第17話:新人戦大会
地元主催の新人戦大会
県外の人はいない。別に中部大会とかってわけじゃないから。
愛知県の至る所の高校からやってくる。
記念勢とガチ勢の熱量は応援団に差が出ていると言っていい。
ガチ勢達にはチア部がいる。めっちゃ可愛い。
対して、うちは部員のみ。
うちにもチア部はあるが、野球やバスケの応援には行くけど今大会には来てくれてない。強いて言うなら、観戦希望で来てくれてる部員くらいのものよ。
うちには応援団らしい応援団はいないので、端から見たら記念勢に見えてることだろう。
ガチ勢達は、俺等の事なんて歯牙にもかけない。
因みに参加高校数は何と50校。
5校ずつのグループに分かれて、総当たり一位の高校が10校になってそこから戦績順でくじ引きが引ける。
「私達は第七グループですね。対戦相手校はSS、DDD、F、GG高校ですね。強豪校はDDD高校でしょうか。」
上位高校が含まれていると聞いて、みな緊張感が高まっている。
「みんなが緊張してるみたいなんで、僕が先鋒で頑張ります。大将は遥で。後は先生が好きに決めて下さい。」
「いいんですか?実力が一番高い千堂君がやられた場合、みなさんの戦意が大きくそがれてしまいますが。」
「大丈夫ですよ。全員僕一人でどうにでもなりますから。」
僕がそう言うと、近くにいた他校の人達がこちらを凝視している。これは敵意だ。
あ、やべ。言ってから気づいてしまった。
「こら。」
「はい、すみません。」
遥が良い塩梅で叱ってくれたので、彼女の前でちょっと大口叩いた記念勢って感じの目で見られることになった。
遥のお陰で、ぎすぎすした雰囲気が霧散したので、ここは甘んじて道化になろうではないか。
「それじゃ、大口叩いた千堂が予選位軽く突破してくれるから、敵情視察にでも行ってくるわ。」
にやにやしながら板倉が、他試合を見に行くと宣言。
俺達は同時に予選が行われる。そして第七闘技場で俺等も予選が行われるというのに、本当に他の闘技場に見に行ってしまった。
これには、先生も部員たちも呆然。
そういったのは先輩とかがやるけど、如何せん人が足りない。ぶっちゃけ俺からしたら、有難い。先生は顧問なので、コーチ的ポジションで敵情視察は出来ないし。応援しに来た人達は俺等の試合を観に来たのであって、他校の試合をどうたらと分析してと言っても出来ないだろうし。
「アタシが念の為、連れて帰ってくるから、それまで負けないでよ?」
板倉を追って行ったのは、雪村氏。
「ま、信じてくれてるって事よ。」
暢気にそう宣ったのは刑部副部長。
「ええ、僕もそう思ってます。こっちは人が少なすぎですから。情報を多く持ち帰る為にも僕も遊ばずに徹底的に叩き潰しますよ。」
味方の奇行も僕の実力を信じての事だ。
『第一回戦—―――A高校vsSS高校です。』
アナウンスが流れた。
A高校とは僕達の高校だ。
相手はSS高校か。
闘技場入りした僕達の人数を見て、まず向こうは失笑。
だって一人足りないもんな?
此方にいるのは、俺、遥、藤井さん、板倉が欠席で、宮前くんの四人。
ベンチには顧問の賀茂川。応援席は十人にも満たない部員たち。やる気のある一年部員は皆、迷宮で頑張っているのだ。
追いつけ、追い越せの精神を植え付け過ぎたというか、焚き付け過ぎたというか、とにかくやる気が溢れてるからしょうがない。
『先鋒—―――A高校は千堂秋君—――――SS高校は田辺君—―――闘技場に上がって下さい。』
俺は名前が呼ばれたので、闘技場へ。
『お互い、登録した魔物を召喚してください。』
アナウンスの指示通りに、鬼、リリエル、ピノキオを召喚する。
『これは、すごい。ピノキオは不規則魔物です。これは、千堂君は相当な修羅場をくぐったんでしょうね!』
アナウンスでの実況が煩い。余計なことをぺらぺらと。
『対するは、クラブレイダー、アッシュスポーン、ゴーレムです。これまたいいパーティです!流石先鋒!勝ちに来てますね!!!』
向こうは全てE級だ。等級だけでも勝ってるが、そうでなくても地力が違う。戦闘で味わう痛みは闘技場でも同じ。迷宮と変わらない。デスペナルティの痛みを知らない小童に負けるわけにはいかんのだ。
『—―――では、—――――始め!!!』
「たたきつぶせぇ―――――!!!」
田辺とやらが、声を張り上げるとゴーレムを先頭に突撃してくる。
「鬼は《挑発》、リリエルは撹乱、ピノキオは《噓つきは力の源》で叩き潰せ。」
「御意。」
「……あい。」
「任セテ!オ前ラ、ナンテ、小指でジューブン!」
ばっちり剣と盾を使うもんな。嘘だけど、煽りにしか聞こえんぞ。
『おおおお―――――――っと!ピノキオくん、凄まじい煽りですね!!マスターは、こういった嘘を教え込んでるんですかね?』
やめいい!!俺が言わせてるみたいだろうが!!
突っ込んできた、ゴーレム達はみな、近接。
見事に鬼の《挑発》スキルに引っかかっている。
鬼にタゲが集中しているが、簡単に往なし、躱し、棍棒で反撃を加える。
横っ腹を突くように、リリエルが弓を連射。
攻撃が通る通る―――大ダメージを受けたクラブレイダーがリリエルに敵意を向けるも、鬼の《挑発》スキルが継続中で、攻撃対象を切り替えられないイラつきが見える。
鬼への攻撃は苛烈になるが、こんなもの普段の戦いに比べたら、—――ね?
ピノキオが三振り―――それで試合終了—―――。
「ぐぎゃああああああああ!!!!」
ほぼ同時、三体魔物撃破の苦痛が田辺を襲う。
気絶&今大会試合継続不可能になった彼を担架が運ぶ。
チームメイトが壮絶な叫び声をあげて、運ばれていくのを見て顔がちょっとばかり青くなっている。
『勝者—―――A高校!千堂秋君!!続投ですか?!』
実況がアナウンスで尋ねてくる。
あたりまえだ―――。
「もちろん。」
何のためらいもなく、僕はそう宣言する。
『では――――A高校は千堂君が!SS高校は――――次鋒、秋津さん!どうぞ!』
次いで、出てきたのは女子か。
手加減?—―――だが断る!!!
『魔物は――――騎士、魔術骸骨、猫又です!!良い試合になるといいですね!!!』
騎士はE級、魔術骸骨はD級、猫又はE級だ。
遠距離火力が最大かな?
オーソドックスなタンクに、遊撃の猫又か。センスのあるバランスタイプだ。
『では――――――はじめ!!!!!』
「騎士は《挑発》!、猫又は鬼の《挑発》範囲を避けて、リリエルを攻撃!魔術骸骨は《氷槍》の乱れうち!!!!!」
さっきの脳筋とは大違いだ。
指示が上手い。
だが、しかし―――――押し通る!!!
「鬼はそのまま、騎士を潰せ!ピノキオは魔術骸骨の始末!リリエルは猫又を連射!制空権の強みを活かせ!!!」
敵の戦略に乗っかったうえで、叩き潰すことにした。
騎士対鬼は圧倒的膂力で振るわれた鬼の攻撃で騎士がボロボロに。単騎戦は願ってもない。鬼からしたら、一対一は最高の部隊だ。横薙ぎ、けさ斬り……棍棒が敵の甲冑を破壊し尽くす!
大楯はひしゃげ使い物になっていない。
「そ、そんな……ぃだもど……ぃきゃあああああああ!!!」
遅い。弓矢が騎士と猫又の頭を射貫いている。
蜂の巣みたく矢を撃ち込まれた猫の死骸と
これまた、ほぼ同時撃破—―――。
ダメージを受けると判断が遅れる。戻すのが遅すぎたのだよ。
女の子は失禁してしまってるが、知った事ではない。
『勝者――――――A高校!千堂君!!!いやあ、女子相手でも手加減せず!!!見事な容赦ない攻撃!ここまで行くと、あっぱれ!!!!!』
大会だろうが、褒めてんのか貶してんのかわからんぞ。
『千—―――』
うるさい、いちいち確認取るな。
「続投!!!!」
『おーけーおーけー!!SS高校よ!千堂君を倒さないと次の相手は出てこないぞ!!!覚悟しろ!!!!』
わかってくれたみたい。
もう俺に一々確認は取らないだろう。
向こうチームをみると、顔色が更に青くなっている様な?
『続いて、SS高校は――――中堅、水沢みどりさん!!!!』
アナウンスが次よ、はよ。と急かす。
どうやら、向こうチームは悩んでいるみたいだ。
向こうの残りは男子2、女子1だ。
つまり、女生徒が水沢みどりということになる。
俺が凝視すると―――――、
股間を押さえて、ぶるっと彼女は震えた。あの震えは小便した時の最後の震えに匹敵する震えっぷり――――というか怯えっぷりだ。
このたとえ、男にしか分からないだろうな。
「—―――――――棄権します!!!!」
顧問がタオルを投げ込み、試合を放棄した。
そうして、総当たり一回戦、俺達は二勝と三回分の不戦勝—――計、五勝というなんとも素晴らしい勝ち方をしたのだった。
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