第2話:気が付けば高校生
ベッドから飛び起きるように目が覚めた。
汗だくだ。
時刻は――電子時計はAM5時となっている。懐かしい電子時計にシングルサイズのベッド。此処は?実家か?
おかしい。実家に帰省した覚えなどないのだから。
俺は遙と同居している。
俺達のベッドはキングサイズな筈だ。
これじゃ狭いだろう?
日付の確認だ。カレンダーは西暦2009年。平成21年の4月のページになっている。走馬灯か?いや流石にアレは死んだだろ。
死ぬまでに起こりうることを夢で見ていた?
探索者として迷宮に潜ってきた痛みも、築いた富も全て、夢だった?はぁ?そんなことある?
「俺は一体。取り敢えず小便しよ。」
ズボンを下ろして相棒を確認する。
まだ剝けてない、可愛い相棒時代の姿をしている。
これは、高校一年生だわ。
戻ったのかなんなのか……。
「あ、手持ちのカード……。」
高校入学と共に魔物カードを二枚手に入れている。
俺の初期カード。一枚目、小鬼—―E級亜人系魔物だ。二枚目、天使――E級神話系魔物である。
こいつ等を育ててA級の天夜叉とヴァルキリーにしたんだが……本当に元に戻ってしまったのか。
「おはよう秋くん、随分と早いのね。一人で起きれるなんて。お母さん感心しちゃったわ。」
「おはよう。えらいぞ、秋。高校生だもんな。」
4時は早すぎた。色々考えていたら、6時になっていた。
俺は一階へ降りリビングへ。すると母と父がもう起きていた。
「えっと、おはよう。母さん父さん。」
そういえば、俺って朝は全然起きない惰眠マンだったな。過酷な迷宮に潜るようになって不眠症になって――遥のお陰で不眠症は改善されたけど、後遺症みたく眠りが浅くなったせいで早起きできるようになったんだっけか。
いやいや俺の睡眠事情なんてどうでもいいわ。
「朝ごはん出来てるわよ。温め直してあげるわね。席について。」
「ありがとう、母さん。」
いやだわ、このこ。ありがとうだなんて、って聴こえてくるがスルーしておこう。高校生になりたての頃の自分が、如何に甘ちゃんだったか、恥ずかしくなるからな。感謝、ダイジ。
俺は駅を3つ乗り継いで、懐かしい母校にやってきた。
遥は、遥はどこだ。身長が低い遥俺達は一年の頃から同じクラスだった筈。
「遥……!」
「え、ちょ、誰?」
姿を見つけた途端、あの地獄のような悲鳴を上げていた遥を幻視してしまって思わず抱き着いてしまった。
「………あ、ごめんなさい………。」
困惑と羞恥で頬を少し染めている遥に謝った。
「初めまして。
俺は止めておく。威圧的に感じさせないように主語すら気を付ける。
「えっとはじめまして。なんで私の名前知ってるの?」
少し落ち着いたのか、当たり前の質問をしてくる。
「えっと、実は高校受験の日に会ってるんだ。僕の前に座ってたのが君だよ。一目惚れでね。受験票に名前書いてあるでしょう?それを見て覚えてしまったんだ。」
捏造だ。受験日、席が前後だったとか真っ赤な嘘であるけど、これはしょうがない嘘だ。怪しまれても仕方ないからね。
「ああ、そうだったの。受験の日はテストで一杯一杯で。ごめんね、覚えてなくて。」
信じてくれたのか。ただ、謝られると良心が痛むな。てか、テストに集中してないで、一目惚れしてるとかどんな余裕だよ。
いや、納得してくれたら何でもいいか。
「実は、一緒のクラスなんだよ。僕達。それも相まって見かけた時は運命かなって。—―まずは仲良くしてほしい、連絡先を教えてくれないか?」
「えっと、うん。」
遥の顔が真っ赤だ。あ、告白した上に、連絡先も即行聞くとか、高校生ではありえないか。
ぐいぐい行き過ぎてるか。周りの女子生徒も少しきゃーきゃー騒いでるくらいだもんな。
これは反省だ。
入学式は無事に終えた。
連絡先をゲットした俺は一応、自己紹介と、抱き着いたことへの謝罪と、唐突な告白に、連絡先の交換をしてくれたことへの感謝を綴ったメールを送った。
本日の学校は終わり。よってF級迷宮に潜る為に、名古屋に来ていた。名古屋駅から大須まで直進する。大体3キロ程の道程を高校生の俺は歩いていく。お金の節約です。一月のお小遣いは5000円だが、電車賃に消えると問題だろ?片道210円、往復420円だぞ。スタバ一杯約700円。電車移動を二回我慢して徒歩で行けばいいのだ。そうすれば、割り勘でも遥とお茶代が浮くのだ。バイトをしていない普通の高校生ならこうやってお金を浮かせる気持ち分かるよな?
「さっさと稼げるようにならないとな。」
辿り着いた目的地—―大須通り。此処にはF級迷宮が存在する。初心者が行く5階層構造の迷宮だ。
出てくる魔物も至ってシンプル。ゴブリン、
ウルフ、カーバンクルだ。ボスはオークなどパワー系の鈍重型が多かったはず。
ゴブリンは緑肌の妖精族、小鬼は赤肌の亜人族だ。肌の色が違う。他にも小鬼には一本又は二本の角先がちょこんと飛び出ている。ここで危険なのはウルフだ。狼なのだが、身の危険を知らせる《遠吠え》スキルが凶悪だ。何処からともなく仲間を呼んでしまう。まるで迷宮が魔物のスキルに応えるかのようにその場に産み出されるのだ。カーバンクルはどの迷宮にも必ず出てくる。出現率は低いけどね。遭遇したら幸運だ。
大須通りF級迷宮。同時召喚上限数は5体。フィールドは平原。
俺は二枚のカードを取り出す。
「出てきておくれ、小鬼、天使」
『グァ……。』
『……あい。』
小鬼は喋ることが出来ないなりに返事をしてくれる。
喃語で話してくれるのは天使だ。
「小鬼、天使。敵を見つけたら一体ずつ集中攻撃だ。ウルフには手は出さなくていいからね。見つけたら逃げよう。」
『グァ……。』
『……あい。』
一階層、社会人は皆無だ。高校生や大学生らしき人達はパラパラといる位か。入学式当日というのもある。
こういう日に学校イベント、友達作りチャレンジをせずに迷宮に来るとか自分でもぶっ飛んでると思う。
でも、大切な友人になるかどうかでいうと、遥がいれば高校三年間はどうにでもなる。というか俺達は三年間一緒だった。その時は仲の良い友達止まりだったか。
うーん、我ながら奥手だったな。
ちょっと他所事を考えていると、さっそくゴブリンが出てきた。しかも単体だ。
「小鬼は正面攻撃、敵の攻撃はなるべく避けろ。無理する必要性はない。天使は後ろに回って背後から攻撃。」
下級魔物は命令を細かにしておくと良い。そうする事で成長するにあたって学習して
小鬼が、ほっそい棍棒でゴブリンの頭を殴りつける。ゴブリンは軽く怯むも激昂状態になった。攻撃は単調になるが、チカラが上がる。命令通り、ゴブリンの攻撃に対して、小鬼は回避している。小型ナイフを持った天使が後ろから奇襲する。浮いているので、基本的にゴブリンに対しては天使みたいな浮遊系や飛行系の魔物で奇襲攻撃をさせれば、確殺可能だ。
難無く初戦闘を終える。
小鬼も、天使も心なしか嬉しそうにしているような気がする。
倒したゴブリンからは爪の端程度の魔核と呼ばれている魔物の核を落とした。これが換金アイテム兼、ポ〇モンでいう不思議な飴みたいなものだ。ま、これは差し詰め不思議な飴の欠片って感じだな。大体百円くらいで換金できる。相場はレートが変動するので何とも言えない。だから大体なのだ。
魔核はズボンのポケットに入れ回収した。
さ、次々。
ガンガン行った。
二時間。小鬼とゴブリンを狙って、討伐数は百を超えた。
小鬼と天使のレベルも上がった。
ステータス
小鬼 性格;従順
力:I 5→12 耐久:I 3→5 器用:I 5→12 敏捷:I 5→15 魔力:I 0 幸運:I 0→1
天使 性格;のんびり
力:I 5→10 耐久:I 5 器用:I 3→11 敏捷:I 5→16 魔力:I 5 幸運:I 0→1
滅茶苦茶伸びた方だ。二桁行くことの素晴らしさよ。これで敏捷でもウルフに競り勝つことが出来る。
基本的に幸運は百体毎に1しか上がらない。
カーバンクルを倒せば、幸運は10上がるけどね。
因みに色違い魔物には出会ていない。
色違い魔物とは何か。色が違う個体だ。ポ〇モンと一緒だ。
この個体は魔核だけではない。必ずカードがドロップする。
そして、カード同士を融合させると、どちらを主として選択しても色特性が移るのだ。色だけではない、全ステータスが5も上がる。永久にだ。進化後もだ。
小鬼は赤肌が基本。でも色違いは青色。
色違いが手に入れば天使も困惑せずに済むというのもある。
小鬼同士だと見分けが付きにくいのだ。
俺は使役しているので精神的な繋がりがあるから見分けがつくが、何度も立ち位置が変わったり、乱戦時は天使ちゃんには難しいのだ。
作戦の円滑化を狙って、天使ちゃんのためにも僕は色違い旅に出る!因みに確率は4096分の1だ。
ポ〇モンと違って、光るお守りも海外産メ〇モンとで国際孵化なんて出来ない。強いて言うなら、政府から買う事が出来る1パック3枚入りの魔物パックを買うくらいだが、富豪にしか出来ない。なんせ1パック100,000円だから。十万だぞ。高校生には無理。頑張ろか……。
因みに俺のカードは母さんと父さんが使ってないカードを一枚ずつ支給してもらったものだ。母さんが天使を、父さんが小鬼をくれた。そう言えば、貰った時は父さんがくれた小鬼をみて雑魚カードか…なんて凹んだよな。母さんの天使はまじで嬉しかった。赤ちゃんにちょこんと羽の生えたプリティな存在に誰が喜ばない。いや喜ぶだろう?癒しだもんな。
因みに狙っている色違いは小鬼だけではない。ゴブリンもウルフもだ。当たり前だろう?
そして色違いウルフは遥への献上品だ。遥は犬が大好きだからだ。色違いゴブリンは小鬼がゆくゆく進化していく先で、配合素材に必要だから手に入れなければならない。
俺が此処を選んだのはどの色違い魔物が出ても、得しかないからだ。
ステータス上ではもうウルフにも勝てる。なのでココからは相手を選んでとかしない。攻撃あるのみ!
「攻撃!攻撃!攻撃ーーーッ!」
『グァ……。』
『……あい。』
ウルフを見かけても避ける必要がなくなったので只管乱獲である。ダメージは最小限で済んでいる。4つか5つくらい、カッターで切られたような痛みと出血、うっすらと残りそうな程度傷だけ。最初はこの痛みにビビる。だけど、傷は気にしてもしょうがない。魔核を材料にした回復薬を掛ければ傷痕だって消える。だから女性は回復薬を美容に使う人もいる。
因みに死ぬ前の俺は男だから気にしなかった。やり直し?なのかは知らないけど今回の俺も気にしないで行く。
回復薬は幾らするんだって?……回復薬百万円する。買えねえだけじゃねえか!って?そうだよ、そうですが何か?開き直りましたが何か?この話は終わりだ!!!!
乱獲を続けること5時間。
F級迷宮に来た時が凡そ、12時。正午だな。
レベル上げをすること2時間。
色違い旅に出始めて、5時間。
今の時刻は?—―そう、19時です!
19時って言えば分かるな?
—――そう、腹が減った!
今日は終わり!!出ませんでした!
ステータス
小鬼 性格;従順
力:I 12→16 耐久:I 5→12 器用:I 12→18 敏捷:I 15→20 魔力:I 0 幸運:I 1→4
天使 性格;のんびり
力:I 10→13 耐久:I 5→7 器用:I 11→15 敏捷:I 16→21 魔力:I 5 幸運:I 1→4
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