第20話:新人戦大会④
「—――――――では、SS高校と、DDD高校は第七会場へ、お越しください。次の試合を行います。」
俺のせいで第七会場だけ、異様に早いペースで予選試合が行われている。俺が戦った相手が漏れなく全滅しているので試合数が純粋に減っていることも一因となっている。
魔物の体力は闘技場を一歩出れば、戦闘不能状態に陥っていない限り、全回復する。
だが、マスターである人間はその限りではない。
ダメージは精神に蓄積され、確実に指揮する能力が低下する。
これは避けられないとはいえ、本来はもっと休憩時間が与えられるものだ。休憩が碌に取れない第七会場は異例であり、異質な戦いを強いられている特別な会場となっている。
SS高校は先鋒、次鋒が既に全滅なので、必然的に二敗からのスタートだ。そしてDDD高校は先鋒が一体欠場状態――二枠の魔物のみで戦うことになった。
その結果――――
「勝者—―――、SS高校中堅水沢みどりぃいいいいい!!!!A高校千堂の前では臆して棄権しましたが、その実力は流石!中堅!!中々に手堅い攻防を見せてくれました!一枠欠いた状態での尖った攻撃スタイルを見せてくれたDDD高校先鋒・荒井大樹くんの健闘にも拍手!!!!」
不戦敗分を除いた初戦はSS高校の勝利となった。
有力高校と言えど、三パと二パでは差がある。
これを覆せるのは相当な実力がなければ不可能。
DDD高校の先鋒は、相手が二パでない限り、このまま負け続けるだろう。つまり、俺の敵ではない。もう無視していいだろう。
「SS高校、水沢さん。どうしますか?続投しますか?!」
「いえ、副将にお任せします。」
どうやら一戦終えて、降りるらしい。勝ち抜き戦なのでチームで五勝すればいいのだが、既に2敗スタートなので、勝つには二勝:二勝:一勝か、一勝:三勝:一勝か、一勝:四勝、俺みたいに全勝スタイルをやるしかない。
これは、副将と大将で二勝ずつ取る作戦か?
それとも無理のない範囲での戦いをするのか。
「—――DDD高校、次鋒・脇田
DDD高校はE級電々鳥、E級泥人形、E級ミノタロス。
安定感のある魔物達だ。スピードアタッカーの電々鳥。
電気を身に纏った飛行型魔物。空中戦が得意だ。
初期個体値ではリリエルよりも上。
かなり人気の魔物である。
泥人形は盾役だ。
増殖型なので、一体一体の能力値は低いが、五体
こいつは人気が高い……とは言えない。
純粋にマスターが受けるダメージが大きいからだ。
精神が繋がっている以上、一体やられれば20パーのダメージを負うという事。中堅クラスの探索者からは、人気が高くなるが初心者が扱うには少しばかり荷が勝ち過ぎている魔物である。
脇田天音選手が泥人形を扱えるだけのマスターなら、相当な手練れであるに違いない。
ミノタロスは耐久パワーアタッカー。
人気魔物の一体である。
F級迷宮のボス周回で紹介したからもう十分だろうし割愛する。
対するSS高校はE級
雪紅葉がバランスアタッカー。
雪と紅葉で身体が構成されている。関節部が雪、皮膚や筋肉が紅葉から成っている。人っぽくもみえるし、精霊っぽくもみえる。
コロポックルは、五センチほどの小人。
ぶっちゃけ、この距離だとモニターで拡大されてないと見えない。魔法に長けていて、初期から回復、攻撃、防御系の魔法が使える。この魔物もミノタロスと同等の価値のある魔物だ。
見た目の愛らしさを鑑みると、コロポックルの方が高値がついたりする。
大樹は、巨木群。
根を張って、地形そのものを陣に変えて戦うスペシャリストだ。超長期戦のボス戦ではかなり重宝する。こいつがタンクなら死なないまである。食料や水を生み出し、敵の生命力を吸い上げる。
火に弱すぎる事とコイツ自体の攻撃力が非常に弱い事にさえ目を瞑れば…こいつがいればE級迷宮内なら、どこでも安全地帯になる。初心者を安全に脱却するならこの魔物だろう。
「—―――――――それでは、始め!!!」
闘技場のような範囲が限られている空間では大樹が活きてくる。あっという間に根を張り、全域を掌握する。
闘技場は、瞬時に森林地帯に早変わりする。
森林から唯一脱する事が出来たのは、電々鳥のみ。
泥人形とミノタロスは飲み込まれた。
だからといって、死んだわけではない。
この森林にいる限り、体力は吸われ続けているが、それは1ダメージの継続ダメージって感じ。
ミノタロスが木を薙ぎ払う。
大木の内の一本に深く斧が刺さっている。
倒れはしないみたいだ。
攻撃力が不足しているっぽい。
傷ついた木は治り始めている。
大樹の耐久勝ちだ。
育成的にはSS高校の方が進んでいるみたい。
森林の一部が光る。魔法エフェクトがみえた。
これはコロポックルの攻撃だろう。
紙耐久のコロポックルなら、当たれば一撃だろうけど電々鳥もミノタロスも居場所を炙り出せない。
かなりの連携だ。
戦闘はかなりの長期戦となって、SS高校の勝利となった。
脳筋パーティーには堪える搦め手作戦だった。
敵ではないな、と感じた。
俺なら、長期戦は長期戦になり得ない。
ピノキオのバフは3段階だし。
狙撃手のリリエルからしたらコロポックルなんて相手にならない。ごり押しで倒せる範疇だ。
相手も分かってたから戦いを挑んでこなかったんだろうけど。
「—――SS高校、安藤選手は続投ですか?」
「—――いえ。大将に変わります。」
時間は掛かったものの、被害は軽微。続投と思ってたけど……ああそうか。
俺は対戦相手を思い出して、納得した。
「では、DDD高校は中堅、
—――――燃山の魔物は火属性だった。
名前の通り、E級火鳥、D級火炎狒々、E級アルマージ。
これは燃やされて終わりだ。
天敵だったわけだ。
大将の方は、D級ロックゴーレム、E級
ロックゴーレムは
鉄鼠は物理反撃型アタッカー。
ジュエルアーマーは鉱物の原石で出来た鎧型の魔物だ。
アーマー系の魔物で他の魔物と合体する事が出来る。
純粋に戦闘力を引き上げる事が出来る希少な魔物だ。
ロックゴーレムが、槍を取り―――――。
自動盾—―――ジュエルアーマーの守りも得た。
ただでさえ、耐久のあるロックゴーレムは攻撃力とリーチも得て、要塞と化した。
面白い戦いだったが、SS高校の大将が勝利を収めた。
だが、DDD高校の副将、大将と連戦をして、流石に敗北を喫した。
DDD高校は削る作戦だったのだろう。
誰も魔物を欠かすことなく、終始落ち着いてダメージを稼いでいた感じだ。
副将で仕留めることも出来ただろうけど、敢えて大将迄もっていった感があったし。
この善戦っぷりを見て、SS高校は普通に強かった説が浮上した。観客からは「千堂と当たってなかったら、2位もありえたんじゃねえか?」なんて声も聞こえてくるくらいに。
正直、俺もそう思った。
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