第11話:ゴールデンウィーク③

 ステータス

 鬼(青&黒) 性格:勇敢・勇猛 ランク:E

 力:F→E 390→403 耐久:E→D 490→510 器用:F→E 399→412 敏捷:E 410→423 魔力:I 8 幸運:F 390→396

 【スキル】…《挑発》、《罠解除》

 【パッシブ】…《格上級殺しキラー


 天使(黒) 性格;のんびり ランク:F

 力:H 219→220 耐久:G 238→239 器用:F 325→326 敏捷:F 371→372 魔力:I→H 74→103 幸運:G 283→285

 【スキル】…《マルチレーザー》、《プチヒール》

 【パッシブ】…《格上級殺しキラー


 ピノキオ 剣盾ver 性格;従順・嘘つき ランク;C

 力:E 400→409 耐久:E 477→488 器用:E 448→460 敏捷:E 408→420 魔力:F 349→360 幸運:H 162→166

 【スキル】…《ピノキオの投擲矢》、《嘘つきは力の源》

 【パッシブ】…《ガード貫通》


 魔物宴で、魔物がバラバラに散ったけど、幸運の伸びを見るに、鬼とピノキオが相当負担したことが分かる。


 余りにも離れすぎると、経験値は個人しか獲得できない。

 今回の幸運のバラつきはそう言う事だ。

 ばらばらに動かすとこうなる。

 正直勿体ないね。


 ドッグタグは探索者ギルドに渡してある。

 これが、身分証明だったりに繋がるのだ。

 どうして繋がるのかって?

 迷宮に入る際、扉にカードホルダーを翳さないと入れないから。厳密には自分が使なカードを保持している事。入場する際、情報が必ず残る。

 その情報は探索者局の個人データに照らし合わされ、特定することが出来るのだ。

 もちろん、今回のように血塗れだと、その血からDNAを採取して――みたいなことも出来るわけだけどね。


「ご協力ありがとうございました。亡くなられた方のご遺族に速やかに連絡を取ることが出来ます。こちらは、謝礼金です。」


 一人、一万円。計、三万。

 この一万円は、遺族負担である。

 最期の形見が一万で手に入るのだ。

 安いでしょう?

 

 因みに、カードを売ったら、元は直ぐ返ってくる。

 形見を売るかどうか、倫理観的な話を抜きにしたら、ね。


 今回はE級をそれぞれ使役してたからね。

 それを売ったら……性格改悪とか、ステータスの減少幅にも依るだろうけど。E級なら普通は十万スタートだから、多分大丈夫。

 

 

 俺は、浜松旅館の温泉で、身体を清めてから勉強に付き添っていた遥を迎えに、駅に向かった。


「温泉入ってたー?」

 何故バレた。

「匂いだよ。」

 おおう。

「えへへ。それじゃ、私も入りたいから旅館までよろしくね。」

 俺達は手を繋いで、人目の付かない所へ行く。

 こういうと少し卑猥だな。ただの癒しです。

 《F級迷宮転移核》を使って飛ぶ。

 

――しゅぴーん――


 浜松F級迷宮に到着。

 そして、旅館へ。

 時刻は、20時。

 温泉に入り、美味しい御飯を食べ――。


 やることもないので、寝るだけだが……。

 妙に、遥がえっちである。

 いや、気のせいかもしれない。

 俺の息子が本領を発揮しようとしているだけかも。

 欲情しているから艶っぽく見えるのだ。

 くっ。

 

「ねよっか。」

「うん!」

 精神統一。無我の境地。

 言うて、まだ15歳だから。

 えっちなんて体の負担にしかならないからね。

 落ち着いて!

 

「あの、なんで一緒の布団にはいってるの。」

「え?」

 するするっと体を這うように手が侵略してくる。

 これは…。

「私、魅力ない?」

 アババババババババ!!!!

 精神的直接攻撃ダイレクトアターーック!!!


 上に覆い被さる。

 灯りは消してある。

 でも月明かりが漏れているので、一応見える。

 俺と遥は、目と目が合う。

 唇を重ね―――

 唾液が伝う。

 お互いの舌が絡み合うと、痺れるような甘美な刺激が口内を満たす。

 どのくらいだろうか。

 無我夢中で、欲するように、愛を伝えるように。

 彼女の表情から恍惚・法悦が読み取れる。

 女性としての一面だ。

 美しいの一言に尽きる。

 

 身体を撫でるように優しく触れる。

 魅力、ない?なんて思うわけないだろ、って伝えるように。

 ゆっくり、じっくり、全てを丁寧に。

 

「じゃあ、続きは最低でも16歳までお預けね。」

 俺は心の中で血涙を流しながら、あたかもクールに振る舞う。

「どうして?」

 どうしてもクソもあるか―!!!!

「遥の体が大切だからね。ちゃんと成熟してから。」

「成熟とか、えっち。」

 もうそんな言葉選んでられる程、冷静じゃないんだよな。

「でも、うれしい。」

 遥が抱きしめてくる。

「あのね、えっちしないと男の人は離れてっちゃうよ。って聞いて積極的に振舞ってたんだけど…本当はまだ心の準備が…ね。」

 さらに強く抱きしめてくる。

 遥は少し震えていた。

「大丈夫だよ。愛してる。無理しないで?」

 俺は優しく抱きしめ返す。

 優しく、頭を、背中を撫でる。


「えへへ。そういうとこ好きだよ。」

 ぐぅ、かわええ。

「ゆっくり寝よう。」

「布団は一緒でね!」

 一緒かい!

 いいともさ。

 俺は別に精神的には童貞じゃないからね。

 精神的童貞卒業とか聞いたことないかも。とか何言ってんのってのは止めてくれよ。

 でも、分かるだろ?分かるよな?な?!




「ふぁ~、よく寝た!おはよう、アキ君!」

 遥は元気いっぱいだ。

 二泊三日なので、今日でお泊りは終わり。

 最後にお互い、温泉を満喫する。



「おお。奥さま、肌艶が良いですね?」 

 雪村さんが揶揄っている。

「お、温泉の効果かな?」

 遥よ、目が泳いでいるぞ。

「ま、そういうことにしておきましょうか。」

 雪村さんが引き下がった。

 ぐいぐい聞くもんだと思ったけど、そこまで不躾な人ではないみたいだ。

「旦那さんが、いない時に聞かせてね!」

 前言撤回!!!

 なんて不躾な女なんだ!

 遥、言うんじゃないぞ!!

 酒のアテにされかねんぞ!

 まだ、未成年だけどな!

 こいつなら、やりかねん!!!


「今日は、ボス周回をしようと思います。」

「はーい!」

 遥は俺の話題転換にしっかり乗ってきた。

「おっけー。じゃ、頑張りましょっか!」

 雪村さんもやる気みたいだ。

 

 俺達は、浜松F級迷宮のボス周回を敢行した。

 

 ここは喉が渇けば、潤沢な水資源がある。

 食べ物はないが、凄いことである。

 闘技場に比べ、命の掛け合いをしている感もない。

 ステージがバカンスみたい。

 浜辺ビーチでの戦い…アリだな。

 こんな最低級迷宮を周回した事は過去なかった。

 良い経験だ。

 因みに俺が周回していたのは滋賀県—―琵琶湖にあるC級水中迷宮が初めてである。

 ここのボス部屋は神殿だ。荘厳で神聖でカッコいい。

 ここで出てくるボスを手に入れて、俺は天使をヴァルキリーに進化させたのだ。

 懐かしいな。

 


 思い出に浸るのは止めて、集中……集中……。


 一時間でボスを50体、二時間で100体狩り……。

 

 「気を付けて。此処から、変則イレギュラーが出てくるかも。」

 俺は備えるためにピノキオをカードに戻した。

 Cランクの二段階上、Aランクの魔物が出てこられたら全員死ぬからだ。

 攻撃力でいえば、敏捷特化魔物キャラならワンチャンスあるかないかで三段階攻撃力強化で互角かもしれないけど。

 そしたら、今度は攻撃当たらない問題が起きかねないし。

 全部、Cランクで統一出来る位の強さになったら……ね。


 ピノキオがカードホルダーの中に入っているので、強力なアタッカーが一枚不在となった。

 その穴を埋めるように、《挑発》スキルが切れたら遥の幼猫がヘイトを買って出てくれて活躍してくれる。

 基本的には鬼がすぐにヘイトを巻き返すので、《挑発》スキルなしでもタゲ取りに成功している。


「ねえ、《挑発》スキル使わない方が、安定してない?」

 ……言われてみれば?

 遥が指摘してきた通りの可能性もあるので、指示を変えてみた。

「じゃあ…鬼、《挑発》スキルは味方が避け切れないような、致命打に繋がりそうなタイミングで使う様に!」


『ウム。』


 《挑発》スキル中、与えたダメージは2、3倍くらいのヘイトを稼いでしまう。

 そのせいで、効果切れで遥のウルフや幼猫にヘイトが行ってしまっていた。

 でもスキルを止めると、一発のダメージが大きいので防御もしている鬼へのヘイトは外れない事が判明した。

 これは恥ずかしいっすわ。

 

 これだから、脳筋だった俺はA級止まりでS級の高みに届かない雑魚だったんだよなぁ。

 こういう所です。前世なんか、死に戻りなんか、走馬灯で追体験ごっこしてんのか分からんけど、直していきたいと思います。

 たらればで、思い出が変わっていってるのなら、相当俺の心は現実逃避したがってんだろうな。

 受け入れられないのかもしれない。

 でもせめて、走馬灯なら走馬灯でもいいから、今回は自分が思う最高のエンディングを迎えようと思う。


 一体倒すのに、3分掛かるようになって、120体目。

 

『巴御前、推して参りますっ!!』

 

 剛弓を携えた、女性—―歴史系人型魔物だ。

 鬼と融合しているのか、角が生えている。

 全体の最高ランクは、俺のE級魔物――鬼である。

 つまり、二段階上となると、C級である。

 初期ステだった頃のピノキオと同じくらいか。


 あれから、全員成長している。

 遅るるに足らず。


 矢を番えようとしているが、そんなことはさせない。

「鬼!とにかく間合いを詰めろ!天使はサポート!回復に終始徹底!」


『ウム。』

『あい。』


 金棒を振る速度の方が、巴御前の近接武器—―脇差しより少し敏捷はやい。

 

『ぐっ、小癪な!!』


 メインウェポンさえ使わせなければね。

 

 日本武将はどいつもこいつも頭に一本から二本、ヤバめの角を生やしてくるからマジで怖い。

 

 正面は鬼の猛攻。

 側面からは、ウルフ、幼猫、天使×2。

 中・遠距離は天使、幼狐。


 袋叩きである。


『妖弓――範囲矢!』

『《挑発》!!!』


 近距離戦にも関わらず、弓を上空へ構えた。

 巴御前の範囲攻撃。

 近すぎて自爆している気もするけど。

 それに、合わせるように鬼がスキルを発動してくれた。


 ドガァアアン!!!!


「いったぁい!!」

「いったぁ…!」

 分かる。

 直撃は避けただろうけど、それでも痛かったろうな。

 二人共まともに被弾した俺よりかは軽いけど怪我をしてしまったみたいだ。

 俺も結構、痛い。


『…《プチヒール》、《プチヒール》、《プチヒール》……《プチヒール》』

 滅茶苦茶大忙しの俺の天使ちゃん。


 遥も雪村さんも俺の天使の回復スキル《プチヒール》で全快した。

 俺も鬼が被弾した分は、回復…しきらない。

 なぜなら、向こうも捨て身の攻撃に切り替えてきたから。


『妖弓—―貫通矢』

 巴御前の防御貫通技だ。

 鬼の耐久を無視したダメージが俺に入る。

 液体窒素で凍らされた時の、焼かれるような鋭い痛みが走る。

 

 強烈な痛みだが、耐えられないことはない。

 腹ん中や、体中刺されたり、啄まれた痛みに比べれば、たかが知れている。

 

「鬼、叩き込め。こっちも防御無視だ。苛烈に攻めろ!」


『ウム!!!』

 鬼人の振る舞いだ。

 此方も防御はしない。

 ただただ、最大火力を叩き込む。


『うぅ、負けない!妖弓—―乱れ矢』

 撃った弓がぶれる。

 一本が二本に、二本が四本に別れ、鬼に矢が飛ぶ。


「幼猫!影で鬼を守って!」

『にゃぁ。』

 着弾する寸前、鬼の身代わりに幼猫の影分体は消滅する。


「いけええええ!!!!」

『ウォオオオオオオオオオ!!!』

 

 ズドォン!!!

 鬼達の攻撃をまともに受け続けた巴御前を斃した。


 ふう。

『…《プチヒール》、《プチヒール》、《プチヒール》……《プチヒール》』

 止まらない回復。


『きっつぅ!!!』

 遥と雪村さんがへたり込んだ。

 分かる。

 ただ、回復薬を使わないでもいいのって素晴らしい。

 変則魔物――巴御前のドロップアイテムは……。

 妖弓—ともえ、装備アイテムだ。

 宝箱から出たのは、魔核、回復薬(小) 

 

 これで合計、回復薬(小)は12個ドロップしている。

 4つずつ分けているから、今回は俺の分だ。

 今日の分の宝箱から出た魔核を全て諦めて、俺は弓を貰った。


「弓はどう使うの?」

 遥は興味津々だ。

「天使の供物にするよ――供物進化だね。」

 アイテムを使っての進化だ。


 俺は天使に供物として妖弓—巴を捧げる。


 黒い翼をそのままに――リリエルに進化した。

 クリーム色のショートヘアに黒い翼を生やした天使。

 垂れ目で眠そうだ。

 背には弓を携えている。

「ご主人様。進化させてくださり、ありがとうございまふ……。」

 眠いんだろうな。

 最後、とか言ってるし。

 

 ステータス

 鬼(青&黒) 性格:勇敢・勇猛 ランク:E

 力:E 403→477 耐久:D 510→590 器用:E 412→489 敏捷:E 423→488 魔力:I 8 幸運:F→D 396→516

 【スキル】…《挑発》、《罠解除》

 【パッシブ】…《格上級殺しキラー


 リリエル(黒) 性格;のんびりや ランク:E

 力:F 320 耐久:F 339 器用:E 426 敏捷:D 572 魔力:F 303 幸運:E 405

 【スキル】…《マルチレーザー》、《ヒール》

 【パッシブ】…《格上級殺しキラー


 ピノキオ 剣盾ver 性格;従順・嘘つき ランク;C

 力:E 409→459 耐久:E→D 488→520 器用:E 460→490 敏捷:E 420→460 魔力:F→E 360→400 幸運:H 166→285

 【スキル】…《ピノキオの投擲矢》、《嘘つきは力の源》

 【パッシブ】…《ガード貫通》


 

 リリエルになって、《プチヒール》は《ヒール》に。ステータスは全部100以上伸びてる。敏捷は200は伸びたか。最速だな。

 進化したから、これからステータスの伸びはまた良くなるだろう。


『かわいい~!』

 遥と雪村さんが興奮している。

『ありがとうございまふ…?』

 リリエルは二枚翼に見えて、小さな翼が、もう二枚あるみたい。四枚翼らしい。天使が赤ちゃんなら、リリエルは5歳児くらい。可愛い。

 見た目の成長も著しい。


 弓を供物にしたから、本格的に遠距離になったみたい。

 前世は剣を与えて、ルリエルみたいな名前のに進化したけど。

 ま、似たようなもんでしょ。

 最終的にはヴァルキリーになるといいな。


 

「私達も進化したいね。」

「ね~!!」

 圧が凄い。

「E級の魔物を手に入れて、融合素材にするか、進化先を買ってみるか、アイテムを供物にするとか色々と進化のさせ方があるよ。どうやって進化させたらいいかは、どう育成したいかって事になるからアドバイスは難しいけど、魔物は進化もするけど退化もできるから。気に入らなかったら、退化するっていうのもアリだよ。」

「そうなんだ。退化すると進化前に戻るだけ?」

 遥が詳しく訊いてくる。

「もしアイテムを使ったのなら、消費したアイテムは戻ってこないけど、魔物は完全に進化前に戻るよ。」

 デメリットは消費アイテムや融合素材にした魔物だと、説明する。

 二人は真剣にどうやって進化させるのか悩んでいるみたい。

 

「A級とかS級の魔物が売ってるから、今度探索局に行ってみると良いよ。最終的にこうなって欲しい!みたいな魔物に出会えれば、供物なり、融合素材なり、探索局がどうしたらいいのか教えてくれるからさ。」

『おおー!!それいいね!』


 どうやら二人は探索局に行って、どう進化させるのか決めていくみたいだ。

 そういや、遥に進化どうしたらいい?なんて相談された事なかったな。

 高校の時は、だいぶ口下手だったから。

 その手の初歩的な相談とかは受けた事がなかったのだ。

 ちょっとでも参考になったならいいんだけど。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る