第26話 餌ァ!


 火の山は現在危険だということで封鎖されている。

 しかし、よく考えたらメインクエストを進めれば入って良い許可が出る程度の危険であり、Lv30にもなっているナクラにとってはさほど危険というわけでもない。


 実際に遭遇したモンスターも、戦えない程の強さではなかった。そりゃもちろん無傷とはいかないが、ゴブリンキングを倒しLv12になったマールで十分渡り合えた。ナクラのヒールも冴えわたっていた。


 そんなわけで、ナクラとマールは気軽に足を進め、火の山をある程度上ったところでテイムを試すことにした。


「あれ、でもそういえばナクラ、町でエサとか買ってたっけ?」

「え? ゴブリンの肉が残ってるし、現地で採取すればいいじゃない」


 またもや現地調達である。

 ナクラとしては、そもそもモンスターっていうのは現地にある食べ物を食べているのだから、町で買う必要もないという考えだ。そもそも余っているゴブリンの肉を消費するのが目的でもある。


 というわけで、ナクラは早速ゴブリンの死骸(1匹分)をその場に放り出し、放置した。

 物陰に隠れて様子をうかがうナクラ。……3分後、死骸はポリゴンになって消えた。


「あれ?……あ、そっか」


 システム的に廃棄されたアイテム扱いとなったらしい。となると、何かしら工夫する必要がある。


「えーっと、私、食べられそうなもの取ってこようか?」

「うん、またお願いできるかな」

「わかった。いってくるね」


 と、ここでマールが別行動でアイテム採取に向かった。

 一人残ったナクラは、工夫を考える。

 ……そうだ料理だ! とにかく料理しよう! そんなわけで、ナクラは特に何も考えずかまどを作り、『スーパー・リアリティモード』を起動した。


「たんたんとたたん、たんとんとん♪ おいしくなぁれ、おいしくなぁれ♪」


 おいやめろ、と止める奴は偶然にもいなかった。


  * * *



 そして、完成した『ゴブリンとその辺の草をぐっちゃぐちゃにまぜたスムージー』。

 ゴブリンのミンチだけならともかく、何故その辺の草を混ぜた? 草食動物にも配慮したの? じゃあ別々に出してやれよせめて! ナクラの毒手でむしった草は当然毒に侵され、このスムージー(と言い張る物体)は毒属性を持ってしまった。


 当然こんな代物にモンスターが「わぁ、なんて美味しそうなご飯だ!」と近寄ってくることはなく、むしろ距離を取っていくだろう事は想像に難くない。


 3分が経過する前に壊れた土鍋に入ったスムージーを回収する。そう、ついに包丁も土鍋も壊れてしまったのだ。予備の包丁や土鍋を買っておけばよかったと後悔するナクラ。


「ただいまー、って、うわっ」

「あ、おかえり」


 食材を抱えて帰ってきたマールは思わず「うわっ」とか言ってしまった。何故ならナクラがその手に毒物を持っていたからである。壊れた土鍋を再利用した入れ物は、ぽたりぽたりと気味の悪いしずくが垂れていてもはや器として不適格である。これ、大地が汚染されていくのでは?


「どうしたのそれ」

「エサにしようと思って、ゴブリンの死骸とかで作ったの」

「……なるほど!」


 マールは納得した。火の山ということは、つまり火山であり、そこには毒性のある煙が吹き出す箇所もある。そう言った場所を好む……つまり、毒を好むモンスターをテイムしようと『錬金術で』用意したのだろう! と。


 なにせナクラの『錬金術』はLv5。何故か・・・さっぱり分からないが、Lv3に下がった『料理』よりも得意なのだろうから。しかもマールの知るナクラの料理は、ミニゲームフルコンボで作った代物なのである! 故に、よもやそんな毒をナクラが『料理』で作ったなどとは露にも思わなかった。仕方ないね。


 ちなみに、ナクラは料理Lvが4になってから一度も確認していなかったので、特に気付かない。まだ下がってからも見ていない。もっと自分に興味を持つべきでは? 特に料理の腕前については他人としっかり比べて欲しい。


「それなら、丁度良さそうなところを見つけたよ?」

「え、本当?」

「うん! あっちの方!」


 マールはそう言って、食材採取の途中で見つけたおどろおどろしい毒沼の方へナクラを案内していった。




――――――――――――――――――――

【現在のナクラのステータス】


 名前 : ナクラ

 職業 : ヒーラー(Lv31) 備考:ここまでの累積でレベルアップ!

 HP :217/217

 MP :248/248


 STR: 35

 AGI: 14

 VIT: 91

 INT: 62

 DEX: 17

 LUK: 16


 ボーナスポイント(残:54)


 スキル:

  光魔法 :Lv 1

  回復魔法:Lv 4

  火魔法 :Lv 1

  地魔法 :Lv 0(習得可)

  即死魔法:Lv 0(習得可)

  毒魔法 :Lv 0(習得可)


  料理  :Lv 3     備考:あれ?(・ω・`) おかしいね。バグ?

 (※備考:行動により上がったLvは、行動により下がることがあります。

      ボーナスポイントにより料理Lv3が最低保証されているため、

      Lv0にならないのはバグではありません)


  毒吸収 :Lv 1

  錬金術 :Lv 5

  毒手  :Lv10(MAX)



 耐性:

  猛毒耐性:Lv10(MAX)

  苦痛耐性:Lv10(MAX)

  麻痺耐性:Lv10(MAX)

  酸耐性 :Lv10(MAX)

  呪い耐性:Lv 3

  火耐性 :Lv 3


 装備:

  ソードメイス

  神官服

  革のブーツ


 アイテム(ピックアップ):

  スムージー(毒)


 称号:

 「ベテラン」Lv25を超えた

 「シャルロッテの知り合い」シャルロッテと知己を得た

 「百連死:毒」毒で連続100回死んだ。若干耐性が付く


 「イチストの救世主」フェンリルを撃破した証

 「ジャイアントキリング」大型モンスターへの攻撃力アップ

 「暗殺者」毒成功率がアップ

 「狼の天敵」ウルフ系へのダメージ超アップ

 「狼の王」Lv80までのウルフ系モンスターをテイム可能

 「魔の森のヌシ」『魔の森』の素材をどこでも自由に召喚できる(MP消費)


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