エピローグ

「~~♪ ~~♪」


 現代は、情報と娯楽ごらくあふれている。


 出生率の低下は、ひとえにセックスよりも楽しい物が溢れているからだ、なんて話まである。

 子育てよりも、自身の趣味に費やす方が充実した人生になる。


 そりゃあそうだろう。

 でも国としては、それじゃ成り立たない。


 未来をになう若者達には、もっとバンバンと性行為セックスして貰い、子供を産んで欲しいと日本の未来をうれう誰かさん達は、ずっと思っている。


「~~♪」


 若者が命懸いのちがけで頑張る姿とか、命の一瞬いっしゅんきらめきとか。

 あるいは、人間の本性が見たい、だとか。


 ただの娯楽としてのデスゲームならば、もう現代人は見飽みあきている。

 そんなものはネットのサブスクに登録とうろくし、出来できのいい映画をれば満足まんぞくできてしまうからだ。


 だから今、令和になった現代においてデスゲームが必要とされている理由は。

 優秀ゆうしゅうな者から生まれる子供、それも日本人・・・の、確実な増加・・だ。


 しかし、その優秀さはかたよっていてはいけない。

 多種多様たしゅたような状況で生き残れる者でなければならない。


「あは! めぐみちゃん、北元さんと上手くいったんだねー。おめでとう!」


 ばし効果。

 人間には死地しちにおいて伴侶はんりょを求め、みずからの子孫しそんを残そうとする本能がある。

 命の危機ききさらされている時に、優秀な異性がそばに居れば、燃え上がるのは必然ひつぜんだろう。

 吊り橋効果によって『つがい』を生みだす事がゲームの目的だった。



「いつ、ママになるかなー? 恵ちゃんの子供だったら賢くて、きっと可愛いよね! ふふ!」


 南条なんじょうキサラは【プログラム】によって生まれた子供だった。

 もう何十年も前から秘密裏に続けられた『ゲーム』の申し子だ。


 彼女は、この年齢で既に多くの者の死を看取みとってきた。

 しかし、普段の彼女はそんな事を欠片も表に出さない。


 令和の時代に迎合げいごうし、流行はやりをいかけ、普通の生活を送っている。


 そんな彼女は、今日もまた。


「さぁ、新しいゲームの参加者が決まったよ。次はどんな子が参加するのかなー、っと」


 ラビュリントスに生贄の少年少女達を招くのだ。

 怪物が棲む、その迷宮に。


 運命の赤い糸でつながれた男女を見つける為に。


 令和に生まれたアリアドネ。それが彼女の役割。


 ……そして、また彼女の元であらたな『ゲーム』が始まる。



「──ハッピー・デス・ゲーム!」

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ARデスゲーム/ミノタウロスの迷宮 ~スマホの向こうは死のセカイ~ 川崎悠 @kawasakiyuu

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