第19話:新人戦大会③
記念勢GGG高校の中で突出し強かったのは先鋒。
奮闘したのは大将。二勝三敗。
順当にDDD高校が勝利を収めたが、内容は芳しくない。いや、優勝候補から外れてしまう程には致命的なダメージを負った。先鋒が一枠削られてしまってから。
二枠対三枠。数的有利が取れるだけでなく、残った魔物も良くなかった。後衛の支援を欠いた状態であるからだ。
他との二枠対決なら……といったレベルだが、優勝候補に挙がってくる名のある高校はその手のミスはほとんどしない。
—――――――――らしいよ。
観客のお喋りな男性—―――いや、新人戦大会に詳しい人が今までの統計だとか、色々と能書きを垂れてくれたので聞き耳を立てさせてもらった。
俺自身、前世ではこういった大会には出た事がなかったので、情報が無いに等しい。なので地味に助かっている。
(てことは、他の優勝候補達はちゃんと引き際を弁えれるだけの判断力と冷静さは持ち合わせてるってことか。)
それは、つまり。
今回の新人戦大会—――DDD高校は質が悪かったのかもしれない。
「続いて――――A高校vsF高校の試合を始めます!第七会場へ――――。」
次は、俺達か。
F高校も記念勢ぽくみえる。
ただ、此方も記念勢ぽくみえる。
だから、みた感じ……で慢心して挑むのは良くないだろう。
「続いての試合—――――今大会ダークホース筆頭—―――先鋒を飾るのは―――――――そう!千堂ぉおおおおおおおおお秋ぃいいいいいいいい!!!!そして、プルプルと震えているのは~、な――――――んてえtt……可愛げのある少女ことか。その名も――――目黒愛――――!!!ああ、彼女は見た目通り捕食されてしまうのか?!かの邪知暴虐な君主に!!!五連勝を成した覇王に!!!!」
邪知暴虐とかメ〇スですか?!ええ?!そんなこと面と向かって言われたことないんですけど?!
ふざけやがって。でも後に有名になるであろうマイチューバーの印象に残っておいて損はない…か。
俺は苦笑いを浮かべながら、闘技場に上がる。
「それでは、—――――――試合開始!!!」
敵は、E級ホブゴブリン。F級天使。E級ゴーレム。
初心者が頑張ってF級迷宮をクリアしたって所か。
正直、E級迷宮の雑魚と同レベル程度に見える。
「ホブゴブリン!《仲間》を呼んで!!」
目黒女史がそう叫ぶと、ホブゴブリンが角笛を吹く。
すると、四体のゴブリンが出現した。
これがゴブリンの強み。
ゴブリンを純粋に進化させると、こうやって軍団を形成するのだ。
「ホブゴブリンの相手は、鬼。お前に任せた。」
「御意。」
俺は鬼に命令する。
多対戦に慣れた鬼が適任だと判断したから。
ゴーレムは、ピノキオに。天使はリリエルに。
「実は、マスターはEカップのオンナ好キ!!キット、お前のテイソウ狙ッテル!!」
「ひぁ?!」
見事。ピノキオは《噓つきは力の源》を発動させながら、敵マスターの動揺を誘った。
あの子は、Eカップはありそうなボインちゃんだった。
俺が、敢えて彼女の特徴について何も触れなかったと言うに。
だがな、それと引き換えに俺は色々と失いかけてるぞ?
「ピノキオ、一撃で決めろよ……?期待してるぞ?」
「ヒィ?!ド、ドウシタ?!マスター、オイラ、ガンバルカラ!!」
笑顔を取り繕っているけど、精神は繋がっているので、俺の脅迫めいた心情が伝わったに違いない。
思わぬ命令で、ピノキオが集中力散漫、挙動不審になりかけたものの―――、バフを得たピノキオはゴーレムに向かって突撃する。
「—―――――ゴォオ……!!」
正面からの袈裟斬り。
ただでさえ強い攻撃力が一段階上がっているせいで、ゴーレム自慢の耐久と生命力は意味を成し得ず―――。
鈍重なゴーレムはバターのように溶けて消えた。
「いやぁあああああ!!?」
悲鳴だ。一撃で屠られた彼女は、その痛みもじわじわ……ではなく一瞬で身に襲ってきたのだろう。
腰が砕け、尻もちをついている。
遠くだから分からないが、近くに寄ればその隙間からパンチラしてしまうのではないか―――――。
俺は初対面ではあるが彼女のパンツを守る為、速やかに終わらせてやることにする。
「リリエル、遊んでないで。速射しろ!天使を射貫け!!」
「…あい。」
「鬼、薙ぎ払え。防御を捨てろ!!!」
「……御意!!!ヌオオオオオオオ!!!!」
「—―――まっ。やめ!!!」
セコンドから白いタオルが投げかけられる寸前。
火力全振り、脳筋みたいな苛烈な攻撃に切り替えた俺の命令の方が早かった。ホブゴブリンと天使はあっけなく全滅した。
彼女は意識を失ったみたいだ。
(ふう、何とかパンツは守ったぜ?感謝してくれよな。)
「—――――――――――試合終了!!!またまた全滅!!!恐ろしいですね!!!千堂選手!!!完勝です!!リタイヤは間に合わず!!!千堂選手の魔の手に墜ちたぁ―――――――――――!!!!」
人聞きの悪い言い方するなよ。普通に勝ちでいいじゃないか。
「続きまし―――――ええ?!?!な、なんと新人戦大会始まって以来かもしれません!!!棄権するそうです!!!次鋒、中堅、副将、大将の四名!!!千堂選手の恐ろしさに心がへし折れてしまったか――――――!!!!!」
嘘だろ……。
「—――――というわけで、一勝と不戦勝の四勝で、千堂選手、十勝を成し遂げた――――――!!!!すごいですね!!!おめでとうございます!魔王様!!!」
不敬ぞ!!!魔の王は!!!せめて、人間の王であれ!!!
「ははは……。では?失礼します。」
俺は自分の仲間が待つ場所へ――――控室に戻る。
「アキ君……容赦ない。」
ぶるりと肩を震わせたのは俺の彼女、遥だ。
俺は衝撃を受けた。彼女がちょっと引いていたから。
「あんなボインちゃんに……俺は恐ろしいぜ……。」
そんなことを漏らしたのはチームメイトの宮前君。
「あたし…あなただけは敵に回さないと誓うわ。」
藤井さんからは畏怖と尊敬がない交ぜになった宣誓をされる。
「いや、みんなが敵になる事なんてないでしょう?」
「なんか、千堂君の敬語が―――、その物腰柔らかな口調に聞こえるのにやってることは猟奇的過ぎて……ウチちびりそうだわ。」
応援に来てくれてた女子生徒からはそんなことを言われる始末。
「千堂君、圧倒的な勝ちは見ている者に安心感を与えますが、可愛げはありません。そこには畏怖や憧憬といった、強い、感情を相手に抱かせるものです。みなさん悪気があって、言ってるわけではありませんからね?」
唯一、賀茂川先生がフォローしてくれてる。
分かってくれるか、先生。
「分かってます。僕は、この調子で頑張るだけです。」
「……え、ええ。頑張って下さい。応援してます。」
詰まる所、俺にもう少し、手を抜いた戦い方はないのか?と暗に告げたのだが、俺は脳筋。その手の回りくどい言い回しは彼女に少しばかり引かれた俺の精神状態では気付けるはずもなく。
「—――――――では、SS高校と、DDD高校は第七会場へ、お越しください。次の試合を致します。」
俺のせいで、第七会場だけ、異様に早いペースで予選試合が行われることになった。
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