第21話新人戦大会⑤

『次の試合は―――A高校vsGGG高校です――――選手は第七闘技場迄お越しください――――。』


 アナウンスが流れる。

 僕達が戦ってないのはGGGとDDDだけ。

 どちらも勝つのみ。

 叩き潰して見せる。


 意気込みを十二分に、闘技場へ向かう。

 先鋒は勿論、俺。


『大魔王千堂秋と相対するはDDD高校先鋒戦で大健闘をした――――斎藤はじめぇ――――――――!!!!GGG高校きってのエースは果たして魔王に一矢報いることは出来るのかぁ――――?!』


 魔物の質の差が明らかで、司会進行役の次代の大物マイチューバ―の綾瀬は俺が勝つことを確信した言い方をしている。

 魔王呼びは健在か。


 GGG高校先鋒はE級デーモンラット、D級死霊の騎士、F級イビルラットだ。

 そして戦い方も知っている。

 小細工が上手い、でも圧倒的ステータス格差を覆す程のチカラはない。


『では―――――――はじめ!!!!』


 俺の初手の動きは変わらない。

 ピノキオはバフを。

 鬼は敵のタンク役にぶつける。

 大量に湧いた鼠はリリエルが全敵対象を可能とする攻撃魔法マルチレーザーを放ち、分身体を悉く破壊。

 威力が落ちようが、格差の上では無意味。

 分身体は一撃を耐えるだけの体力も耐久もないようだ。

 鼠達の本体は丸出しになる。

 通常攻撃―――速射が鼠たちを狙う。


「……《速射ラピットファイア》」


 リリエルがぼそっと呟く。

 次いで、撃ち込んだ矢が薄赤く発光している。

 イビルラットとデーモンラットはトドメ刺された。

「なっ……ぐぅぅ……!」

 まだ体力的余裕があっただろうから油断したのだろう。

 俺自身もただの攻撃が、スキル化するとは思っても見なかった。失礼な話だが、これと言って成長出来るような戦いではないだろうな―――経験値の質が悪いだろうし。って思ってたから。


 思いも寄らぬタイミングでスキルの誕生だ。

 

 リリエルが此方を見ている。

 精神が繋がっているから分かる。そわそわむずむずして、何かを期待しているこの感じ―――。

「凄いぞ!ウチのリリは最高最強!」

 試合中だけど、褒めた。

 リリエルは満足そうに戦線に視線を移す。

 火力不足のせいで雑魚処理系に回されがちだったから、二キル取った彼女は今回のMVPである。

 褒めて欲しいと思ってもしょうがない。

 魔物と言えど、一人格を有しているから。

「えーズルイ!オイラもホメテ貰ウンダ!」

 死霊の騎士の背後に回ったピノキオが一撃を与える。

 鎧は砕け、死霊の騎士が消滅する。


「ピノキオえらいぞ。もちろん鬼もね。」

「ヤッター!」

「……有難き言葉。」


 無邪気に喜ぶピノキオと照れる鬼。


『簡単に討ち取ったぁ――――――!!!!流石千堂選手!!!いやぁ全体攻撃手段が実に強力ですね!普通はランクが圧倒的に離れてでもない限り、こうもあっさり分身体はやられなかっただろうにねぇ?それに不意を打つスキル攻撃でヒットポイントの管理を狂わせたあっという間の制圧劇!スキルの全てを見せずに温存していたって言うのも大きいですね!強者が隠し玉を持っているとこれ程カードを切った時に強いのかっていうのが分かる試合でした!!!完封された斎藤選手—―?あ、気絶してましたね!!担架急いでぇ――――!!!』

 

 担架で運ばれるGGG高校斎藤選手。

 

『続きまして、次鋒—―――平蜜さん!闘技場へどうぞ!!』


 ……。

 出てこない。

 向こうの控えでは何やら協議中のようで、生徒と先生が話し合っている。

 

 (こりゃ、また不戦勝か?)

 その可能性も捨てきれない。


『どうしたんですか?次鋒の平選手は不戦でしょうか?闘技場に上がってこないなら、千堂選手の不戦勝とさせていただきますよぉ?』


 司会進行役のマイチューバー綾瀬から催促が入る。


「すみません。我々はA高校との戦いを棄権します。」


『おおっと?!では、A高校は3勝0敗という訳でですね!残すところDDD高校のみ!一応、DDD高校も2勝0敗と負け知らずの高校が残りました!ただ、中身は15勝0敗と2敗3敗の計5敗してますからね。圧倒的勝ちっぷりを見せてくれているA高校に完全敗北という名の泥をつけさせでもしない限り、キビシそうです。今回は総合的に鑑みて予選を突破するのはA高校となりそうですね。』


 このアナウンスを訊き、観客の大半は第7闘技場から出ていく。なぜならそれは、DDD高校先鋒の荒井選手が5枚抜きしなければならないという事なのだ。

 2枠しか残ってない荒井選手が……そもそも荒井に勝ったGGG高校の斎藤を完封した相手せんどうに荒井選手が勝てないと思うのは道理である。

 

『続きまして、DDD高校vsA高校となります――――。A高校の皆さんは連戦になりますが、ご了承下さい――――。』


「待て。我々は棄権する!!!」

 どうやら、試合を観ていたDDD高校は心が折れたらしい。

 千堂を討ち取れるわけがないという事で、戦う事を止めたようだ。まあ魔物を24時間使えなくされるくらいなら、その分鍛えた方が建設的である。


『—―――――では!第七闘技場の予選突破校はA高校となります!!!残りの試合は、思い出作りに参加もありですし、そのまま止めて頂いても構いませんので!と、り、あ、え、ず!DDD高校vsF高校ですね!上がって下さい――――』


 俺達の予選は、最終校に至っては、戦わずして終わったのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る