!?」


 まさにお似合いのこれ以上ないフリカケなのだが、これを見てナクラは怒った。


「食べ物を粗末にするなぁあああああ!!」


 茂みから叫びつつガサッと立ち上がるナクラ。その言葉、ブーメランでは? と思わなくもないがナクラにとっては正義だった。ナクラは怒りに任せてLv30の拳を振う。ゴブリンAは鼻をつまんでいた手が顔に埋まりHP0、ポリゴンと化した。


「ギ、ギィ!?」

「ギャギャギャ! ギャギッ!」


 突然の不意打ちアンブッシュにゴブリンはたじろぐ! いや、闇の森の主、ナクラの怒りの咆哮に怯んでいた! そんなテンポの遅いゴブリンたちに、ナクラは容赦なく――土のかかったナクラハンバーグを左右の手にひとつまみずつ! ちねってゴブリンの口にねじ込んだ!! なんたる悪夢か! 吐き気冷え性石化麻痺暗闇、そして毒のダメージがゴブリンを一瞬にしてポリゴンの屑に変えていく! Lv10の毒手を口に突っ込まれたというのもあるが、驚愕! その効果はハンバーグ単体によるものである!!


 ゴブリンAはまだ幸せだった。なぜなら、苦しまず死ねたのだから。


「おーい! ナクラ無事か!? さっきの声は!?」

「ナクラ? ゴブリンを倒したの?」


 と、そこに空気を読んでか読まずか、バッツとマールが戻ってきた。そしてナクラが拾った明らかにヤバい物質――ナクラハンバーグNext、With大地のフリカケ――を見て、2人は察した。


 なるほど、予定を変更して毒でゴブリンを殲滅する気なのかと!


 見事なAI! ナクラに最初の予定を変更したつもりが無い以外は完璧な推察である!


「……これを、片っ端から食わせてやる! ゴブリンに! ついてきて二人とも!」

「おう!」

「頑張るわ!」


 怒れるナクラを止められるものはどこにも居ない。少年少女は、すれ違いざまに毒を食わされ昇天するゴブリンを見て戦慄を覚えつつも、しっかりとナクラについていく。


 そうして奥の広間までたどり着くと、そこにはどうやって入ったのかと尋ねたくなるほど大きなゴブリン――ゴブリンキングが待ち構えていたのだが、全く問題なく毒殺された。取り巻きのジェネラルも吠えた口にひとかけらずつハンバーグを指弾射撃デコピンシュートされ死んだ。


 HPが多い分、ただのゴブリンより多く苦しんだのではなかろうか。ご愁傷様。


「……なんか俺達全く役に立たなかったな」

「本当ね。Lvは12に上がったけど」


 あまりにあっさり倒されたゴブリンキングを前に、ナクラはようやく落ち着いた。

 幸運にもハンバーグは丁度使い切ったというのもある。


「あまりの美味しさに昇天するとは……ふっ、罪な料理を作ってしまったわ」


 幸か不幸か、そんなナクラのうぬぼれた一言はバッツとマールに聞かれなかった。

 ナクラの脳内では、ゴブリンは邪悪な存在なので美味しい料理に浄化された設定になっている。なんというご都合主義脳。……せめてゴブリン達の冥福を祈ろうではないか。彼らの神に「うわっ近寄らんといてくれる?」とか言われませんように。




―――――――――――――――――――――――

【現在のナクラのステータス】


 名前 : ナクラ

 職業 : ヒーラー(Lv30)備考:ゴブリンキング狩ったけどLvは上がらず

 HP :215/215

 MP :240/240


 STR: 35

 AGI: 14

 VIT: 90

 INT: 60

 DEX: 15        備考:ちょっと上がった。

 LUK: 15


 ボーナスポイント(残:53)


 スキル:

  光魔法 :Lv 1

  回復魔法:Lv 4

  火魔法 :Lv 1

  地魔法 :Lv 0(習得可)備考:地の洞穴クリア報酬。素養を得た

  即死魔法:Lv 0(習得可)

  毒魔法 :Lv 0(習得可)


  料理  :Lv 3

  毒吸収 :Lv 1

  錬金術 :Lv 5

  毒手  :Lv10(MAX)


 耐性:

  猛毒耐性:Lv10(MAX)

  苦痛耐性:Lv10(MAX)

  麻痺耐性:Lv10(MAX)

  酸耐性 :Lv10(MAX)

  呪い耐性:Lv 3

  火耐性 :Lv 3


 装備:

  ソードメイス     備考:使えよ。折角買ったんだから

  神官服

  革のブーツ


 アイテム(ピックアップ):

  ボロボロの包丁    備考:ばかな。1回の調理で……!?

  ボロボロの土鍋    備考:ナクラの料理には耐えられなかったよ……


 称号:

 「ベテラン」Lv25を超えた

 「シャルロッテの知り合い」シャルロッテと知己を得た

 「百連死:毒」毒で連続100回死んだ。若干耐性が付く


 「イチストの救世主」フェンリルを撃破した証

 「ジャイアントキリング」大型モンスターへの攻撃力アップ

 「暗殺者」毒成功率がアップ

 「狼の天敵」ウルフ系へのダメージ超アップ

 「狼の王」Lv80までのウルフ系モンスターをテイム可能

 「魔の森のヌシ」『魔の森』の素材をどこでも自由に召喚できる(MP消費)


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