第26話:新人戦大会⑩

 先鋒を下した上治先生は破竹の勢いのまま、次鋒、中堅を倒してしまう。

 Bランクで固められては、新人戦大会出場者では厳しいものがある。勝つのも難しければ、本気を出させるのも難しい所だ。

 実力の何割で戦っているのか知らないが、大人が子ども相手に本気で戦っているようなものだった。


「対戦高校には悪いけど、全く推し量れないね。」


「だなぁ。」


「うんうん。」


「等級差が流石にありすぎるよね。反則じゃん。上治好きくないわぁ、全然好きくないわぁ。」


「手持ちだから反則ではないけど、反則級には強いね。さすが上治先生だよ。こりゃ、胸を借りるつもりで、全力出さないとなぁ!!!わっくわくするね!!!」


「変態だ。」


「変態ね。」


「流石、わたしのすきぴ!!アキ君が勝てなかったら絶対わたしが仇を取るからね!!!覚悟しとけよぉおおおおおお!!!!」


 遥はちょいちょい対抗心を燃やしているみたい。

 ふふ、未来のS級探索者様に対抗意識持っちゃうとか可愛いなぁ。

 勝てなくて当たり前なんだから気にすることないのに。

 ちょっと見ないうちに板倉と雪村さんは仲良くなったみたい。 

 俺の事、変態扱いしてくるだぜ?酷いったらありゃしない。

 まあ、本気で思ってはいないだろうし許してやろう。


『いや結構本気で変態だと思ってるから。』

 

 二人は俺の心の内を見透かすようにジト目で俺の事を見てきて言った。

 そんなに顔にでてるのかな。俺は自分の表情筋を捏ね繰り回してポーカーフェイスを作る。

 

『はぁ…。』


 板倉と雪村女史に何故か大きい溜息を吐かれた。

 なにが言いたいんだ。

 その溜息にどんな意味があるのか言ってくれなきゃ、分からないよ?



 戦いは次鋒vs副将、中堅vs大将戦となったのだが、次鋒も中堅もそこそこ強い。

 どうやら上治先生以外もしっかり強いらしい。

 ただ、等級は高くてDランクが一体いる程度。

 工夫すれば板倉も遥もちゃんと勝てそうではある。

 犠牲の下での勝利となるだろうけどね。


 蓋を開けてみれば、5勝0敗。

 完全ストレートで敵高校を下してしまった。


 M高校の実力がすごいのか、O高校の実力が乏しいのか。

 間違いなく前者だろうが、それを言ってはO高校の生徒が不憫である。

 だから、敢えて言わないで上げた。のに――、


「O高校、格が下過ぎる。」


 ズバッと言ってしまったのは遥だ。

 いっそ清々しく思った。

 気持ちは分からんでもないけどね。


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