第14話 電子書籍
結局1日目はレポート2を書いてから寝てしまい、メインクエストを進める事が叶わなかったナクラ――加古。そんな加古の下に、編集の田中さんから電話がかかってきた。
丁度Vコクーンに入る前だったので、普通に電話に出る。
『あ、もしもし、ばっこ先生。レポートいただきましたー、早速掲載しましたよ』
「お、ありがとうございます田中さん! 反響はどうですか?」
『いやー、まだまだ始まったばかりで認知度低いですからねー。アクセス解析してもほとんど公式サイトからのチェックですし』
「なるほど」
まぁ、昨日の今日でいきなり大人気とはなるまい。加古は当然と頷いた。
『そういえば先生はコメントとか掲示板とか見てますか?』
「えっ、いや、無理です。怖い」
加古は某通販サイトのレビューで自著がぼろくそに叩かれていたこともあり、エゴサーチとかそういうのが苦手なのだ。ツブヤキッターもやってない。そんなSNS時代の波に乗り遅れ、砂浜でヤドカリと戯れているのがお似合いな作家だ。
『あはは、そうでしたね。それじゃ、なんか面白いコメントがあったら教えますね』
「はーい、お願いします」
ちなみに田中さんは『オリジンスターオンライン』未プレイ勢であり、フェンリルのことは知らない。加古の担当だというのになんという怠慢か、おかげで加古はナクラの異常性に気づけない! とはいえ、編集さんの仕事もひとつだけではないし、担当している作家も一人ではない。むしろ他の人の仕事も多い中、加古というお荷物作家にブログの仕事を割り振れる有能編集であった。26歳独身、彼氏募集中のスーツの似合う女である。
『ああそれと、一度くらいオンライン要素も試してくださいよ? これ一応オンゲなんですからそっち方面もやってPRしてかないと』
「は、はい……がんばります」
ゲーム内でも知り合いはシャルロッテだけというボッチを煮詰めたようなナクラに、オンラインで他人と関われというのは酷ではなかろうか? なんという鬼編集、パンスト伝線しろ。
『あ、それとブログ担当してるもう一人の作家さんのフレンドコード渡しておきますね』
「ああ。私だけじゃなかったんですね」
『我が社からは2人参戦してますね』
と、メールでフレンドコードが送られてきた。あとでゲーム内で登録しておこう。祝、ボッチ脱却!
「ちなみになんて人です?」
『カルマスキルオンラインの
「……すぐに読ませていただきます!」
電話の後、加古は即行で電子書籍をポチった。どうやら『オリスタ』に入る前に、この全5巻の作品を読むべきである。なにせフレンドになるのだから!
仮に竹林先生のアバターが作品のキャラに似せてた場合、「へぇ、○○と似てるね!」と返せなかったら気まずさで死ぬ。ぼっちは気まずさで死ぬのだ!
まぁ逆に加古も「うちの子に似せてみました! どお?」って言って「え、知らない」とか返されたら恥ずかしさで死ぬ。作家的に自意識過剰で死ぬのだ!
そんな死亡フラグの多いぼっち作家、名倉ばっこ。故にそのチキンハートは生存フラグを求めて話題を仕入れる方向へと爆走する。なにせ作家の話題といえば自作品の事以外にあり得ない。(サンプル数総勢1名、名倉ばっこ)
加古はVコクーンの快適なシートに座り、電子書籍アプリを起動してVR読書空間へと没入した。フルダイブVR読書空間はやはり現実と2倍の速度差があるため、実質半分の時間で読書することができる。しかも現実の本と同様の装丁で本が読めちゃうのだ。
おまけに(腹は膨れないし喉も潤わないが)ドリンクバーもあって漫画喫茶みたいな快適読書空間になっているのだ。技術の進歩ってすげー!
……おかげで紙の本の売り上げがガクッと落ちたけどね! もちろん、加古の本も……
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