第24話:新人戦大会⑧


「上治先生!いらっしゃったんですか!!どうぞこちらに!!」

「貴様がアタシの敵……?」

「……。」

「いやあ、先生も大会に出場されてると聞いて、すぐに応援に駆け付けたんですが、今は休憩中だったみたいで!聞きましたよ!個人6連勝中らしいですね!快挙ですよ!凄いです!!上治先生の奮闘のお陰で、控えメンバーが無理のない戦いをしているみたいで安定した戦術が評価されているみたいですよ!流石です!順当にいけば12連勝するんじゃないかって噂にもなってましたよ!」

「アキ君を誑かした魔性の男……?」

「……。」

「ああ、早く先生の戦いっぷりを観たいです!わくわくが止まりませんよ!!!」

「アンタとだけは仲良く出来そうにないわ!!」

『どうどう……。』


 一人はマシンガントークを炸裂させ、一人は勝手に恋敵認定……からの敵対心を募らせ、第一闘技場最有力優勝校と噂されているM高校の上治と周りの人間を引かせているのは俺と遥。

 俺と遥が余りにも興奮しているものだから、一緒に鎮静化させようとしているみたいだ。

 流石の俺も雪村女史と板倉が大人しすぎたので、気づいた。

 上治先生が無口なのは知っていたから気にならなかったが、隣から遥が腕組して抱き着いており、ぼそぼそと何か言っているのも気づかせてくれる要因だった。

 雪村と板倉は学友の見てはいけない一面に触れた気がして何とも言えない複雑な気持ちになっていた。それと同時に、似た者同士アキとハルカがくっついたのだな、と二人は納得した。

 

「ん?遥?」

「えへへ。」 


 よく分からなかったが、取り敢えず彼女が甘えているみたいなので、頭を撫でておく。

 すると愛らしい笑みを浮かべて、遥は俺を見つめてくる。

 やはり甘えたかっただけのようだ。

 昼食時も、一緒に居る時間がどうとかこうとかいってたしね。

 俺のマシンガントークは遥によって、遥の敵対宣言?は俺とのいちゃいちゃによって、謀らずとも勝手に終わりを迎えた。


「千堂、お前達も出場してるのか?」

 

 今まで寡黙を貫いていた上治先生が俺に質問を?!


「はい。僕は第七闘技場のブロックでしたが、無事予選突破出来ました。先生の隣にいる板倉が次鋒で、その隣にいる雪村さんは応援ですがね。因みに僕は先鋒、彼女の遥は大将を務めております。」

 

 俺は出来るだけ丁寧に、質問以上の事も答えた。

 座り順は遥、俺、上治先生、板倉、雪村さんの順だ。

 試合はまだ中盤と言った所で、まだまだM高校の出番は回ってこない。

 

「それじゃあ、その、は……いや、お前の彼女は大将を務められるほど強いのか?」

「?そりゃもちろんですよ。ね、遥。」

「アキ君には負けるけどね?」


 どうやら千堂が認める程には彼女のハルカとやらも強いらしい。何故だか異様に慕ってくれている千堂が俺を騙す訳もない。

 訊けば第七闘技場の予選突破しているらしいし実力は確かだろう。上治は自分達の高校が予選突破する事に対して何も疑ってはいない。それ故に強者との戦い―――千堂達と戦う事が出来ることに少々気持ちが高揚していた。


「上治先生、何か嬉しい事でも?」

「……?!いや、気にするな。」

「?」

 

 憧れの強者の言う事に従うものだ。

 気にするな、と言われたので気にしないように努めた。

 

 俺達は、本戦で当たる事も踏まえて、お互いの魔物についての話は触れないようにした。

 上治先生の手の内は後二校でしっかり分析できるので、不平等感もあるが、俺の中での上治先生はS級探索者である。

 上位者であることを疑っていないので、そのくらいはハンデだと思ってもらう。

 もしかしたら、第七闘技場で俺の戦闘情報は筒抜けかもしれないけど。


『—――続きまして、M高校—―――、O高校の皆さんは――――』


 ただ喋っていただけなのだが、楽しい時間はあっという間に過ぎ―――、上治先生は出番の為、試合の準備をしに俺達と別れた。

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