24
金曜日。松山と僕は生徒会室に呼び出された。そこにはすでに生徒会役員が揃っていた。
「よく来たねぇ!」
「「こんにちは」」
僕と松山はそろって、御堂、じゃなくて、彩華さんに挨拶をした。今日で生徒会にふさわしいのが僕と松山か決まる。といっても僕は昨日のうちに結果をネタバレされている。だけど、ちゃんと公式の場で言ってもらわない限りは安心できない。
これでドッキリとか夢だったら目も当てられない。
「今日は君たちが気になって気になって仕方がない勝負の結果を報告するよ~審査員の三人には理由も添えてもらうからねぇ~」
「めんどい・・・」
「ええ・・・」
「もう分かりきってるじゃない・・・そんなことをする必要があるの?」
「あるよ!負けた方にもしっかり理由も添えてあげないと納得できないでしょ?」
「めんどい・・・」
「由紀ちゃんはもう少しやる気を出して!」
いまいち乗り気じゃない三人の役員に対して叱責する彩華さん。三人は渋々と納得する。すると、僕の隣にいる松山がしゃしゃり出てきた。
「僕も理由が知りたいです!仮に負けたとしてもそれをバネに這い上がる所存です!」
突然意識の高い発言をする。ただその瞳には敗北という二文字を想定しているとは思えなかった。絶対、僕に勝ってると思っているからこそ思ってもいないことを言えるのだ。すると、この生徒会室にいる最後の一人が松山のことをフォローした。
「松山君の意見は素晴らしいと思います。勝負事で大事なことは勝つことだけではありません。負けた時にどう反省を活かすかにも価値があると思います。ね?松山君」
「お、おう///そうだな沙紀」
(珍しいこともあるもんだ)
松山は沙紀に褒められて頬を赤くした。好きな人に褒められるのは気分が良いだろう。
「だとしたら、生徒会の先輩としてしっかり理由を伝えてあげるべきかと。先輩方、私からもお願いします」
沙紀が四人の先輩方に頭を下げる。松山も自分の意見ということで頭を下げた。
「沙紀ちゃん・・・」
「沙紀・・・」
「サッキ―・・・」
「沙紀、狙いが見え見えよ・・・」
生徒会役員の先輩たちは沙紀に対して、悪い妹を見ているようだった。そして、彩華さんがため息をついた。沙紀は僕の死角で意地の悪い笑顔を浮かべていた。
「まぁ、その前に結果発表だけしちゃおうか」
「そうですね!」
(なんで松山がしゃしゃり出てくるんだよ・・・)
沙紀に褒められて気分がよくなっていることは目に見えて分かる。そんな松山を笑顔でテキトーに流しながら彩華さんは投票箱を二つ用意した。
「それじゃあ生徒会庶務にふさわしい方に投票してもらいます。どちらもふさわしくないと思うなら投票しないのもありだからね~」
「ん」
「はぁい」
「はいはい」
三人が気だるそうに返事をする。彩華さんは僕らの方を見た。
「それじゃあ優君と明人君は一回廊下に出てくれるかな?」
「「はい」」
僕と松山は教室の外に出た。すると、中に聞こえないような、かつ、絶妙な大きさで僕に話しかけてきた。
「お前の運もここまでだな」
「どういうこと?」
「そんなの決まってるだろう?今までのことだよ」
ハンと鼻で僕に当てつけをしてきた。
「お前が俺に勝てたのは沙紀という最高の女がサポートをしてきたからだ。だから、今回みたいに沙紀のサポートがないお前が俺に勝てるわけがないんだよ」
「確かに・・・」
それに関しては同感。沙紀が僕の家に来てくれなかったら今頃もいじめられていたし、勉強する時間もなかった。それに下手したら退学になっていたのだ。沙紀がいてくれなかったら僕は終わっていた。
「まぁ俺も鬼じゃない。沙紀も俺の意見に同意してくれてただろう?負けたとしてもそこからどう這い上がるかが重要だってことに。あれは俺からのプレゼントだよ。大敗した時に惨めな扱いをされないようにな」
僕は頷くだけだ。
「ま、これで気づいただろう。沙紀も自分が世話を焼かなきゃいけない人間と個人として肩を並べることができる人間だったら後者の方がいいってな。沙紀からはさっさと身を引いとけよ?フラれるくらいなら先に別れを切り出した方がいいからな」
「ははは・・・」
僕はとりあえず苦笑しておいた。こういう時は拒否しても肯定しても面倒なことになるからテキトーにお茶を濁すに限る。
すると、扉が開いた。
「お待たせ~準備できたよ~」
「やっとか!」
松山は意気揚々と教室に入る。僕もそれに続いて教室に入る。
「それじゃあ生徒会庶務を発表したいと思いま~す!」
「「いえ~い!!」」
松山と花蓮さんが彩華さんの言葉にノリに乗ってきた。
「それじゃあ発表しま~す」
僕はゴクリと唾を飲む。そして隣では胸を張って発表を待つ松山。
(頼むから昨日のことは夢じゃありませんように・・・)
神頼みをしておく。
「あっ、その前に得票数は三票で捨て票はありません。しかも3-0で選ばれてるから圧倒的だね」
「圧勝じゃないか(笑)」
僕の方を見ながら言ってきた。楽しそう。
「今度こそ発表しま~す、勝者は~」
彩華さんが勿体ぶる。そして、
「岩木明人君で~す!おめでとうございま~す!」
「よし!」
僕は小さくガッツポーズをした。そして、隣の松山はというと、
「ほえ?」
女の子みたいな可愛い声を出して凍ってしまっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます