第4話:でぇとでぇす

「ほんっとにもういいの?」

「ほんとに大丈夫だよ。遥が心配してくれるの、良くないことだけど嬉しいな。以後気を付けるから、許して?」

 ムムム。と唸っている。

「それより、スタンバックスのフラペチーノ美味しいね。チョコソース入り抹茶クリームフラペチーノ最高。ほら、あーん。」

 俺は話を逸らした。そして遥の口に一掬いしたフラペチーノを食べさせる。

「私の生クリーム増しキャラメルフラペチーノも美味しいよ。」

 顔を赤らめて、お返しとばかりに俺の口に運んできた。

 もちろん、遠慮なく頂く。

「ん、おいしいね。遥のことますます好きになっちゃうな。」

 遥艦隊は、撃沈したようだ。


「うっうぅ。てぇてぇとうとい……せいしゅんだぁ……きゅんきゅんだぁ……」

 雪村さんが悶絶中である。

 こいつは何時までいるんだ。

 ウチのことは気にしないで。って付いてくるけど気にしないでってことか?


「遥は迷宮に潜るのに、カードは持ってる?」

「一応、ママに借りたのがあるよ。」

 魔物カードを持っていなければ流石に入れない。

「自分のは無いわけだね。それじゃ、これプレゼントするよ。」

 僕はカードリッジから一枚、遥に手渡す。

「ワンちゃん?!」

 遥は目を輝かせる。犬好きなのは知っている。

「これはウルフって言うんだ。今日行くF級迷宮にも出てくるからね。それと、お母さんに貸してもらってるのは召喚しないで大丈夫だから。」

「うん、わかった。はぁ~、絵もカッコいい。」

 色違いウルフが気に入ったようだ。


「やりますな。自然な流れでプレゼントとか。」

 雪村さんはついてくるのだろうか。


 僕達は、歩いて大須へ向かった。

 遥の分も切符を買おうかと思ったのだけれど、スタバの飲み物を俺が奢ったので気が引けているのかもしれない。

 そんな遥も愛おしい。

 今日はデートなので気にしない。

 歩いたっていいじゃない。

 滅茶苦茶倒しまくって、資産14万は超えているけど、いいじゃない。

 

「着いたよ。僕がいつもお世話になっているF級迷宮だよ。」

「おお。なんか凄そう。」

 そうか。遥は初めてか。

 俺は見慣れ過ぎて、似たような感想を当初抱いていたことを忘れてたよ。

「さ、行こうか。」

「うん!」

 僕達はF級迷宮に入った。


「小鬼、天使、ゴブリン出ておいで。」

『グァ!』

『あい。』

『ごぶぅ!』

 僕の手持ちは3体中、2体を色違いにしている。

 小鬼は青色。ゴブリンは黒に深緑の模様。

 愛らしさ担当の天使。


 ステータス


 小鬼(青) 性格;血気盛ん・従順

 力:I 25→31 耐久:I 18→25 器用:I 29→37 敏捷:I 28→36 魔力:I 0→5 幸運:I 14→22


 天使 性格;のんびり

 力:I 19→22 耐久:I 10→16 器用:I 25→28 敏捷:I 29→36 魔力:I 5 幸運:I 14→17

 

 ゴブリン(黒緑) 性格;勇敢・従順

 力:I 5→13 耐久:I 5→10 器用:I 12→20 敏捷:I 18→28 魔力:I 2→7 幸運:I 10→18


 朝活で倒した数は300オーバー。天使は色違いを融合していないから討伐数の正確な数字はこれから天使の幸運を見れば一発だ。小鬼もゴブリンも幸運値からマイナス5すればいい話だけどね。


「じゃ、遥も召喚してみて。」

「うん。わかった。ウルフちゃん!」

 遥の呼び声に応えるように赤色の毛並みに金の模様が入ったウルフが出てきた。

『わぉん!』

 元気の良いウルフだ。

 灰色より段違いで綺麗だ。

 

「わぁ、綺麗。」

「でしょう?大切にしてあげてね。」

「うん!千堂君、ありがとうね!」

 本当に綺麗な笑顔だ。

 その笑顔で色違い旅をまだまだ続けられるわ。


「小鬼、天使、ゴブリン。一体ずつ集中攻撃ね。ゴブリンはアイテム回収もあるから攻撃に積極的参加はしなくてもいいよ。」

『グァ!』

『あい。』

『ごぶぅ!?』

「あれ、不満かい?戦いたいなら止めないよ。気を付けてね。」

『ごぶぅ!』

 勇敢になったので、積極的に戦いに参加したくなったか。


「ウルフちゃんも、お手伝いしてきて。でも無理しないでね。」

『わぉん!』

 遥のウルフも平原エリアを元気よく走り出す。


「それにしても綺麗ね。」

「そうだね。ただ、みとれちゃダメだよ。此処は魔物が住まう迷宮だからね。」

「そうでした。気を付けます。」

 


 何戦か戦って、遥は色違いに気づいたようだ。

「ねえ、私のウルフとか千堂君の小鬼、ゴブリンの色味が野生と違う気がするんだけど…。」

「うん、色違いだもん。魔物の中には極稀に色の違う個体が産まれるんだ。って言っても4096匹に1匹の確率だから頑張れば出てくるって感じだけどね。」

 ここは一階層なので大体一戦辺り、1匹、多くて2匹だ。

 多分倒した数は5匹か6匹。

「それって大変なんじゃない?」

 遥は恐る恐る俺に聞いてくる。

「大変だけど、からね。。遥にあげる最初のプレゼントは特別じゃないと僕の気が済まないっていうのもあるけどね?」

 迷宮は危険な所であるから、ちゃんと前文を強調して言う。

 遥も理解したようだ。

 ま、色違いを狙ったせいで、ズタボロになったんだけど。


 あ、聞いてほしいことがあったんだった。

 狡猾なゴブリンが居たでしょう?今、俺のゴブちゃんの染色剤として有効活用された問題児ですよ。なんと、なななんと!やっぱり!!!スーパーレア!!!じゃなくてレアでした。

 多分レアの中でも強個体だったのかもしれない。

 戦術が、ずる賢かったのもあるけどね。

 ま、そう簡単には行きませんよ。

 ちょっとショックな報告でした。。。


「いつもは何階層にいるの?」

 遥が聞いてきたので答えてあげる。

「いつもは三階層だよ。」

「階層が増えると魔物も強くなるの?」

 そんなことはないな。僕は首を横に振る。

「基本的には遭遇率エンカウントりつが上がるだけかな。」

「そうなんだ。」

 初心者みたいな質問を真剣な顔で聞いてきて可愛いです。

 ええ、彼女は絶賛初心者なんですけどね?

 分かるでしょう?やる気のある初心者育成の楽しさ。

 何事にも一生懸命で可愛いでしょう?

 

「連れてって?」

「うん、いいよ。…え?」

 可愛い遥の言う事に快諾して、何を言われたのか咀嚼する。

「連れてって?いいって言ったよね?」

「……。はい」

 そうなんです、遥さん押しが強いんですよね。

「じゃあ、危なくなったら、すぐに引き上げるよ?」

「勿論。」

 遥は低身長で、全体的に愛嬌がある。綺麗より可愛いに振っているので、こういう時にニコって笑うと堪らんのです。

 愛らしい化身みたいだ。

 

「三階層の穴場な狩場は何か所かあるけど。此処が一番狩り効率が悪い所。悪いって言うのは、の中ではって意味だからね。」

「じゃあ、穴場の中でも一番安全な所って事だね。私がいるから気を遣ってくれたんだ?」

 そういうことです。俺は首肯する。

「お、さっそく湧いたか。小鬼、天使はいつも通り。ゴブリンはウルフの動きに合わせてサポートしてあげて。」

『グァ!』

『あい。』

『ごぶぅ!』

 やる気があって宜しい。

 敵は5体。上限一杯の魔物が湧いた。

 正直ツイてない。

「ウルフちゃん、敏捷スピードで翻弄するの!頑張って!」

『わぉん!』

 ステータスが初期値でも通常種が追い付けるとは思えない。

 遥のウルフが致命打を受けることはないだろう。


 

 予測は当たった。

 遥の指示もいい。

 流石だ。元からセンスが良いらしい。

 同じパーティーメンバーで活躍していただけのことはある。

 敵の数多くて、囲まれそうになったら、逃げに徹したり。逆に此方の仲間が囲まれていたら、隙をついて奇襲攻撃を仕掛けたり。全体を恐れずに、よく見ている。



「そろそろ14時だね。遅めだけど、昼食を食べに行かない?」

「さ、さんせ~い。」

 集中して戦っていたので、遥はヘロヘロだ。

 俺達は速やかに迷宮を脱出した。


 ステータス


 小鬼(青) 性格;血気盛ん・従順

 力:I 31→33 耐久:I 25→28 器用:I 37→41 敏捷:I 36→38 魔力:I 5 幸運:I 22→25


 天使 性格;のんびり

 力:I 22→23 耐久:I 16→18 器用:I 28→30 敏捷:I 36→38 魔力:I 5 幸運:I 17→20

 

 ゴブリン(黒緑) 性格;勇敢・従順

 力:I 13→15 耐久:I 10→14 器用:I 20→22 敏捷:I 28→30 魔力:I 7 幸運:I 18→21

「おいし~。」

「安定して旨いね。さすが学生の味方、ワックさん。」

 僕達は大手ハンバーガーチェーン店ワックドナルドに来ていた。大体2時間くらいだろうか。真剣に狩りをしていた時間は。

 純粋に攻撃枚数が4枚に増えたので、戦闘は楽になるし、狩り効率は上がった。お陰で、300体オーバーの魔核を手に入れている。これらは半分ずつ分け合って、換金した。

 凡そ、一万六千円程の収入だ。

 遥は吃驚していた。

「稼げるとは聞いてたけど……。」

 ま、諭吉一枚でも相当だよね。

 それを超えてくるんだから流石探検者。

 因みに、無職者は殆どいない。

 現在では、精神を病んでしまった人や働けない程、重度の身体的病を抱えた人位だろうか。

 日本にも最初は浮浪者がいた。働けるけど働かない者がいた。ニートと呼ばれる人たちだ。彼等は生活保護セーフティネットを得て、迷宮に潜り、再起を図ることで社会復帰した者が多い。他にもリストラに遭った求職者も探索者になった事で年収が大幅に上がった者もいる。

 探索者はそういった層から絶大な支持を得ている。

 命が担保にはなるが、成功すれば一躍有名人だからね。


「なんか、この職業が人気なのも頷けるね。」

「だね。」

 誰でも再起が可能ってことは、探索者になるハードルが低いってことだ。その分、悪質な人間もいるので治安が良いとは言えない。現に俺は悪辣な探索者達に騙されて、チーム毎移籍してしまったせいで、みんなが――遥が襲われ、俺は死んだのだから。


 アレが夢なのかどうなのかは分からない。

 だって、よくあるシステムとかが見える!みたいなことはないのだから。

 ただ、鮮明に思い出せる。苦楽の全てを。

 だから、俺は出来得る全てを以て次こそは大切な者を守り、極悪非道な奴等に復讐すると決めたのだ。

 そのためならどんな努力も惜しまない…。


「ふぅ、満腹。ごちそうさま」

「ごちそうさま。」

 遥はお腹を擦っている。

 臨時収入よ!なんて言って、ポテトLにチキンナゲット5ピース、エビフィレオを食べていた。

 俺もポテトLにビックワックにウーロン茶というセットメニューを頼んだのでお腹が一杯だ。

 二人して食後のんびりと席に座っていると、どこから湧いて出てきたのか。


「貴方達、ほんとにお似合いね。」

 キューという白ブドウジュースを片手に雪村さんが湧いてきた。

 君、もう帰ったと思ってたよ。でもお似合いだって?もっと言ってくれ。

「あ、雪ちゃん。何処にいたの?もう家に帰ったのかと思ってたよ。」

「黙秘します。」

 どこで黙秘権を行使してんだ。

 俺は雪村さんの事、少し怖くなってきたよ。


「あら、怖がらないで?」

 心の声を見透かされた?顔に出てたか?バチンって音がなりそうなウィンクをされて、鳥肌が立ったことは黙って置こう。


「遥はどうしたい?この後も、迷宮に行くかい?」

「ん~、戦ってる時はそうでもなかったんだけど。なんか思った以上に疲れちゃった…あと痛い!靴ベラで叩かれたみたい。」


 遥は腕を擦っている。見た所、出血はしてないみたい。

 有効打を貰わない限り、俺みたいに軽度の出血は起きない。

 敏捷が高いウルフの色違いなら、あの迷宮でまともに攻撃を食らう事があるのかどうか。一対多戦にでもならない限り、今日のような軽い痛みを味わうくらいだろうな。

 それにしても今日が初めてだったのをすっかり失念してた。

 長年一緒に戦ってきた感覚が抜けきってないな。反省だ。


「それじゃ、今日はもう休もうか?初戦闘も無事にやり遂げたしね。」

「えっと、その臨時収入も入ったし……ちょっとだけショッピングモールでも見て回らない?買いたい物があるわけじゃないんだけど……。」

 遥が俯き気味に提案してきた。

 断る理由もないので、快諾する。

「そうだね。いいよ。僕は欲しい物があったから。」

「そうなの?じゃ、いこいこ!」

 

 本屋に寄ったり、春服コーデを見たり、化粧品売り場を見たり、遥は見たい物が一杯あるみたい。

 化粧品売り場で、美容部員さんとこっそり取引を済ませる。

 俺は、JELL STUARTのボディクリーム ホワイトフローラルを買う。値段も、お手頃で3520円だった。嘘です。

 高校生にとっては高級品だった。でもしょうがないよね。死に戻り前も、遥は、この商品が好きだったんだから。


 一通り見て回った後、遥が訊いてきた。

「千堂君、何か買いたい物あるんじゃないの?ここにはなかった?」

 手提げ鞄に仕舞っていた購入品を遥にみせる。

「これ、遥に買ってあげたかったんだ。肌に合うか分からないけど、ボディクリームだよ。使ってくれるとうれしいな。」

 遥の手を取り、プレゼントを渡す。

「え、私に……いつ買ってたの?」

「いつだろうね~?」

 俺はとぼけた。

「ありがとうね!」

 遥は、破顔して言った。

 可愛い。

 

 ショッピング編も上手くいったかな?

 時刻は16時過ぎ。デートはお開き。遥と別れたら?

 やることは?—―そう、迷宮です。


 迷宮が殺しにきたお陰で、必要な色違いは手に入っている。

 ここまではウォーミングアップ。ヤバいのココから。

 俺は気合を入れ直し、大須通りのF級迷宮のボス戦に挑む。


 

 大平原に大扉がある。

 ボス部屋に繋がる、大扉だ。そこに俺は辿り着いた。

 幸い、誰も挑戦していないようだ。

 挑戦中の場合、扉はビクともしない。

 ここのボス部屋は、円形闘技場のような形をしている。

 ボスタイプは、必ずではないが、鈍重パワー型が出やすい。

 ボス部屋には特徴がある。

 壱.ボス戦に勝利すれば宝箱が開けられる。

 弐.五分の間隔インターバルが経つか、一度部屋を出ると新たなボスが出現する。(出方は二通り――入ってきた大扉から退出するか、奥間にあるテレポート陣に乘る。テレポート陣に乘れば迷宮入り口前に瞬間移動できる。)

 参.ボス戦の連戦は、連戦ボーナスが発生する。

 肆.ボス1体討伐につき、幸運が1上がる。

 伍.ボス戦では変則魔物イレギュラーモンスターが出現する可能性がある。

 陸.戦闘から逃げることが出来ない。

  

 これが一般的に知られているボス部屋の特徴。

 番目とろく番目はデメリットだな。

 宝箱に期待してはいけない。

 宝箱の中身はハズレが多いから。

 俺のお目当ては――ボスカードである。

 ボスカードは一定の割合で手に入る。ドロップ率は5%。

 やるっきゃない。数をこなすしかない。

 そうなると五分の待ち時間は塵ツモで時間のロスになる。

 それをスキップする方法が実はある。

 ボスから出る魔核を迷宮に還すのだ。

 受け取った魔石を捨てるともいう。埋めてもいい。

 どんな方法でも構わない、迷宮に還す。それが大事。

 

 大扉を開けて入場する。

 ドーム型の闘技場が現れる。


『ブモォオオッ!!!』


 一戦目はオークのようだ。

 オークの魔物等級はEランクである。

 頑丈なパワーファイターだ。

 小鬼が持っている棍棒の二十倍はあるかもしれない。

 そもそも小鬼の棍棒が少し太い木の棒説なんだけど。 

 

「誰も正面には立つな。側面と背後に常に回り込め!横薙ぎの攻撃は全力で後ろに回避しろ!んじゃ、小鬼、天使、ゴブリン!攻撃開始ッ!」


『グァ!』

『あい。』

『ごぶぅ!』


 俺が此処の迷宮を選んだ理由。

 前にも云った通り、色違いの件もある。

 だが、それだけじゃない。

 ボス狩りがしやすいのだ。

 

 ここのボスは鈍重と言ってもオークは割と動ける方だ。

 オークの敏捷は、初期値130ジャスト。通常種の場合ね。

 全然足りてないじゃないか、ってお思うでしょう?

 そうです、普通にやれば負けます。

 簡単だ。ヘイト管理を利用する。攻撃すればヘイトが溜まる。ヘイトが溜まれば攻撃目標を変える。

 射程外なら、向きを変えたり移動しなければならなくなる。


 これを利用して格上を叩くのだ。


 小鬼と、天使は回避&移動にワンテンポ余裕がある。

 慣れた動きを見せる、初期メンバーの獅子奮迅の働きで、オークを翻弄している。

 余裕そうに見えるこの戦闘—―ゴブリンに注視すると、オークの移動攻撃、ぎりぎりを回避するので、ヒヤリハット案件連発である。


『ブモォオオ!!』


 オークは攻撃が当たらず、《激昂状態》に入ったようだ。

 こうなれば、こちらの思う壺である。


「油断せずに!確実に!」


 チカラは上昇しているので、今の魔物達の耐久では一撃必殺になっている可能性が高い。性格特性で、《生意気》、《お調子者》、《狡猾》などの性格持ちは、《単調》、《一方的展開》だと油断する。なので、《激昂状態》の魔物と非常に相性が悪くなる。

 また戦闘面で釘を刺してと、常勝無敗の魔物程、性格は変わってしまう。『性格が従順だから平気』なんて思っていると足元を掬われる。ちゃんとことは大切なのである。


『ブ、モォオオ…。』

 漸くオーク戦に勝利した。

 これでまず1勝。

 ドロップ品は――魔核落ちのカードなし。

 さて、宝箱は――魔核。

 せめて回復薬くれぃ!!!


 五分の休憩レストは取らない。

 魔核は捨てたので、すぐに2戦目が始まる。


『ゴゴゴ…!』


 ゴーレムね。

 人型E級魔物。こいつは最初から一撃必殺持ちである。

 敏捷は初期値120。通常種である上に先程より遅い。

 余裕である。


「戦法はさっきと変わらないよ。かすりでもしたら死ぬと思え!!」


『グァ!』

『あい。』

『ごぶぅ!』


 特に武器もない。

 最弱射程リーチである。

 ちょろい。


 危な気なく完勝だ。

 ドロップ品は――魔核のみ。

 宝箱は――回復薬(小)。ありがてえ。普通に売っている回復薬の3分の1程度の量だ。これ一本でF級魔物一体分を全快治癒させることが出来る。ありがてえっす。

 3戦目。


『……』

 

 ワームだ。

 昆虫型E級魔物。2メートル位の白い芋虫だ。黒い牙が無数に生えている。同程度なら丸呑みにしてしまいそうな大口には嫌悪を抱く人もいるだろう。


『ブシュウッ!』

 ワームの敏捷初期値は126。

 厄介なのはこの糸吐きである。

 相手に当たらなくても地面に設置型の罠として残り続けるのだ。加えてここは円形闘技場。戦闘スペースは限られている。

 

「《糸吐き》が続けば、足場が奪われるぞ。小鬼は正面で威嚇、最小限の回避と敵が攻撃して突っ込んできた時にカウンターを当てろ。回避は時計回りに!!浮遊できる天使はなるべく攻撃!ゴブリンは設置されたわなを解除しろ!」

 

『グァ!』

『あい。』

『ごぶぅ!』


 小鬼は似たような事をしてきたので順応が早い、上手い。

 天使は縦横無尽に制空権を利用し、やりたい放題だ。

 ゴブリンは罠解除は初挑戦だ。苦戦している。

 二、三回の《糸吐き》で一回の罠解除のペースである。

 

 ワームは耐久はオークやゴーレムより低い。

 一周と、ちょっともしない内に安全に芋虫狩りを終えた。

 作戦も刺さっていた。


 ドロップ品は――魔核のみ。

 宝箱は――魔核。


 そう簡単にはいかないよね。


 さ、四戦目。


『ブモォオオ!!』


 再びオークだ。通常種。

 

「最初の時と同じ!誰も正面には立つな。側面と背後に常に回り込め!横薙ぎの攻撃は全力で後ろに回避しろ!」 

 

『グァ!』

『あい。』

『ごぶぅ!』


 落ち着いた動きで、一回目より安定している。特にゴブリンの動きは僅差だが、変化が見られる。

 ボス三連戦でステータスが上がったのかもしれない。


 ステータス


 小鬼(青) 性格;血気盛ん・従順

 力:I 33→46 耐久:I 28 器用:I 41→44 敏捷:I 38→49 魔力:I 5 幸運:I 25→28

 【スキル】…《挑発》


 天使 性格;のんびり

 力:I 23→35 耐久:I 18 器用:I 30→38 敏捷:I 38→49 魔力:I 5 幸運:I 20→23

 

 ゴブリン(黒緑) 性格;勇敢・従順

 力:I 15→20 耐久:I 14 器用:I 22→31 敏捷:I 30→39 魔力:I 7 幸運:I 21→24


 安定して勝てているので、ステータスを覗いてみた。

 小鬼は二千体とボス三体。基本戦闘スタイルを崩さずに、頑張ったお陰で【スキル】が発現していた。僥倖である。

 全体的に伸びているが、被弾数ゼロなので、みな耐久は上がっていない。

 回復薬(小)があるから、一体なら被弾してもいいな。

 でも無理に被弾する必要があるのか。問題は其処である。

 安定を取るならしない。

 回復薬がストックで3本手に入ったら耐久上げもすればいいか。


 

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