第31話 謁見



 決してナクラを置いてけぼりに盛り上がったりしない優しい2人との会話を弾ませ、今度料理をご馳走する約束をしたところでタイミングよく王城へと到着した。


 オイ門番、いますぐその金髪ロリ巨乳を止めろ。そいつは毒物を隠し持っているしそもそも頭の上に毒生物を載せているぞ!


 と、シャルロッテの顔パスですんなり通過! 当然だ、アポはある!



 馬車を降りてそのままシャルロッテに案内されてマールと共に石造りの城の赤絨毯を歩いていく。……あっちが居住区エリアで、王女がいるんだな、と、ナクラは昨日の夜に見た動画を思い出しつつ、決して突然飛び出すこともなく、しかしスクリーンショットは折角だから撮りつつシャルロッテの後をついていき――そして謁見室までやってきた。


 ああ、どうしよう。何事もなく『料理』がデリバリーされてきてしまった。注文してもいない劇物をお届けとか、単にテロである。本人に一切悪気がないのが腹立たしい。



「マレビト、ナクラとその仲間をお連れした! 御目通り願いたい」


 シャルロッテの凛々しい言葉に謁見室の門を守る兵がこくりと頷いて扉を開ける。そこには玉座に座った王と宰相が待ち構えていた。


「あわわ、王様だ……!」


 マールにとっては天上人。小声で慌て、ナクラの服のすそを摘まむ。一方でナクラは『いかにもな王様!』ってことに少し感激してスクリーンショットを撮っていた。


「そちが、ナクラであるか」


 王から声を掛けられる。


「そうだけど」

「ふむ。ゴブリンを倒したとの事であるが、証拠はあるか? 死骸があれば見せてもらえぬかな」


 ナクラの無礼な物言いにも動じず温厚な感じに尋ねられる。王は人間が出来ている。きっといい王様なのだろう。ナクラはインベントリを開く。

 そういえばゴブリンキングの死骸を入れっぱなしにしていた。そして、ゴブリンキングの写真を見せて欲しいと言われていたんだっけ。と、ナクラは思い出した。


 面倒毎はさっさと済ませるに限る。ナクラはぽんっとゴブリンキングの死骸を謁見の間にどぉん!と取り出した。


「こっ、これは!! 王よ、これはゴブリンキングにございます!!」

「ふむ。思っていたよりも事態は深刻であるようだ……ナクラよ、よくやった。何か褒美を取らせよう」


 と、ここでナクラの目の前にぽいんっとウィンドウが出現。褒美候補の目録のようである。……携帯錬金釜や、それなりに高価な店売り武具等、結構な品揃えである。

 おっと、スクリーンショットを撮るのを忘れていた。せっかくなのでナクラは目録、ゴブリンキング、王様を揃えてパシャリと撮った。


 さてさて、それでは落ち着いて褒美を選ばせてもらおう……といっても、ナクラにはその価値があまり分からない。はて如何したものか、と豪華な目録を前に首をかしげる。

 豚に真珠、猫に小判、そこに自分に褒美目録も加えてしまおうかと思ったが、ふとシャルロッテが目に入った。


「シャルさん、どれ選んだらいいと思う?」

「ん? 私の意見を聞きたいのか。いいだろう、見せてくれ」


 分からないなら詳しい人に聞いてみよう! とても賢い選択だ。しかも相手はチュートリアルお姉さんのシャルロッテ。きっと適切にアドバイスしてくれるはず。


「ふむ。たとえばこの快速の護符、というのは足が速くなる――が、PTメンバーはそのままだったりする。とはいえ足に自信が無いならこういうのでも良いだろうな。こっちの携帯錬金釜なんてのも良いだろう。どこでも錬金術ができるようになる」

「ほうほう……あ、料理に使えそうなのとかありますか!」

「料理に? となればこれかな」


 と、シャルロッテが指さしたアイテム。それは、携帯コンロだった。

 携帯錬金釜と同様、本来は野外で料理するならこういうアイテムが必要となる。

 例外は『スーパー・リアリティモード』だ。(ちなみにミニゲームかつ一般家屋の屋内であれば、その家のキッチンを借りた判定になる)


「へぇー、コンロ! これって使い捨てだったりしませんよね?」

「ん? 普通の包丁と同じくらいには長く使えるんじゃないかな」

「あ、じゃあいいです」


 1回2回で壊れるなら河原の石でかまどを作って使い捨てで十分だろう。と、ナクラはあっさり切り捨てた。折角のご褒美で貰うならもっと良いものが欲しいので。

 ……いや、普通は長く使えるんだけどね。まぁナクラならどうせ使い捨てになるだろうからある意味賢明というものだろう。


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