37
「う~何でよぉ~」
カラオケに五時間くらいいただろう。沙紀は絶賛項垂れ中だった。僕はメロンソーダをストローで飲みながらどうしたもんかと考えていた。
「まぁ所詮、機械の評価だからさ」
思った以上に根が深い。裏で努力したのに点数で全く勝てなかったのがよほどショックだったらしい。
「違うわよ」
「心を読まないで」
沙紀はナチュラルに心を読んで顔を上げた。
「明人、あなた歌に詳しくないって言ってたわよね?」
「うん。そうだけど」
2、3曲歌ったら僕のレバーとリーは尽きた。だから僕は
「私が一回歌った曲を完璧にパクって、私よりも得点を出して、声域は私よりも広いってどういうことよ!?私のすべてが否定された気分よ!」
「ご、ごめん。でもお手本が良かったから、ここまで点数が取れたともいえるんだけど」
「ほ、褒めたって何も出ないわよ///じゃなくて、こんなにボコボコにされて心が折れない女がいるもんですか!」
沙紀は情緒不安定になってファミレスで頭を抱えていた。そういわれると、確かにやりすぎたとは思った。
(沙紀もムキになって何度も何度も僕に勝負を仕掛けてきたじゃないか・・・)
「まぁでも沙紀のおかげで自信は付いたよ。ステージでちゃんと歌えるか分からないけど、鬱屈とした気分は完全に消えたよ」
「ううう、それなら良かったわぁ。それならギブミーご褒美」
沙紀からのご褒美をご所望されてしまった。
「何がいいの?」
「はじめt」
「なし」
「まだ何も言ってないのに・・・」
絶対に十八禁のワードを言おうとしたので、事前に防がせてもらおう。公共の場ではダメ絶対。ちなみにカラオケの勝負で勝ったときのお願いは特に欲しいものもなかったので、カラオケ代を頼んだ。
その時に、
「つまらないわね・・・」
とか言っていた。僕に変なことを期待されても困るのだ。
閑話休題
現在、沙紀はご褒美を考えている。変なことを言われたらすぐに全力で止めるつもりだ。
「それなら、マッサージでもしてもらおうかしら」
「おお普通だ」
「一回私への認識を改める必要がありそうね・・・」
その程度のことならおちゃのこさいさいだ。
「あの女狐のせいで仕事量がバグってしまったのよ。おかげで肩がガチガチだわ」
沙紀は肩を揉む姿勢をしながら、僕にいってきた。
「その程度ならいくらでもやるよ」
「本当に?二言はないわね?」
「?うん」
「それなら善は急げよ。行きましょう」
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「さて、準備をしましょうか」
「準備?」
家に着くと突然、沙紀から意味不明なことを言われた。
(マッサージに準備なんているのか・・・?)
「ロフトで準備するから、待ってて頂戴」
「はいはい」
そういうとさっさとロフトの階段を上がってしまった。僕は手持ち無沙汰になってしまったので、風呂の準備をする。
「明人ぉ、いいわよ~」
「あっちょっと待って」
準備というわりには早かった。僕はロフトに上がった。
「沙紀、お待・・・た・・・せ」
「ええ。待たせてごめんなさい。それじゃあお願いするわね?」
布団の上でうつ伏せで寝ていた。ただし、上半身裸で。とりあえず、
「服を着てくれ・・・」
僕は反対側を向きながら沙紀に冷静にお願いした。
「ダ~メ。さっきのご褒美の話で服を着ろなんてルールはなかったわ。それに私は今暑いし、しっかり揉んでほしいの。だから仕方がないことだわ」
(相変わらず、欲望に忠実なこった・・・)
一瞬でも軽いお願いだと思った自分を殴ってやりたい。
「ほ~ら早くしなさい」
「いや無理無理!せめて下着を着てよ!」
「ええ分かったわ」
「え?」
沙紀は簡単に受け入れた。そして、後ろでごそごそとしている。
「ほら、こっちを見なさい。明人の言うとおりにしたから」
そう言われて後ろを向くと確かに着用していた。それでも布面積がないに等しいのには違いない。
(
またしてやられた。
「服も着てくれない?」
一応頼んでみるが、
「ダ~メ。明人のお願いを仕方な~く聞いてあげたんだから、これ以上は無理よ。それよりも早くやって頂戴」
「う・・・」
また沙紀の策略にハマってしまった自分を呪いながら、沙紀の言うことを聞いた。
「何かリクエストある?」
「う~ん肩を重点的にお願いしたいわ」
「了解」
そして、僕は沙紀の白い肌を見た。
(シルクみたいな肌だな)
綺麗すぎて一瞬触るのをためらった。
「は~や~く~」
「分かった分かった」
僕は沙紀の肩に触れる。そして、力を入れる。
「ん」
「痛かったら言ってね」
「ん、大丈夫、よ、ん~、もうちょっと首側をお願い、ん、できるかしら?」
「ここ?」
「あん、そこ、そこをお願い~」
沙紀に言われた箇所を揉んでいく。気持ちよさそうにしているので、やりがいがあるのだが、
「あん♡、そこ、そこをもっと問で頂戴、あん」
「・・・」
「あっ、あっ、そこいいわ。明人に私の気持ちいいところ、んぅ~攻められぇちゃってるわぁ」
「・・・」
「あん、あん、もうダメぇ」
「あのさ沙紀」
「んぅ~?」
「もうちょっと声を抑えられない?」
エロ過ぎる声を上げるのでマッサージに集中できない。
「そ、そんなことを言ったって、あん、明人のぉ、攻めが、うふん、的確過ぎて、あん、声が出ちゃうのよぉ」
沙紀が喘ぎ声みたいな声を上げる。沙紀の肌を触れているということもあって、色々不味い。
「・・・わざとじゃないよね?」
沙紀だからその線もあると思った。
「わ、わざと、あああん、じゃない、わよ」
沙紀の様子を見る限り本当に気持ち良いらしい。
「ど、どこで、あん、こんなテクを覚えたのよぉ?」
「ああ、これは美紀子さんにやってただけだよ」
「は?」
沙紀が突然真顔で声を出す。ビビったけど後ろ向きからも続けろと言っていた。
「美紀子さんが週に二回くらい僕に要求してきたんだよ」
「へぇ~」
「母親として感謝していたから、少しでも癒されてほしくて色々勉強したんだよ」
「・・・」
(そういえばマッサージの時間だけはいつも小言を言ってきた美紀子さんも嘘みたいに静かだったな。なんでだろう)
「つまり、明人はあのクソババアを喜ばせるために、マッサージテクを身に付けたのね?」
「ん?まあそうだね」
「ふ~~~ん」
「沙紀?」
沙紀がへそを曲げてしまったらしい。僕はマッサージをしていても声を上げなくなった。
「明人・・・」
五分くらい経つと沙紀は言葉出した。
「ん?」
そして、沙紀はこっちを向いてきた。
「次からは私のためだけにマッサージをしなさい。あのババアのことを考えたら切り落とす・・・って何をしているのかしら?ちょっと真面目な話をしているのだけれど?」
沙紀は下着姿でこっちを見てきた。しかし、さっきまでうつ伏せだったので、色々ズレてしまっていた。
つまり、
「見えてるんだって!!」
「っ!!!///」
沙紀は自分の惨状に一瞬だけ赤くした。
しかし、
「むしろ見なさい!///」
「馬鹿言うな!」
こうして沙紀のマッサージは終わったが、精神的な疲れが酷く、明日も休みだったらなあと思った。
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