第4話 最初の拠点、イチスト
「とう!」
シャルロッテに見守られつつ、ヒーラーの初期装備「初心者のメイス」でプルプルとした水饅頭、スライムをぶん殴って倒すナクラ。そう、戦闘チュートリアルである!
「そうだ上手いぞ。習得が早いな!」
「えへへ、ありがとうございます」
「モンスターの素材は回収しておくといい。倒したモンスターを指さして『回収』と言うんだ。……うむ、いいぞ。やはりナクラは筋が良いな」
「うへへへへ」
ちなみにこのチュートリアル、βテストでも大人気だったらしい。
なにせ美人のお姉さん――シャルロッテが、すっごい褒めてくれるのだ! ナクラもその褒め褒め攻撃に乗せられ、まんまといい気分になっていた。
「筋が良いのはマレビトだからか? いいや、きっとナクラだからだろうな」
「でへへへ」
マレビトというのはこの世界におけるプレイヤーの立ち位置。異なる世界から降り立った人の事を指す。
数十年に一度、そういう事があるとの事。シャルロッテがあの場所に来たのも、その予兆を検知して様子を見に行ったから。
なるほど、シンプルで分かりやすい設定だ、とナクラは感心した。フルダイブVRはまさに異世界転移。一々メタいチュートリアルがなければ本当に異世界に来てしまったのでは、と思えてしまう程だ。
そんなこんなで今は『聖なる森』を抜け、シャルロッテと共にプレイヤー最初の拠点となる町、『イチスト』に向かっている。ネーミングセンスから逆算して、1st。ということは2ndがあるのだろうかとナクラは予測した。βテストではイチストだけだったらしいが。
ちなみにゲームが始まった――最初に遺跡に降り立った時点で、プレイヤーは自由である。
最初の場所で餓死するまで動かないのも自由。
チュートリアル、シャルロッテを無視して急いで町に向かうこともできるし、なんならシャルロッテに不意打ちを仕掛け殺害することだってできる(この場合は通称『
まぁナクラは初心者であるので、しっかりチュートリアルを受けつつ、イチストに向かった。
「ここがイチストだ」
そして、町に着いた。のどかな平原にある、5mくらいの外壁に囲まれた町。それがイチストだ。門の中を覗けば、そこにはヨーロッパ風ファンタジーなレンガや木造の建築物が並んでいた。馬車も走っている。少し遠くの方に城も見えた。……壮観なのだが、あの城がパイタッチRTAのゴール地点と考えると、少し複雑な気分にもなった。
「良ければ城下町を案内しようか?」
「あ、いえ、自分で見て回ろうかと!」
「そうか。では最後に目ぼしい店と、私の所属する騎士団の詰め処の場所を教えておこう。マップを開くには、メニューコンソールからマップを選択……そうだ。やるじゃないか。ではマップに情報を追加しておくぞ」
と、シャルロッテはやはりメタい説明を交えつつチュートリアルを終えてくれた。マップに数か所のチェックが付く。
「平時であればマップからチェックされた箇所へワープできるぞ。まずは冒険者ギルドに行くといい。私に用があれば領主騎士団を訪ねてくれ。大体そこにいるから」
「シャルさん、ありがとうございました!」
一応、ナクラが案内を断ったのには理由がある。
実は今日、VR時間であと2時間くらい後に『基底世界』――オンラインの共有ワールドでオープニングセレモニーがあるのだ。
シャルロッテの案内は捨てがたかったが、間に合わなくなってしまう可能性があるので断らせてもらった。仕事でやっているのだからこれは押さえておきたい所である。
シャルロッテはカッコよく右手を上げて去って行った。
尚、『チュートリアルお姉さん』ことシャルロッテは、頼めばいつでも気軽に町を案内してくれる。後日、改めて案内を頼もうとナクラは思った。
……騎士団の副団長という立場らしいのだが、余程暇なのだろう。
「いやー、それにしてもあれがネームドAIってやつか。凄いなー。……これ、会話トレーニングになるねマジで。あっ、これは絶対書こう! シャルさんマジ素敵!」
ふと仕事でここに来たことを思い出したナクラ。このことは絶対に記事に書くしかない。
「さて、それじゃあ冒険者ギルドへ行ってみようかな!」
ナクラはシャルロッテとの会話の余韻もそこそこに、冒険者ギルドへ行くことにした。
――――――――――――――――――
【現在のナクラのステータス】
名前 : ナクラ
職業 : ヒーラー(Lv3)
HP : 22/22
MP : 60/60
STR: 8
AGI: 3
VIT: 7
INT: 15
DEX: 3
LUK: 6
ボーナスポイント(残:6) 備考:攻略情報出るまでとっておこうかな?
スキル:
光魔法 :Lv 1
回復魔法:Lv 2
耐性:
呪い耐性:Lv 1
装備:
初心者のメイス
初心者の服
初心者の靴
称号:
「ルーキー」始めたばかりの初心者。Lv10で解除。デスぺナ軽減
「シャルロッテの知り合い」シャルロッテと知己を得た
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